ナミビアの砂漠

主人公をはじめとして、あえて登場人物たちのことを深掘りしない演出もあり、普通に観てしまうと少々難解に映ってしまうかもしれないが、むしろ物語のない行き当たりばったりのドキュメンタリーだと思って観た方がこの映画の観方としては正しいように思う。
何より、この作品の真意など分からなくても、河合優実という新しい才能を眺めているだけで充分に元がとれるとも思う。

ナミビアの砂漠』というタイトルには「何もない砂漠」にかけた「不毛の愛」という意味が籠められているらしい。
一見、無軌道で異質に見える主人公カナの生き方に強い違和感を感じる方も多いと思う。そしてそこに何か作為的な意図を探してしまうかもしれないが、それもまた誰にでも通じる心の傷を負った、一人の少女の葛藤の姿でしかないと思って観た方が話しが早い。
そうして観れば、自身の異質さを自覚しながら、自分がなぜ異質なのか、そもそも異質なのは自分なのか、それとも周りの俗物どもか、の整合性に苦しむ、誰にでも当てはまるいたって普通の景色が展開されていることに気づけるだろう。
なので、「これを観ている自分はまとも」「カナはかなり特殊」だと思っていると今作の真意を見逃すことになる。
誰もが自身の存在意義について思い悩み、ときに他者に迎合し、ときに影響(傷)を与える以外にその答えを得る方法がないという至極当たり前のことを理解させるためのショウケースのような作品だと思って観るとしっくり来る。

ただ、面白いのは、そうした本人にとっては自身の存在意義を確認する発露でしかない「愛」という行為が、他者の存在意義に深く影響することもあるという事実。誰かに影響を与えている実感にこそ、強い存在意義を得てしまうという矛盾。
それもまた社会通念的に語られる「愛とは与え与えるもの」という解釈には似ているようで程遠く、そうしたある種幻想のような「愛」に対する解釈自体が不毛であることを、実はこの映画は糾弾しているのですが、「自身の存在意義に迷うことはおかしなことではない」「その過程では誰もが他者を傷つけてしまうものだ」という問いかけになっているところが興味深い。
(オススメ度:60)

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