道志みちを抜けて山中湖の小作でほうとうを食べる旅

私のツーリングはいつも目的地があるようでない。走りたい場所、走りたい道が目的地だ。
なので、走りたい道の先に食べたいものがあるようなシンプルなツーリングは望むところ。
日帰りなら尚のこと、そういったシンプルな道程が適任だ。

わざわざ言うことでもないが、私は「餺飥(ほうとう)」が大好きだ。
年に2回くらい食べたくなる。
しかも、ほうとうは『小作』と決めている。

ほうとうは武田信玄が陣中食にしていたと伝わるほどの山梨のソウルフード。
なので『甲州ほうとう 小作』も山梨と山梨寄りの長野にしかない。
ほうとう好きのオートバイ乗りとしては願ったり叶ったりなわけなのだが、山梨や長野というのがまた、埼玉から中途半端に遠い。日帰りでツーリングとなると、いつもまっ先に小作が思い浮かぶのですが、この距離感に阻まれてなかなか行くことが叶わない。

「日帰りツーリングと言えば」の奥多摩を越えて、更に走り抜けると甲州市の小作に辿り着けるのですが、行きやすいが故に奥多摩を多用したくない気持ちが頭をもたげてしまいどうにも重い腰が上がらない。
さてそうしたものか。と考えていて思い出した。

小作は山中湖にもあるじゃないか!
しかも、山中湖と言えば大好きな道志みちを走れる!

というわけで、遅れに遅れた梅雨入りが発表されたその翌日。
貴重な晴れ間を突いてツーリングに出かけることにした。

私は低い里山の間を、縫うように流れる清流沿いに走る田舎道を、オートバイで走るのが大好きだ。
相模原市から山中湖に抜ける「道志みち」はまさにそういう道。
道沿いにはきれいな景観をもつキャンプ場が数多くあって「道志村キャンプ場女児失踪事件」のことを覚えている方もいるだろう。あの一件で悪いイメージが付いてしまった感もなくはないが、道志みちはとても素晴らしい道だ。
もう数えきれないほどこの道を走ってきましたが、林道ばかり走るようになり、ここには久しく来ていなかったのですが、こうして走ればやはり、良い道だと再認識。
R18に乗るようになり、若い頃の記憶をなぞるように走らせる道がなんとも言えず楽しい。
歳をとるのも悪くない。

道志みちは相模原から50kmほどあるのですが、気分的にはあっという間。
正面に富士山が見えたら山中湖はもう目と鼻の先。

ここのところ軽量で小型のハンターカブにばかり乗っていたので、ただでさえ重くてクセの塊みたいなハンドリングを持つR18の乗り換えに苦労するんじゃないかと思っていたのですが、最初の交差点を曲がるときに「クセ強よっ!」と思った以外、感覚はすぐ元に戻った。
っていうか、やっぱオレのR18は最高だ。
航空機のエンジンを始祖に持つボクサーツインは、まさにオレを昇天させようとする。
あまりの気持ち良さに道志みちで脳みそ溶けるとこだった。マジ最高。

10時頃には山中湖に到着。

11時開店の小作に30分前に向かうと、すでに20人以上の人が開店を待って並んでいた。さすが有名店。
ただ、この店は座席数が150あるのでこれくらいの行列はラクショーで飲み込んでくれる。

そうして念願の『鴨肉ほうとう』をいただく。
何軒かの店でほうとうを食べたが、何をどう考えても小作がナンバーワンだ。
一度食べたら他で食べられなくなる美味さ。
あまりの美味さについ食べ溜めたくなってしまうが、かなりのボリュームなので「おかわりください」というわけにはいかないのが残念なところ。食べたければまた足を運ぶしかない。

お目当てのほうとうを食べたらサッサと帰ってもいいのですが、せっかくなので山中湖周辺を周遊する。

『忍野八海』が近ごろ外国人観光客でものすごく混雑しているとは聞いていたが、これほどとは・・・
さすがは世界文化遺産。情緒もへったくれもない。
静かな忍野八海を知る者からすると、これじゃあここのもつ魅力の1割も感じられない。

メイン処から離れて人の少ない方へ。
それでもとてもゆっくりできる感じじゃないので滞在時間10分で撤収。

みんな観光地に滞在しているのか、山中湖周辺の道は意外と空いていて走りやすい。
R18に酔いしれることのできる道がつづく。

日本最高峰なのに、これだけ近くにいてもどこからでも見られるわけではないのが富士山の奥ゆかしいところ。
それ故に見上げられる場所に出るとついついオートバイを停めてしまう。

山中湖を周遊する道も、それこそ16歳のときからこれまで何十回とオートバイで走ってきた。
なのに、懐かしさだけでなく、来る度に新たな発見があるのはR18のおかげか。
繰り返すが、ガキの時分に目を三角にして走り倒していた道を、40年近い時空を超えこうして走り直していることはとても感慨深い。
夜中までバイトして、稼いだお金でガソリン入れて、飯も喰わずにただただ走って、いつも転んで修理にお金がかかって、といったことを無限ループのように繰り返していた。
若かったし、ほんと馬鹿だったと思う。って、今でも同じことを繰り返しているのだから「馬鹿は死ぬまで治らない」っていうのは正しいのだとこの歳になって知る有り様だ。

山中湖を一周したら、そのまま道志みちに入って来た道を戻る。
標高1,000mに位置する山中湖周辺はやはり涼しかったようで、道志みちを戻るにつれて暑さも戻って来た。
ちなみにこの日の東京都内は30度超えの猛暑日。

というわけで、大好きな道志みちにほうとうも食べて、大満足の日帰りツーリングとなった。
行く前は「ちょっと遠いかな」とか腰が引けておりましたが、案ずるより産むが易し。
まさに“ほうとうの出し汁の冷めない絶妙な距離感”でありました。

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