公開する作品ごとに落ち目の出力曲線を描いているマーベル・シネマティック・ユニバース。
コロナ禍にあっても毎年2〜3作品を公開しつづけてきましたが、供給過多に陥ったことで質の低下を招いたとも言われ、それは「スーパーヒーロー疲れ」などとも揶揄されている。
ユニバースという世界観の達成のため、作品の作りすぎによって現場に無理が生じ、士気が下がるだけでなく、俳優や監督など、メインキャストたちへの契約的な拘束が長く強力なため、別の作品に割く時間が取れないことなどの内部からも不満も多く吹き出しており『ブレイド』をはじめとした新たなシリーズは、発表はされたものの度重なる監督や脚本家の交代によって実質頓挫してしまっている。
そうした中、メインヴィランと目されていたカーンを演じていたジョナサン・メジャースの起こした暴行事件を契機にして、MCUは今後の公開プランを大幅に改訂することとなり、残念ながら2024年に公開されるMCU作品はこの『デッドプール&ウルヴァリン』のみとなってしまった。
そもそもFOXに版権のあったX-MENシリーズの一部なので、デッドプールはある意味MCUの中でも超の付く“外様”中の外様コンテンツ。
結果的にそんな外様のコンテンツが混迷を極めるMCUの救世主になろうとは、誰が予想しただろうか。
そもそも下品を画に描いたような軽さと低俗さがウリのデッドプールなので、親会社のディズニーとしても扱いには苦慮したことだろう。ディズニーによるFOX買収劇以前から『デッドプール3』の企画は進行していたのですが、そのためお蔵入りとなる可能性も取りざたされていた。
これは私の想像でしかないが、昨今のMCUバッシングが逆に『デッドプール3』の追い風になったように思う。
様々な意味でMCUには新たな血が必要なタイミングだったのではないか?
加えて、主役のライアン・レイノルズとの個人的な関係もあって、『ローガン』を最後にハマリ役だったウルヴァリン役からの引退を公表していたヒュー・ジャックマンを同役でMCUに参加させられたことも、今作への期待感を倍加させた要因だろう。
内容がどうとか言う以前に、今作のミドコロは多岐に渡っていたわけなのですが、それは製作陣にとっては逆に大きなプレッシャーとなってのし掛かっていたはずだ。
はじめてのMCU移籍作として、MCUの起死回生の作品として、失敗の許されない最重要ミッションであったと思う。
だからこそなのだろうが、MCUとしての力の入りよう、お金のかけようはもの凄く、あの『スパイダーマン:ノーウェイホーム』をも凌ぐインパクトやらサプライズやらが、随所に埋め込まれておりました。
最初に登場するカメオ出演者はなんとあの人!
誰もがアノ人の奇跡のカムバックと、あの有名なセリフ「アッセ・・・」を期待したのも束の間・・・
というデッドプールの悪ふざけのレベルもまた銀河系レベルにまで格上げされています。
今作はデッドプール2作品、X-MENシリーズだけでなく、MCUの過去作品(MCU以前の失敗作を含めて)にも目を通していないと、この空前の楽屋オチを見落とすことになってしまいます。
何より、テレビドラマシリーズの『Loki』を観ていないと、まずもって今作が『デッドプール2』からの地続きであることが理解できない。
はじめての合流作であるということを除いても、これほどまでに過去作の確認を強要するものもないだろう。
そういった部分も、デッドプールが慣例とかルールとかが無用のアウトサイダーであることを示している。
MCUというすでに確立されているユニバースに、これほどまでに自然に、驚くほど衝撃的に合流を果たせるのは、デッドプール以外にはないと痛感させられる一作。
そして、混迷を深めるMCUのこれからの方向性にも一石を投じたようにも思う。
デッドプールがMCUのマイルストーンとか、それだけでかなりウケるんですけどw
(オススメ度:100/MCUファンなら必見です!)
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