ソウルの春

ソウルの春』は、後に大統領として8年もの軍事独裁をしくチョン・ドゥファンが、1979年に引き起こした「12・12粛軍クーデター」の内幕を描いている。

本作ではチョン・ドゥファンのことを「チョン・ドゥグアン」、こちらも後の大統領となるノ・テウのことを「ノ・テゴン」としていたり、登場人物の名はそれぞれ微妙に架空のものに置き換えられてはいるが、本作で描かれる内幕は大筋正しいという。

もちろん、首都警備司令官イ・テシン(実在のチャン・テワンをモデルにしていると言われている)の、度を越した(美化されすぎた)行動描写や、ポスターにあるように見るからに悪人ズラとイケオジの対比であったり、過度に映画的な演出も散見され、その全てを鵜呑みにしてはいけないように思えるのですが、権力欲に溺れた個人の暴走によって、民主化が大きく遅れたことに対する現在の韓国国民の怒りや嘆きのようなものが、一体いかなるものなのか、映画の中からも強く感じられる部分には注目したい。

ただ、気になるのはこのあとの韓国が辿り現在へとつながる道のこと。
大戦後、連合軍に強制的に民主化を進められた日本が、どれだけ恵まれていたのか。はたまた恵まれていなかったのか。
その日本によって分断の道を歩まされた朝鮮半島の歴史に興味が湧いた。
何より、今作で描かれるのは、東京オリンピックも、大阪万博も終わっているほんの45年前の話なのだ。

昨年12月3日に非常戒厳を宣布し、鎮圧のために軍を出動させた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が内乱罪となった事件と、ソウルの春をかぶせてみる者も多いと聞く。
ロサンゼルスでの抗議デモに軍が派兵されたり、権力者の実力行使の危うさを感じさせるには十分のインパクトがある。

(オススメ度:80)

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