プレデター:バッドランド

結論から先に申し上げますが、想像以上に楽しめた。

『プレデター』シリーズは大好きなコンテンツではありますが、そんな私でも正直に言って『プレデター:バッドランド』にはまあまあ懐疑的だった。
特に『vs エイリアン』、『ザ・プレデター』あたりから、多くの視聴者の嗜好に応えようという下心がミエミエの薄〜〜い内容に変わっていってしまったことが挙げられる。
ただそれは『エイリアン』シリーズにも言えることで、創造主であるリドリー・スコットの手によって、再び重厚なSFドラマに軌道が修正された。

プレデターもシュワルツェネッガー主演の第1作の持っていた、分厚めのドラマ性を取り戻すべく、2010年公開の『プレデターズ』をはじめ、Disney+オリジナル作品として配信されている『プレデター:ザ・プレイ』、そして、Disney+で今年配信されたプレデター初のアニメーションシリーズ『プレデター:最凶頂上決戦』によって、完全な地ならしが施された格好。

そこに今をときめくエル・ファニングを加え、話題性の部分でもスタジオの本気度合いを示して見せた。

そして今回の注目点は、これまで宇宙から来た残忍な捕食者としてだけ描かれてきたプレデターを、「ヤウージャ族」という宇宙種族として描くはじめての試みがなされたところ。
そのため、ヤウージャの種族が話す言語も登場し、宇宙最強であることを運命づけられた戦闘種族の視点から、それゆえの彼らのもつ悲哀や葛藤が描かれる初めての作品となった。

つまり、これまでのヴィランとしての立ち位置から、観客の感情移入の対象となる主役へと、伸るか反るかの大博打と言っていい方向転換が施された。
私としても、その大博打の結果が一番怖かった部分。
大外しだった場合はここに感想を書くことも避けようか、とか真剣に考えてしまいました。

もちろん、ツッコミどころがないわけではない。
それでも冒頭から、自身より強い者の存在を良しとしない、弱い存在は自身の子供であっても殺そうとする孤高の戦闘種族、ヤウージャ族の強い精神性に圧倒されてしまう。
そんな圧倒的な戦闘種族の“落ちこぼれ”であるデクと、惑星探査用としてあえて感情を持たされたシンセティック(合成人間)、ティアの、宇宙上最悪で最凶の惑星での冒険に没入することができた。

エイリアンシリーズではじめてのドラマシリーズとなった『エイリアン:アース』でも、ウェイランド・ユタニ社が推し進める化学兵器転用のための捕食生物採取の姿が描かれたが、今作に登場するティアもウェイランド・ユタニ社製の惑星探索用サイボーグ。

『エイリアン』、『エイリアン2』では、合成人間がいとも簡単にエイリアンに真っ二つにされてしまう様子が描かれたが、至近作である『エイリアン:アース』では、人間の感情をダウンロードされたシンセティック“ハイブリッド”が、ゼノモーフを撲殺してしまうほどの戦闘能力を備えている姿が描かれた。
今作に登場するサイボーグたちもかなりの戦闘能力を備えており、ティアも上半身だけの姿ながら、プレデターに負けず劣らずの能力を備えており、デクの足手まといどころか、バディのレベルにまで上り詰めている。
つまり、地球人が生み出したシンセティックは、エイリアン、プレデターに肩を並べる、宇宙上で最強の捕食者であることがこれで決定したわけで、ある意味サイボーグとして創造主としての存在を欲した『エイリアン:コヴェナント』に登場するデイヴィットにも通じる仕掛けが施されている。

プレデターシリーズは、いよいよエイリアンのもつ世界観をも巻き込んで、またひとつ大きな流れを生み出したと言えるのかもしれない。

そうしたサイボーグの位置付けが、今後の展開に大きな楔を打つこととなったという部分も、今作の重要な見どころになると思う。

(オススメ度:80)

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