ルカ・グァダニーノが監督した『ボーンズ・アンド・オール』は、私も大好きな作品だ。
現代社会に生きる、人喰い人種の悲しいサガと愛とを描いた『ボーンズ・アンド・オール』は、究極の愛情表現を描いていた。
『チャレンジャーズ』もまたそんなグゥアダニーノ監督の描く究極の愛のカタチの物語。
全寮制のテニススクールで、小学生の頃からいつも一緒にいたパトリックとアート。
そして二人はお互いに対し友情以上の感情も抱いていた。
ジュニアの世界ではそこそこの戦績を残していた二人ではあったが、テニスプレイヤーとしての将来まで明るいとはまだ言い難い。
そんな二人は、ジュニアでほぼ敵なしで、既に多くのスポンサードを受け、自らのファウンデーションまで立ち上げていたスタープレイヤーのタシに同時に恋をしてしまう。
テニスは食べていくための道具。その程度の感覚でのらりくらりとテニスに向き合うパトリックに、真面目にテニスに向き合うアートは、いまだに勝ったことがなかったのだが、そんな優柔不断なパトリックのことが好きだったし、尊敬もしていた。パトリックも弟分のようなアートのことを大切に思っていたし、少し気弱なところも大好きだった。
タシは心理戦のゲームを仕掛けるように、そんな正反対と言っていい性格を持つ二人を同時に誘惑しはじめるが、それは少女のただの遊び心でしかなかった。
その後、積極的にアプローチをつづけたパトリックとタシは付き合うことになるのだが、当然アートはいい気はしない。
唯一無二の相手を奪われた感情とタシへの気持ちはやがて津波のようにアートの心を飲み込んでいき、ついにアートはパトリックからタシを奪い取ることに成功するのだが、それはタシへの愛情からか、それともパトリックへの嫉妬心、復讐心からだったのか・・・・・
三人ともがそれぞれ他の二人に対して恋心を持ち続けるという、まさに究極の愛憎劇でありました。
こういった「犬も食わない」ような話に、誰もが納得のいく結末などあり得ない。
しかも、三人ともが愛情以外にも、野心であったり、経済的なことであったり、それぞれの思惑を孕んでおり、三人の関係はズブズブの泥沼に陥っていってしまう。
そうした泥沼を傍目に楽しめる者などいない。
そうした罪に溺れた人間の哀れな末路まで付き合う覚悟がこちらに芽生えた頃に、唐突に物語は終演を迎えてしまう。これも観るものに課題を投げかける演出なのでしょうが、それまでの説明が無駄に十分すぎるほどに潤沢に行われていたこともあって、私の目にはかなり投げやりな態度にしか映らなかった。
という私の反応もグゥアダニーノ監督の戦略なのかもしれませんが。
こうした作品性を近頃「実験的」とか言いますが、お金を払って実験に付き合わされるこっちの身にもなって欲しい。って、私が観たのはAmazonプライムですが・・・（年会費は払っている！）
（オススメ度：５０）
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