
R18のリアスイングアームは、リジットサスだったR5をオマージュしたデザインが施されており、まさか乗り味までオマージュしてるとは思わないが、まるでリジットサスのように硬く締め上げられている。
私の体重は決して軽い部類ではないが、それでもサスペンションは1mmも沈まないほど硬い。
こうしたセッティングの方向性を採る理由は、一番装備が簡素なPureでも350kgある超重量級のR18を支えないとならないということもあるが、それに加えてタンデム乗車&二人分の荷物をフル積載した状況までを見越したセッティングであることが想像される。
ロングホイールベース、寝かされたキャスターアングルなど、重量級であることと併せ、R18のフロントの悪癖の原因となっている。

R18のラインナップは同じリアサスペンションを共用しているという噂。
車体を構成するパーツの中で、サスペンションは1〜2を争うほど複雑でいて、高い精密さが求められる。
それゆえにサスペンションにお金をかければかけるほど、高級な乗り心地と高い運動性能の両立など、求められる目的に対する成功率は如何様にも嵩上げすることができてしまう。逆に言えばサスペンションはコストダウンの絶好のターゲットにされることが多いということだ。
聞くところによると、Pure以外のモデルにも同じリアサスペンションが純正装備されているという。
パーツの共通化はコストダウンに一番効くという話はよく耳にするので、これも十分にあり得る話だ。
R18Bが398kgで+53kg。Roctaneが374kgで+29kg、Pureよりも重い。
もしもそれらの車重まで視野に入れた共通部品だとすれば、何をどうしたってPureには硬すぎる。
Roctaneを試乗した印象は21インチホイールと併せてとても良好なものだったので、R18がラインナップを構成していく中で、最軽量のPureが貧乏くじを引いた可能性は極めて高い。
とはいえ、R18専用設計として、ゼロから生み出された1,800ccOHVボクサーエンジンは、とてつもなく豪華で贅沢な存在だ。「これだけ金のかかったエンジンを、価格は安くしておくから、車体関係はオーナーがなんとかしてよ」という、メーカーからのメッセージだと、良いように受け取っておくことにする。
OHLINSは跨っただけでその品質の高さが実感できる。
そんなガチガチのノーマルサスペンションとは打って変わって、OHLINSリアサスペンションは乗車1Gでスッと1cmほどリアサスペンションが沈んでくれるほどしなやかにできていた。
サスペンションは衝撃を緩和するためのものでありますが、まったく縮んでいないところから縮み始めるよりも、ある程度縮んだところから縮ませた方が衝撃に対する追従性が良い。そして、縮んでいないということは、これ以上伸びる余地も残っていないことを意味し、そこから先は空中に跳ね上がる他ない。衝撃を受けたサスペンションが跳ね戻る余白がどれだけ残されているか、そこでサスペンションの余裕が測れるわけだ。
そうしたことを期待しながら観察する身にとって、乗車1Gでスッとリアサスが縮んでくれることほど頼もしいことはないというわけだ。

路面状況がありありと伝わってくる、情報量の解像度がめちゃくちゃ高い。
乗車1Gでスッと沈み込むということは、走行中の荷重によってさらにサスペンションが縮むということ。
それは「柔らかい」という言葉で表現されることなのですが、単に柔らかいままではモーターサイクルの操縦性はグダグダになってしまう。
「柔らかいのに硬い」という二律背反する性能こそ、良いサスペンションの条件。
OHLINSはこれだけ軽く沈み込むのに、沈み込んだ場所でしっかりと車体の動きを抑え、しかも次の衝撃に備える。いわゆる二枚腰。
凹凸を乗り越えると、測ったようにその凹凸の距離だけ縮んで、路面を舐めるように上下する。
そのときに1mmでも追従が遅れても、速すぎてもダメだ。
振幅が大きくても、小さくても、丸くても、鋭角でも、高速でも、低速でも、OHLINSはタイヤを路面に押し付け続けてくれる。
驚異的なのは、凹凸を越える際に全くの衝撃を感じさせないわけではなく「いまどんな段差に乗ったのか」ということを手に取るよう(正確には尻に取るよう)に伝えてくる絶妙な味付け。
何より、常にリアが下がる方向で動作していてくれるので、これまで私が腐心して来たフロント荷重の軽減も同時に達成してくれている。
ロングホイールベースで、キャスターアングルが寝かされたR18の車体設定は、RnineTあたりのハンドリングと比べれば、リーンはずっと重く、アンダーステアが出てしまうし、ある程度の切れ込みは残ってしまう。
なのでこのあと書く評価に関しては「あくまでもR18における」という但し書きがつくが、これまで私が試してきたR18の中では最高にニュートラルなハンドリングとなった。
スッとリーンを開始して、操舵はリーンにリニアに追従して車体を回頭させて行く。
そのあとのリアへの役割転換も急がず慌てず、かといって遅れることなく、ちょうど良い案配でリアステアが開始され、アクセルに合わせて強力なリアタイヤのグリップも引き出してくれる。
とにかくリアタイヤのグリップ感、存在感が一気に増した。
R18はフロントタイヤがリアタイヤに対して倍以上の速さで摩耗する傾向があるが、リアのグリップレベル、路面追従性が上がったことで、リアのグリップバランスの分布が増し、摩耗の仕方も適正化さるものと思われる。

サスペンションセッティングは天文学的作業。
走行中にタイヤ〜車体〜リアサスペンションに架かる荷重は、スピードに比例して増えて行くので、それに伴ってリアサスペンションは縮んでいくわけですが、縮んだスプリングがスカッと荷重を開放してしまえば、車体の走行安定性はグダグダになってしまう。
縮んだサスペンションがどの程度の速度でまた元の状態に戻ることが最適なのか。
単純に直線路を走っているときでさえ、走行速度によって適切なサスペンションの減衰速度は変わってくる。そこにコーナリング時に架かる横Gまで加われば、サスペンションの最適解は天文学的な可能性の中から選び出されなければならない。
そうしたことを細かく設定することがいわゆる「サスペンションセッティング」だということになる。
ただライダーが購入後に施せるセッティングは全体の5%にも満たない。
つまり、出荷時に施された「イニシャルセッティング」が95%を占めているというわけで、メーカーごとのセッティングに対する考え方によって、ユーザーが受け取る結果は大きく変わってくるというわけだ。
相当な時間と距離をもってセッティングは煮詰められたのだろう。
試しに伸び側減衰を1クリック強める方向にいじってみたところ、スポーティさは増したが、イニシャルのままのちょっと動きすぎるか?と感じる程度の、乗り心地が良いセッティングの方がR18にはとても合っていると思った。
結局、箱から出したままのイニシャルセッティングが正解だということがすぐに理解できた。
R18を一人乗りで運転する際の運動性能と快適性の向上に焦点を当てて開発されていたことがよく分かる。タンデムや荷物が増える際には単純にプリロードを足してやれば良いということだ。
それにしても、このハンドリングに行き着くまでに、一体どれだけテストを重ねたのだろう。
いかにデータや経験則に富んでいても、机上の空論だけでは達成できないレベルだと思う。
実車でのテストを相当に重ねないとならなかったはずだし、それを誰がやっても良い結果が得られるわけでもない。
OHLINSのトップガンの評価を経て、市場に投入されているものと思われる。
そう思うだけでYSSの倍近い価格でも安いとすら思えてしまう。

Wilbersスプリングがフロントの悪癖をほぼ解決してくれていた。
私のR18にはフロントに『Wilbersフロントスプリング』が装着されていることが、今回の結果に大きく影響しているということは改めて言っておかないとならないだろう。
OHLINSによってリアの挙動が良くなったわけだが、やはりフロントが切れ込む、跳ねるといったR18の悪癖はリアサスペンションを交換しただけでは根治しない。
ただ、リアサスペンションがそうしたフロント周りの悪癖に影響している部分もあることは、なんとなくだが感じるところはあって、今回それがはっきりした。というか、前後の問題点を切り分けて理解することができた。R18が抱えるフロントの問題点はWilbersがほぼ解決していてくれたことが、これではっきりした。
フロントが拾う衝撃は、ほぼフロントでいなしてくれており、身体に伝わっていた鋭利な衝撃はリアから来るものでありました。フロントに続いてリアが跳ね上がることで、尻とハンドルから強い衝撃を感じてしまっておりましたが、OHLINSによって尻への衝撃がほぼ緩和されると、ハンドルからの衝撃もほぼ消えてしまった。つまり、リアの衝撃波がハンドルまで伝わって来ていたということ。
ノーマルのフロントスプリング使用時には、そうした悪癖に加えて、衝撃にハンドルを持っていかれることもあったので、Wilbersは乗り心地に加えてハンドリングに関しても高い効果があることが、これでよく分かった。
なので、今回お話しすることはOHLINSが発揮する効果だけでなく、フロントのWilbersとの連携あってこそのことだということをまずはご理解いただきたい。

私のR18は、これでほぼ理想形と言っていいところまできた。
そもそもR18が持っていたエンジンの鼓動感と、ほぼシンクロする排気音。
そんなまるで楽器のようなエンジンの所作に共鳴する車体設定を得て、いよいよ私のR18は完成の域に到達した。
中でもOHLINSに関しては、もっと早くに試しておけばよかったと今は思っている。
でも、サスペンションに限らず、あれこれ寄り道したからこそ、この答えに辿り着くことができたとも言えるし、逆に一直線に答えに辿り着いていたら、それはそれで面白くない。
こうした寄り道もまたオートバイの楽しさの一部なのだから仕方がない。
何より、またコロっと宗旨変えする可能性だって否めないしね。
それも含めて趣味ですから。


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