【2024-25シーズンの答え合わせ】VECTOR GLIDE GENIUS Narrow

スキーに限らず、私はオールラウンドに使える道具が好きだ。
それは汎用性というよりも、「可用性(Availability)」と呼ばれるようなもので、雪質や天候、もっと言えば私の気分を含めて、千変万化する状況にあっても、乗り換えることなく一本で楽しみ続けることが可能なスキー。
あくまでもそうした要求に応えてくれるかどうか。という観点で『GENIUS Narrow』を評価することをまずはお知らせしておきます。

趣味以前に移動手段として発達したスキーは、そもそも道具としての実用性が高いので、スノーボードに比べて尚のことそうした要求は高くなる。
そう考えると面白いのは、移動手段そのままであるはずのオートバイに対して、私はあまり可用性を求めてはいないということ。私はそのオートバイが走れる道や時間、走って楽しい環境の方を選んで可用性を確保している。
そうした価値観はスノーボードと共通していて、私にとってスキーはクルマで、スノーボードはオートバイにあたるものなのかもしれない。

とはいえ、道具だからこそ用途や得意分野は細分化され、多様化の拡大に伴う進化とともにその枝葉の数は日々増え続けている。
そうした時代背景にあって、オールラウンドに使える道具などあるはずもないことはよ〜〜く分かっているつもりだ。最低限、自身の目的を取捨選択した上で、できることなら3〜4つほどの要素をこなして欲しい。

何より大切なのは圧雪でのターン性能

GENIUS Narrowに限らず、圧雪面でのターンの気持ちよさは絶対に欲しい。
スピードを一定に保つことが容易で、設定されたターン孤を引き出しやすいスキー。
これに関しては、私の知る限りVECTOR GLIDEに圧雪でのターンが気持ち良くないスキーはないと思っている。
もちろん全モデルが同じ味付けになっているわけではないが、比較的オールドスクールな基礎スキー的な味わいが濃いめだという点でVECTOR GLIDEは一貫していると思う。

そして新雪での浮力

パウダースノーでもゲレンデの端パウでも、ノーズが刺さらずにしっかりと浮いてくるスキーが良い。
加えて底付きしないような深雪でもスキーの反発がしっかりと感じられるスキー、トップ側をガンガン踏んでいけるスキーなら尚良い。

あとは荒れた雪面でも操作がしやすいこと

グズる雪にも足を取られることなく、ある程度振り回せるような、操作の軽いスキーが良い。
横方向のズレを活用しやすい機動性の高いスキーが良い。
できればコブもイケると尚良い。

先日の春のHakuba47で感じた、GENIUS Narrowの持つ、深いグズり雪を突っ切るように走り抜ける走破性と、それと反比例するように右に左にダンスするように動かすことのできる操作性の高さには目から鱗が落ちた。
もちろんそれは「こんなに太いパウダースキーなのに」という但し書きがつく意外性が痛快であったことは否めないが、それを飲み込んだ上でもまた体験したいと私に思わせる出来事でありました。
そうしたGENIUS Narrowのややこしい場面での機動性の高さは、もちろんバックカントリーで際立って感じられたことも申し上げておきたい。

そしてもちろん、その全てを満点でカバーするスキーなど存在しない

といった3つの要素が、私が「オールマイティ」と呼ぶ要素なのだが、帯に短し襷に長し。たとえ私の胸先三寸でどうとでも解釈できることであったとしても、この3つをバランスよく備えているスキーというのがなかなかない。

中でも3つめの荒れた斜面での操作性を、他の2つを網羅した上で獲得しているスキーというのがなかなかお目にかかれないように思う。まあ、パウダースノーを要素に加えている時点で、その180度裏側にある圧雪されていない湿り雪を何とかしろと言うのは無茶ブリだと私でも思う。
もしかすると、3つめの要素は北海道など雪質の良い雪山ではあまり重視されないのかもしれない。
つまり、トップシーズンでも水を吸った片栗粉のように雪が固まってしまう雪質を多く滑ることが多くないと、あまり重要視されないのかもしれない。

というわけで重要なのはそれらの配合バランス。
当然その組み合わせは天文学的に存在する(ハズな)ので、自分にとっての理想的な配合量を見つけたい。

結論を述べると、GENIUS Narrowは
以上の3点に関して、かなりの高バランスを誇っていた。

新雪での操作性は言うに及ばず。
圧雪ターンの官能性能は『MAXI Gran Turismo』を「100」とすれば「80」。
荒れた斜面での操作性は『MASTIFF』をも超えている。ちなみに、MASTIFFの新雪での操作性は、GENIUS Narrowを「100」としたときに「80」で、圧雪ターンの官能性能は「95」。
MAXI GTに関しては、新雪も荒れた斜面も試してはいないが、想像するに新雪が「50」で荒れた斜面での操作性は「70」程度ではなかろうか。
以上はあくまでも私の主観ですので悪しからず。

個人的には、道具としてはMASTIFFが一番使い勝手が良いバランスを持っているように思うが、今シーズンの八海山のように、新雪斜面が加わるようなシーンではGENIUS Narrowの存在感が圧倒的となる。

私はオリジナルのGENIUSには乗ったことがないので、Narrowとの違いについてはまったく分からない。
分からないのですが、たぶん私はNarrowの方が好きだと思う。

ちなみに。
これまで私が所有したスキーの中で、先述の3要素を一番に備えていたのは『LINE SAKANA』。
GENIUS Narrowは3つの要素のいずれもSAKANAを上回っていると感じるが、総合点で捉えると大きな違いはなく、好みの違いといったレベルとなる。
それを強く表しているのはGENIUS NarrowとSAKANAのフレックスの違い。
それと比例して両者は重量にも大きな違いがあるが、ずっしりとレスポンスの強いGENIUSと、しなやかに反応するSAKANAといった違いがあって、それぞれに甲乙つけ難い魅力がある。

ただ今は、新雪でも圧雪でも、荒れた斜面でも、カチッとしたレスポンスしてくれるGENIUSに乗るのが楽しくて仕方がない。

明日は『MAXI GT』の答え合わせをお送りいたします。
お楽しみに。

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