【BMW R18】リアサスをOHLINSに替えたらハンドリングはどう変化するのか?考え出したら夜も眠れなくなった。というのは嘘ですが・・・

車重350kgをロングホールベースで支えるR18の車体設定はかなりクセのあるもので、特に「サスペンションが跳ねる」「ハンドルが切れ込む」R18の操縦性は、走行安定性と快適性を高い次元で両立させて当たり前の現代的なモーターサイクル、その筆頭と言っていいBMWとしてはハッキリと0点。だと私は思う。
長距離走行を苦にしない、とても優秀なハンドリングをもつBMWに親しんだ身にはまさに青天の霹靂。
路面の良い道をまっすぐ走っているぶんにはどんなスピードであっても問題はないが、カーブ区間、中でも屈曲の小さいカーブや下り坂ともなると、あからさまに前輪への負荷が度を超すギリギリになっている様子がハンドルからありありと伝わってきてしまい、まあまあ肝を冷やす。
直線路であっても、路面が荒れてきたり、凹凸が激しくなってくるとかなり強めにハンドルが振られる。場合によっては大きくハンドルを取られてしまうこともある。高速道路で鋭利な段差などを乗り越えれば、私の尻に返ってくる衝撃は、ほとんど罰ゲームのレベルとなる。

ロングホイールベースによるフロントヘビーがそれらの主な原因であると踏んだ私は、リアの車高を下げてフロント荷重を減らしながら、追従性の良いスプリングに換えてフロントの強い跳ね返りを抑えるなど、前後サスペンションともに手を加え、併せてセッティングもあれこれと試してきた
こちらに変更点を紹介し終えてからも、プリロードや伸び側の減衰など、イジっては戻しを繰り返しながらの模索は続いていた。
ただ、走行距離を伸ばすにつれて、私自身がR18の特殊なハンドリングに慣れてしまったこともあり、調整を加えるにしても、それはその日のバイオリズムや気分転換程度のことで、概ねセッティングは詰めることができていた。と思う。

そんな平穏な日々(?)を送っていた私でしたが、先日『Unit Garage R18サイレンサー』に交換したことに伴い、バンク角が足らなくなったことで、リアのプリロードを加えてリアの車高を上げざるを得なくなった。
これまでさんざんリアの車高を下げることに腐心してきたので、それは苦渋の選択だったのですが、言ったように慣れと言うのは本当に怖いもので、意外にもこのセッティングが良く感じられてしまった。
もちろんサスペンションが跳ねることと、特に下り坂でハンドルを取られる傾向は先祖還りしてしまったものの、平坦な路面状況でのターンイン時の前後のグリップバランスが良く、回頭性がとても良くなったなったように感じられた。

と、ここでいつもの悪い(?)クセが頭をもたげる・・・
リアサスペンションをOHLINSに替えたら、このハンドリングを維持しながら、跳ねる現象をある程度抑えてくれるんじゃなかろうか??

良いサスペンションの定義は様々あると思うが、私が思うサスペンションに求められる最大の性能は、硬く締め上げられているのによく動くこと。

サスペンションとはそもそも衝撃を吸収するためのものなので、柔らかい方が乗り心地は良くなる。
ただ、柔らかすぎると今度はフラフラと車体が安定しなくなってしまう。
特に高速時は車体のバウンドを抑えた方が安定感が高まるわけですが、タイヤで吸収できる衝撃を超えるようなものを踏んだ時に、足回りが硬いままだと車体ごとどこかに飛んでいってしまう。
コーナーの入口では前傾姿勢になったほうが舵が効き、コーナーの出口ではリア荷重になった方がトラクションの架かりが良くなるので、ピッチング方向の姿勢変化をさせやすい柔らかい方が良いわけだが、荷重がかかってサスペンションが縮まった状態からすぐに伸びてしまえば、フロントタイヤのグリップレベルが安定せず、コーナリングはグダグダになってしまう。

というように、サスペンションには簡単に言って「硬さ」と「柔らかさ」という二律背反する特性を、場面ごとに使い分ける器用さが求められる。サスペンションの歴史はこのこととの戦いに他ならない。
今ではその難題への究極の回答と言っていい電子制御サスペンションが存在するわけだが、電子制御が登場するまでは機械式でこうした難問への対処を余儀なくされてきた。
ちなみに、現代最高峰の技術を惜しみなく投入して争われるF1では、逆に電子制御サスペンションの使用は禁止されている。それはあまりに開発費がかかりすぎるため、富めるワークス系チームと、弱小チームの間に明らかな性能差が出てしまうから。
電子制御サスペンションはそれだけ高価だということで、採用する市販車は超のつく高級車などごくわずか。
今でも大半のモデルが機械式サスペンションを採用しているわけだが、昨今の経済状況を鑑みるに、高級ブランドに属するBMWと言えども一円でも価格を下げたいところ。価格差がモロに性能差に出てしまうサスペンションの選定は頭の痛いところで、そのため装着される機械式サスペンションもまたピンからキリまである。

これまで乗り継いできたオートバイたちは、すべてアフターパーツとしてOHLINSのサスペンションに交換してきた。
特に、フロントにテレレバーサスを採用する『R1200C』『R1200GS』では、フロントも一本サスなので、2本の巨大なフロントフォークを交換する必要のあるテレスコピックフォークに較べれば、かなり安価に前後ともOHLINSに交換することができ、そのスポーツ性と快適性を高次元で両立した乗り心地には舌を巻いたものだ。
そうしたトラウマ級の過去の経験によって、私の中でOHLINSはすでに神格化されている。

「それなら最初からOHLINSを装着すれば良かったのに」
まさにおっしゃる通り。
ただ、当時は車高を下げることで頭がいっぱいだったので、ローダウン仕様で、加えてさらに車高を下げられる車高調整を装備するYSSに気もそぞろになってしまっていた。そして、いまだにカスタムを手がけるショップが少ないR18ですが、登場間もないタイミングで日本国内のショップさんが独自にオーダーしたカスタムモデルであることにも惹かれた。
何より、OHLINSの半額でどこまでの性能が達成できているのか、モノ好きとしては試してみないとならないと、へそ曲りなりの責任感が発動してしまっていた。

リアの車高を下げずにハンドリングを改善する特効薬として、いよいよOHLINSが気になり始めた。これもまたカスタムの玉突き事故、まさにチェーンリアクションなわけだが、一度その想像に支配されてしまうともう頭から離れなくなってしまう。またまた運の尽き。

というわけで、『OHLINS BM-180』をポチッといってしまった。
とはいえ不人気車のR18ですので、即納の在庫など日本国内にあるはずもなく、オーダーから待つこと1ヶ月。
OHLINSは我が家にやって来た。

日本で正規に購入できるR18用のOHLINS『BM-180』は、自動的にブラックバージョン。
OHLINSらしい黄色いスプリングにも惹かれるが、この特別感もまた素敵だ。

Length : 390.5 +9〜−3mm
Stroke : 51.5mm
Rebound : 13 clicks
Spring preload : 23mm
Spring rate : 95 N/mm
Spring free length : 180mm

以上がイニシャル・セットアップ。
車高調整は、むしろ足す方向に余裕が持たされ、短くする方向は3mmしかない。

いかに特別感のあるOHLINSであっても、YSSもブラックバージョンなので、残念ながらパッと見にはほとんど違いはない。前にも書いたがYSSの品質もとても高く、こうして並べて見てみてもOHLINSに引けを取らない。
最大の見た目の違いは、ダイヤルを回すだけでプリロードが変更できてしまうリモート式のプリロードであるところ。言ったようにオーリンズはこれまでいくつも購入してきたが、リモート・プリロードアジャスターを装備するモデルを購入したのはこれがはじめて。

さておき、言ったように全長はノーマルと同等の390mm。
YSSはこれまで繰り返してきたセッティングの果てに、プリロードの追加で最終的に全長は380mmになっていた。
乗り心地を比較するならサグは極力揃えておきたいところ。
そこで、車高調整をすべて短くする方向に使い5mm短くして385mmにしてから装着することにした。
先述のスペックノートには、車高調整幅はマイナス3mmとありましたが、実測値で5mmまでイケた。

まずは、車高調整以外はイニシャルセットアップのままでテストしていこうと思う。

重要部品でありますが、言っても前後のボルト2本で取り付けられているだけのものなので、リアをジャッキアップさせてスイングアームをフリーにさえしてしまえばサスペンション本体の交換作業はものの30分。

むしろリモート・プリロードアジャスターのケーブルの取り回しに、かなり余計な時間がかかってしまった。
放っておくとケーブルがドライブシャフトと干渉してしまうため取り回しに苦労させられた。
さておき、アジャスターがR18の見どころの一つである剥き出しのドライブシャフトを隠してしまうのはいかがなものか。取り付けステーをひん曲げて位置変えるか。

交換によって地上からシートフレームの後端位置で測った0G時のサグは、YSSの580mmから595mmまで上がることとなった。
もちろんリアの車高が上がるのは、R18にとって、否、私にとっては大問題なわけですが、このことはすでにカタログの数値からも読み取れていた想定内のこと。
私がOHLINSに期待するのは、言ったように硬いのによく動くこと。
車高が上がってもそのぶんストロークしてくれさえすれば良い。
YSSでは0Gはもちろんのこと、私が跨った1Gでさえリアサスはまるでリジットのように縮まなかった。
「オーリンズなら1Gでもサスペンションがきちんと動いてくれるんじゃないか??」
交換が済み、恐る恐る愛車に跨ってみると・・・
リアの車高はスッと1cmほど下がった!

これはとてもよい兆候だ!

果たして、YSSより倍以上高価なOHLINSのサスペンションは、期待通りの働きを魅せてくれるのか???
はたまた巨額の不良債権となってしまうのか・・・

インプレッションはまたそのうち。

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