フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

いきなりネガティブな話で恐縮ですが、この『フライ・ミー・トウ・ザ・ムーン』が大コケしたせいで、ブラッド・ピットと、ジョージ・クルーニーが久々さの共演を果たした『ウルフズ』が、劇場公開から配信に変更されたと言われている。そんな噂を聞かされたら、レンタルでもお金を払って観たくない。
というわけで、Apple TV+で無料配信が始まるまで待ってからの鑑賞となった。

のですが、自宅で配信を鑑賞するにおいてはとても面白い映画でありました。

人類初の月面着陸を果たしたアポロ11号。
「これは一人の人間にとっては小さな一歩にすぎないが、人類にとっては大きな躍進である」という、ニール・アームストロング船長の言葉は有名ですが、それとともに着陸の瞬間をテレビで実況中継したことが何よりも画期的な出来事でありました。月面着陸競争に負けたソ連が「スタジオで撮影されたフィクションだ」とすぐに反論したことで、その噂が全米でも都市伝説的に広まったことでも有名。

今作はそんな都市伝説が「実は可能性としてはあった」というストーリー。
二人の飛行士が月に向かうその裏側で、途中で計画中止となった際のバックアッププランとして、NASA敷地内の倉庫で月の表面のセットが組まれ、特撮が行われていた。という、フィクションなのか実話なのかも知れない物語。

なぜ大金を注ぎ込んでまで、そんな詐欺まがいの映像を、国民や世界中に放映しようとしたのか。
もちろんソ連との競争がその背景にある一番の理由なのですが、それ以外にもベトナム戦争下にあったアメリカにおいて、いかに月面着陸を議会に承認させるのか、NASA職員が腐心していた様も並行して描かれる。

そのロビー活動とPR活動に、敏腕の広告プロデューサーであるケリー(スカーレット・ヨハンソン)が抜擢される。ただ、その人選はCIA(?機密部署)が行なっており、かなりきな臭くもあり、胡散臭くもある計画であった・・・
果たして、世界中が目撃した人類初の月面着陸の映像は、ライブ映像だったのか、フェイク映像だったのか・・・

私はこの話を聞いた時に素直に違和感というか、嫌〜〜な気分になった。
例えば「大好きなスター・ウォーズ4が、実はパクリだった」とかいう映画があったとして、それを誰が見たいと言うのか。
夢は夢のまま美しい形で残すべきだと思えば思うほど、ほんの少しでも疑いが残るようなものを目にすることは避けたいと思うはず。アポロ11号の物語を大切に保存したいと思う人ほど余計にその思いに囚われたと思う。
他のスタジオでは決して手を出さない、実にAppleらしい視点ではありましたが、それが最大の敗因だったのではなかろうか。

というわけで、映画としてはかなり面白かったのですが、その点について気にかかる人は観ないだろうなあ。
ただ、むしろ世界一を標榜するアメリカ人のプライドを良い意味で刺激するもので、トム・ハンクス主演の『アポロ13』と同様の感動を得られる内容となっていることは言っておきたい。

(オススメ度:70)

_ _ _ _ _ _ _ _土と雪と:今年の更新は今回が最後となります_ _ _ _ _ _ _
2025年の最初の更新は、成人の日の翌日、14日(火)を予定しております。
来年もよろしくお願いします!
それではみなさま良いお年をお迎えください!

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