
いまどきグローブをせずにオートバイに乗る人はいないと思うので、なぜオートバイ乗車時にグローブが必需品なのか、説明するまでもないと思いますが、念の為説明いたしますと、それは安全のため。
オートバイ乗車時に限らず、人というのはバランスを崩して転倒する時、転倒を防ごうと無意識に手を出してしまう。手を着く先が柔らかい土や雪ならまだしも、そこがアスファルトだったら・・・と想像すれば、ライディンググローブがとても重要な防護具であることが分かるだろう。
そうした防護性に加え、オートバイ用のライディンググローブには防寒性も求められ、放っておくと、グローブはどんどん分厚くなってしまい今度は操作性が下がっていってしまう。
ウィンカーなどの電子系の操作を除いても、ライダーの手はハンドル操作、アクセル操作、ブレーキ操作、クラッチ操作という重要な役割を担っていて、どれもスイッチのON/OFFでは済まない、それらの操作はできれば素手でしたいと思うほど微妙な加減を求められる。分厚いグローブが適さないことは言うまでもないだろう。
そうした防護性、防寒性と、操作性という二律背反する要素を両立させることが、本当に難しい。
って話はこちらでいつもしている気がする。
つまり、オートバイでもスノーボードでもサーフィンでも、常に便利さを求められる道具というのは、滑走性と操作のための抵抗感、積載力と軽量化など、いくつかの背反する要因を同時に片付けることが求められるモノだということだ。
そうしたことからオートバイ用グローブの素材には断裂製や破断性に優れながら、操作性に優れる本革が主に選ばれることが多い。ナイロンなどの化学素材でも本革以上の保護力や防寒力を得ながら、しかも安価に製造することができますが、操作性を確保することが誠に難しい。
何より、本革製品の放つ匂い立つようなモノの魅力にはどうしたって太刀打ちはできない。
とはいえ、本革性ならどれを買っても同じなのかと言えば、決してそうでないところもまた世の常。
もちろん一番に違うのはデザイン。と言いたいところですが、私に言わせると一番に違いを生むのは各メーカーごとに違う手型だと思う。自分の手に合う型と出会うのが、本当に難しい。指の長さはある程度のところで諦めるにしても、特に難しいのが指の太さ。
せっかく本革を使っているのに、形が合わずに指の関節部分に大きく皺がよってしまっては元も子もない。
そして次に本革の柔らかさ。
柔らかいものは耐久性に欠けるように思えるし、最初は硬くて使ううちに手に馴染むものは馴染む頃にはヘタリ始めてしまうように思う。


私と同じようにライディンググローブに悩む方も多いと思うが、そんな皆さんにぜひオススメしたいのが『JRP』であります。
百聞は一見に如かず。ぜひお近くのオートバイ用品店に行って試着してみて欲しい。まるで手に吸い付くようにフィットして、自分の手の厚みがそのまま増したような、自分の手の神経系等とシンクロしたような、絶妙な着け心地と感触を感じられることと思います。
それをして「まるで素手で触っているよう」とか言うのはこうした場合の常套句ですが、素手で触るよりも操作感をよりリアルに感じられるのは、グローブのグリップ力が上がることで、手の握る力をサポート(と言うよりも、むしろ加勢)しているから。グローブは防護や防寒のためだけにあるのではなく、操作の確実性や、疲労の軽減といった本来的な役目があったことを、JRPのグローブは思い出させてくれます。
これはもちろん太さを含めた愛車のグリップ形状や、グリップラバーの表面のデザインの仕様との相性もあるかもしれません。私は例によってモノは試しの精神で、目を瞑って「エイヤッ」と買って使ってみた結果が大正解だったのですが、これから試着する方々にはできれば実際にグリップを握って試して欲しいと思う。

結局私は4つ購入することになったのですが、私が最初に買ったのはウィンターグローブの『GBW』(画像右)。
これまでも多くのウィンターグローブを使ってきましたが、防寒性に長けたものはゴワついて扱いづらく、扱いやすいものは指先がかじかんだりと、まさに帯に短し襷に長し。そんなオートバイ用グローブの抱える問題を一番分かりやすく感じられるのがウィンターグローブ。なので、JRPの良さが一番分かりやすいのもウィンターグローブだと思う。
GBWは防水牛革を使用し、透湿防水フィルム「サイトス」に、インナー甲側に機能素材「サーモトロン」を採用するなど、グリップヒーターの使用も考慮した作りが施されていて、手のひらと、風を受ける手の甲とで役割分担がしっかり成されている。防寒性は言うことなしなのに、まるで中綿を持たない3シーズンモデルのようなしなやかさを持っており、以来私はJRPのファンになってしまいました。
その次に手に入れたのが3シーズン用の『DBN』(画像右から二番目)。
中綿がないぶんウィンターグローブよりもダイレクトに本革のしなやかさだけを感じることができる。そうしたハメ心地の良さとともに鹿革が使用された素材本来の醸し出す見た目の高級感も抜群。
XS・S・M・L・LL・3L・4Lの7サイズに指の長さの「レギュラー」「ショート」「ロング」を備える全21パターンを展開するというメーカー肝入りのモデルでもある。店頭ですべてのラインナップを試すことはできないと思うが指標は得られると思う。私はたまたま店頭にあったLサイズのレギュラーでちょうど良かったのでラッキーでありました。
お次はショートモデルの『WTS』(画像右から三番目)。
DBNが暑く感じてきた頃に、たまたま用品店の閉店セールで見つけて手に入れたのですが、結局通気性の良いパンチングメッシュが施された『STM』(画像左)を買い足してしまった。

ご覧のようにどのモデルもパネルの縫い合わせが外に出る「ピケ縫い」が施され、ヘヴィデューティーなアウトドア用グローブの風情を持たされたデザイン的な見た目の特徴以上に、内縫いよりも操作時の手のゴロ付き感が軽減されているところに注目いただきたい。
私は手に限らず汗かき体質なので、グローブの色落ちや手への色移りにはそれなりに困らされてきたのですが、今のところJRPのグローブではそれらを経験していない。ちなみに全品に皮革用の耐水剤が浸透されているということです。
メーカーのホームページを見ても、自身の技術力を威張るどころか特に詳細な説明もなく、この品質の高さを裏付けるのは手袋産業がとても盛んな香川県東かがわの地で、職人が鞣しから染色、加工まで行っているということを謳う「MADE IN JAPAN推し」以上のことはまったく分からない。
良い言い方をすれば謎めいている。もしくは「頑固で無口な職人気質」とも取れますが、私に言わせれば、ただの「宣伝下手」だ。
ただ、広告屋の私が言うのもナンですが、パッケージデザインや広告、WEBサイトなどのマーケティング上手なメーカーが良い製品を販売しているかと言えば、必ずしもそうではない。私の経験上、地方にあるこういった宣伝下手な企業にこそ、まじめで優良な企業が多いこともよ〜〜く心得ている。なので、逆にそこが魅力に感じられてしまったりもしている。
といった具合に、JRPはすっかり私のお気に入りアイテムになったのですが、ひとつだけ注文がある。
それは、スマホのタッチ画面をグローブをしたまま操作できる最近流行りのモデルがないことだ。
(明日につづく)
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