何だかんだ言って、すっかりフランチャイズ化している『エイリアン』。
生みの親であるリドリー・スコットと、エイリアンの版権を握るスタジオ側と、それぞれの思惑が強めに交錯しております。大概こういった争いは権力を握るスタジオ側の勝利で終わるものですが、色気を出しすぎたスタジオ側の暴走は、いよいよ『エイリアンVSプレデター』という、コンテンツのその先の事なんてもう一切考えていませんよね?と、誰もが思うほどの袋小路まで行き着いてしまった。
こういった場合、いかに優秀なコンテンツであっても消費期限が切れてしまうものなのですが、さすがはコアなファンを持つエイリアンシリーズ。スタジオ側もあっさりと白旗を上げ、エイリアンの世界観の再構築をリドリー・スコットに託すこととなった。
ちなみに。
一度は『第9地区』のニール・ブロムカンプがエイリアンの5作目の監督に抜擢されたのだが、その後、リドリー・スコットに更迭されたと言われている。リプリーが再登場する企画だったそうなので、このロムルスとは全く違う内容だったのですが、それはそれで観てみたい気もする。
そうしてリドリー・スコット自らの手によって『プロメテウス』『エイリアン:コヴェナント』という、エイリアンの誕生秘話を描いた2作品が生み出されることになったわけだが、その2作を観れば、リドリー・スコットがこのシリーズを通して描き出したかったものが見えてくる。
それは、単なる宇宙空間を舞台にしたソリッド・シチュエーション・ホラーではなく、生き長らえることに執着する人間の浅ましい姿と、生きとし生けるものの根源にある欲望「自身の命の価値の証明」としての、命のはじまりに囚われたヒューマノイド(合成人間)との対比から生まれる悪夢だ。
道具として生み出された高い知能と身体能力を有するヒューマノイドが、自身を想像した人間よりも自身の方が遥かに優秀であるにも係わらず、人間とは認められない矛盾と屈辱を理解するようになる。
人間を創造したのは「神」であるという考え方に触れたヒューマノイドが、人間を超えた存在「創造主」になろうと考え、人類が生み出したヒューマノイドが創造したのが、究極の生命体である「ゼノモーフ」。
そうしたこのシリーズの創造主であるリドリー・スコットの考え方を今一度整理し直した上で、オリジナルの第一作と『アバター』のジェームズ・キャメロンがメガホンを採った『エイリアン2』の間に起こった物語として生み出されたのが『エイリアン:ロムルス』。
監督は『ドント・ブリーズ』フェデ・アルバレス。リドリー・スコットは制作を務める。
コヴェナントの制作スケジュールと重なったことで、『DUNE』のドゥニ・ビルヌーブに監督の座を明け渡した『ブレードランナー2049』を「話が長い」と一刀両断にした、そのリドリー・スコットが絶賛したと伝えられる今作でしたので、ブレードランナー2049が大好きな私としては「そのお手前をいっちょ観てやろうじゃないの」と鼻息も荒く劇場に乗り込んだのですが、正直私にはリドリー・スコットがこれのどこを評価しているのかはさっぱり分からなかった。
誤解して欲しくないのですが、映画としてはとても良くできておりました。
過去作をオマージュし、オリジナルを彷彿とさせファンに追体験させる内容は大満足のいくもの。
話はちょっと逸れますが、今回私はラージフォーマットの『IMAX レーザー』版を鑑賞したのですが、特に宇宙空間の放つ迫力については没入感がかなりエグかった。
そして、フェデ・アルバレスがスタジオの反対を押し切ってまでラストに追加したあの残酷なシーンも、プロメテウスからの流れを汲むもの。胃もたれするほどの不快指数の高さはさすがフェデ・アルバレスと言えよう。
そう考えると分かってくるのは、『VSプレデター』はもちろんのこと、大ヒットし、エイリアンの世界をフランチャイズ化させるキッカケとなった『エイリアン2』までをも、リドリー・スコットは認めてはおらず、
つまりはこれが正統な『エイリアン2』だということ。
リドリー・スコットという人は、なんと執着心と自尊心の高い人間なのだろうか。
ただし、オマージュというものは、行きすぎると「焼き直し」「二番煎じ」と捉えることもできてしまう。
リドリー・スコットとしては長い軌道修正の旅を経て、これでやっと原点に回帰できたつもりなのであろうが、全体を通して既視感が強すぎ、私は結局「オリジナルの第1作もう一回観直そ」となってしまった。
というわけで、これまで『エイリアン』を観て来なかった人こそ、今作を最高に楽しめるということだ。
ぜひ『プロメテウス』『エイリアン:コヴェナント』『エイリアン』『エイリアン:ロムルス』の順で、初めてのエイリアン体験を楽しんでいただきたいと思う。
オススメ度(エイリアン未経験者の方に限り):99
エイリアン初めてのドラマシリーズとなる『エイリアン:アース』は2025年配信予定。
いよいよゼノモーフの悪夢が地球に到達するらしいのだが、驚いたことに第1作の前日譚となるのだそう。
つまり、1作目でノストロモ号がエイリアンの眠る小惑星に向かわされるその発端が描かれるらしいのだが、だとするとノストロモ号が地球を飛び立った後に入れ違いでゼノモーフが地球にたどり着いていたということなのか?
いや待て。エイリアン2ではそんな事実一切描かれてないぞ。
やっぱりエイリアン2以降の話はなき物にされているんだな。
個人的にはエイリアン2好きなんだけどな・・・
「Only on hulu」とクレジットされておりますが、日本では「Disney+」での配信となる。
これに関してはリドリー・スコットは関与しているのだろうか?
多分無関係だな。せっかくリブートさせても結局スタジオの餌食になっちゃうんだな。
ちなみに。
リドリー・スコット関係で言っておくとブレードランナーのドラマ版『ブレードランナー2099』も、すでに撮影が開始されている。こちらはAmazonプライムでの配信予定。
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