スキーブーツにもついに登場したデュアルBOAが気になる

スノーボードブーツ界隈での『デュアルBOA』は、普及率はそこそこなものの認知率はかなり高い。
スキーブーツではアウターシェルにBOAが採用されたのはここ2〜3年のこと。ロアシェルだけでなくアッパーシェルもBOA化されたデュアルBOAは、来シーズンやっと登場する遅れっぷりだ。これだけ採用が遅れたのはやはり、ハードシェルブーツをワイヤーだけでバックルと同等の固定力を得るということが、それだけ難しいということの表れなのだろう。

すでに『K2 Taro Tamai Snowsurfer』を使用している身としては、デュアルBOAの利便性は十二分に理解できている。って言うか、BOAを使ったことがなくても、スキーブーツの硬いバックルを4ヶ所留めることの面倒さ加減について、あえてここに書く必要もあるまい。
バックルの開け閉めが面倒なのは履く時だけではなく、むしろ締め具合を調整する時だ。
足がむくんでいるのか、シェルが冷えているうちは硬いからなのか、はたまたその両方なのかは分からないが、一度納まってしまえばなんの痛みも出ないブーツでも、一気に最適値まで締め上げるとブーツに足が当たってしまうことがある。
そのため滑りながら2〜3度に分けて締め上げるようにているのですが、あれが本当にメンドクサイ。
スノーボードブーツでも滑っている途中で締め増すときがありますが、レース(靴紐)仕様のときは緩いと感じても面倒なのでそのまま放置していたのに、BOAなら積極的に調整しようと思えるほどラクチンだ。

ただ、固定力の劣るスノーボードブーツでさえ、デュアルBOAに対しては若干の不安感を持つくらいなので、さらに固定力の要るスキーブーツであれば尚のこと、心配がないではない。
言ったようにロアシェルをBOAシステムで固定するブーツはすでに市場に流通している。メーカーはそれをして市場テストとは口が裂けても言わないだろうが、それなりに問題点の洗い出しは済んでいるはず。そのメーカーが満を持してデュアルBOAを市場に投入するのだから期待しないわけにはいかない。
実際、K2は快適性が重視されるオールマウンテンモデルではなく、アルペンモデルにデュアルBOAを採用して日本国内の技術戦を戦い、好成績を収めていることを謳い文句にしている。

自身の足型に合う合わないが明確に出るスキーブーツは、さまざまなモデルを一度に試すのが一番
というわけで、噂のデュアルBOAをこの目で確かめるため、スキーアイテム各社が合同で展示予約会を開催する『石井スポーツカスタムフェア』にお邪魔してまいりました。
石井スポーツカスタムフェアは毎年開催されているのですが、私が最後に行ったのは2015年。つまりちょうど10年ぶり。これもきっと何かの縁。そういう廻りの中にあるということでございましょう。

私が知っているのはお台場で開催されていた頃の話なのですが、ありがたいことに今回は“埼玉の属国”と言っても過言ではない、“埼玉県豊島区”池袋で開催されることとなった。我が家からハンターカブで30分足らずで到着できる。今回は何かと縁を感じる。
3日間開催される初日の金曜日、しかも口開けとなる15時に会場に着いたのですが、すでにご覧の通りに長い通路を折り返すほどの長蛇の列ができていた。スキー熱、かなり高まっているじゃないですか!
って、モーターサイクルショーでも毎年同じような感情に囚われる。オートバイにしても、スノーアクティビティにしても、市場規模はピーク時に対して年々縮小傾向だと言われるが、コアな方々の熱量は衰えてはいないのかもしれない。とはいえ、コア層の高齢化が進んでいることだけは間違いがなさそうだが・・・

そうして15分ほど列に並んでようやく会場に入ることができた。
すでに会場内は熱気ムンムン。

まず目に入ったのはK2のブース。
ちなみに、BOAシステムはBOA®社のパテント技術なのでブーツ各社とも共通。バックルモデルと同様、違うのはブーツ本体。
「BOAとの相性」であったり「よりBOAの性能を引き出している」なんていう違いは一切ない。ハズだ。
なので私が気になるのはBOAの使用感とBOAを取り込んだ時のデザインだけ。

早速試着してみたのですが、画像の『K2 CORTEX 140 ZONAL BOA』には、試着できる28cmがなかったため、『CORTEX130』を試してみた。
結果を先に言うと「こりゃ実際に使ってみなけりゃ結論は出せん」でありました。
スタッフの方も「みなさんBOAになると締めすぎる傾向にあります」と言う通り、「もう回りません」ってとこまで締めても足にはほとんど圧迫感が感じられないので、いけるところまでダイヤルを巻いてしまう。しかもダイヤルを回すためにかかる力はほぼ一定なので余計に回してしまう。
バックルだと閉じる方向にすればするほど、バックルを倒す力、起こす力は倍返しで硬くなるし、締め過ぎれば「血流が止まってるんじゃないか?」ってくらいに足に圧迫感を感じるのですが、いくらダイヤルを締め上げてもそうした痛みなどが一切伝わってこない。
こうして室内で履くのと、気温の低い雪上で履いた状態とでは足のむくみなどの条件がだいぶ違うのはBOAでないバックルモデルでも同じなので、果たしてBOAの締め付けが足りているのか足りていないのか分からない。
これは実際に雪上で滑ってみない限り本当の答えは出せないと思いました。
まあメーカーが満を持して出している時点で性能は折り紙つきなのだろうから、このダイヤル操作のしやすさ、足への締め付けの感触さえ体感できれば十分なのかもしれない。
思い切って清水の舞台から飛び降りても大きな怪我はないだろう。

『SALOMON S/PRO SUPRA DUAL BOA 120 GW』

『NORDICA SPEEDMACHINE 3 BOA DD 120 (GW)』

『HEAD KALIBER 130 MV GW BOA2』

『DALBELLO VELOCE SPACE 130 DUAL』

と、ほとんど買う気満々で「あとはデザインさえ確認できれば」と各社のブースを覗いて回って来たのですが、ここで驚愕の事実が発覚。
なんと、テックビンディング対応モデルがひとつもない・・・
かろうじて画像にもあるK2 CORTEX 140に爪先のみテックピンインサートが装備されていたが、それ以外テックビンディング対応モデルはひとつもなかった。
どれもソールが『GRIP WALK』になっていたので、テックビンディング仕様もあるものとばかり思っていた。
近頃は技術戦でもGRIP WALKで滑るんだな。
CORTEX 140にしてもバックカフが開く構造にはなっていないので、そもそもAlpine / Touringブーツではない様子。じゃあなんで爪先だけテックピンインサートが着いてんだって話なんですけど、会場にいたメーカーの人に聞いてもその理由は分からないようだ。
さておき、爪先だけだと『MARKER King Pin』くらいしか使えないけど、K2もMARKERも『Elevate Outdoor Collective』連合だから一応身内に気を遣ったってことか??
理由はともかく、これでデュアルBOAに私の出番はなくなった。縁まで感じていただけに誠に残念だ。
と言うのは半分嘘で、10万は下らない買い物を回避できたことで、ほっと胸を撫で下ろす自分がいたことは報告しておく。間違いなくそのうちテックビンディングモデルが登場するだろうから、単にあと送りになっただけなのではありますが。
ちなみにK2に関しては、すでに多くのデュアルBOAのオーダーを受けているとのことでしたので、気になっている方は急いだ方がいいだろう。

最後にひとつだけ買うときの注意点を書いておく
近頃は日本人向けのラスト幅に余裕のあるモデルが数多くラインナップされるようになったので、尚のことスキーブーツのサイズ選びは、つま先が当たるとか、空間があるとか言った縦方向を重視することが多いと思う。
ただ、アッパーシェルがBOAになるとそうもいかないようで、私が試したK2の28.0と27.5cmでは、アッパー側の締め付けが明らかに違っていて、28.0cmだと締め上がる前にBOAのダイヤルを締め切ってしまう。つまり、もう少し締めたかったのですが、27.5cmだと締め切る前に圧迫感を感じるところまで閉じることができたのですが、つま先が気持ち当たる。
メーカーごとにインナーブーツの設えも違うし、サーモインナーであれば熱成形すればまた違ってくるのかもしれないが、これはちょっと気になるところ。

日本人はふくらはぎが発達している傾向にあるため、アッパーシェルの開口部に圧迫感を抱く方が多いと聞く。幸か不幸か私はそれには当てはまらない。むしろ私は足が段広なので、ラスト幅の方にばかり気にしてアッパーシェルの締め付け具合など気にせずにスキーブーツを選んでこれたので、これには驚いた。これは私だけの問題なのかもしれないが、もし同じような経験をされている方がいたら、実際に試着される際にその点に注意して確認してみて欲しい。

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