マダムウェブ

ヴェノム」「モービウス」につづく、コロンビア/ソニーが企画するスパイダーマン・スピンオフ・シリーズ「ソニー・スパイダー・ユニバース」に属する新作『マダムウェブ』。

私が期待しているスーパーヒーロー作品でないことは何となく分かっていたことに加え「全米での公開一週目の興行成績がふるわない」といった前情報もあり、正直劇場で観るべきかどうかかなり悩ましかったのですが、今一度心を奮い立たせて観てまいりました。

想像通りにMCUを含むこれまでのヒーロー・アメコミ作品とは少しばかり方向性を変えられていた。
マダム・ウェブのもつ特殊能力の特殊性を考えれば、それはある意味当然のことで、ではそれが悪いのかというと決してそういうわけではなく、スパイダーマンをはじめとしたその他のスーパーヒーローと較べれば、ちょっと地味目の特殊能力故に、これまでにない描き方が施されており、まさにそこが今作の優れたポイントとなっていた。
ここのところ、本家のMCUでさえ自らの行き先を見失いがちになっており、そうした中『ザ・バットマン』とはまた違うカタチで今後のヒーロー作品の進むべき道のひとつを示唆しているように思えた。

ただそうした作品性に関して物足りなさを感じる方もいらっしゃるだろう。
実際、ヒーローらしいヒーローはほとんど登場しない。
どちらかというと人間ドラマに軸足を置いており、救急救命士として働く主人公のキャシー・ウェブが、ほとんど理解不能で訳の分からない災難や危機を乗り越えながら『マダム・ウェブ』と後に呼ばれるヒーローに生まれ変わっていく様子がドラマチックに描かれる。

そういった作品の方向性に主役を務めたダコタ・ジョンソンの存在感はとても大きい。
スーパーマン、バットマン、スパイダーマンであれば、役者よりもその役のイメージの方が優先されるので、填まるか填まらないかで役者が選定されるが、そういう意味では『アイアンマン』や『キャプテン・アメリカ』『ブラックウィドウ』と同じように、彼女自身の人物像がそのままマダム・ウェブという人物(ヒーロー)像を形作っている。

作品を選べる立場の彼女がこの役を引き受けたからこそ、今作が成立しているようにすら思える。
とにもかくにも、マダム・ウェブは彼女の作品。
ダコタ・ジョンソンと心中する覚悟で作られたものだ。
そこに共感できるかどうかによって今作への評価は割れるモノと思われる。
私はきっぱりとダコタに一票入れたい。

製作側も賭けであったのだろう。ポスト・クレジットを含め、続編への布石も何も敷かれていない。
最後にチラッとネタバレを入れておくと(とはいえ、ストーリーには何の関係もないが)、今作は2003年を舞台にされていること。そして、キャシーの救急救命士の相棒の名前が“ベン・パーカー”であること。ベンの妹のメアリーが妊娠していることが描かれる。もちろん産まれてくる子の名は“ピーター”というわけだ。

コミックで描かれるマダム・ウェブはご覧のような高齢のご婦人として描かれる。
今作のキャシーは30代前半なので、ピーターが高校生になる頃にキャラクターとして適正化されるという仕組み。
つまり今作はマダム・ウェブ “0”、前日譚にあたる作品というわけだ。
ただし、MCUのピーター・パーカーは2001年生まれの設定なので、トム・ホランド版とは違うマルチバースに属する存在だというわけだ。
『ドクター・ストレンジ』のアストラル体や、『ロキ:シーズン2』で、マルチバースを可視化したユグドラシル(世界樹)と同様の表現手法が取られていることなど、MCU作品との関連性も示唆されているし、何より別のバースにいても合流できる可能性は、すでにヴェノムが見せているので、期待は膨らむが、これから『X-MEN』や『ファンタスティック4』の制作に取りかかるMCUの現状を鑑みるに、ダコタ・ジョンソン演じるマダム・ウェブがMCUに間に合う可能性は低いように思う。誠に残念。

私としては是非ともダコタ・ジョンソン演じるマダムウェブの今後の活躍に期待したい。
MCUに合流することはなくとも、ヴェノムやモービウスとの共闘は是非果たして欲しい。
ソニーのスパイダーユニバースの方は『クレイヴン・ザ・ハンター』『ヴェノム3』が今年中に公開される予定なので、まずはそちらでこの蜘蛛のユニバースがどのように合流していくのか見守りたい。
(オススメ度:70)

閑話休題
全米俳優協会、脚本家組合のストライキによって、ハリウッド作品の供給がピタッと止まってしまった。
劇場でロードショー作品を観ることを心待ちにしている私にとって、非常に寂しい数ヶ月が過ぎ、やっと安定供給の時期が戻った。
3月には『DUNE part2』、そしてついに『オッペンハイマー』がやって来る!
早く観たいっ!!!!

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