まさか私がKORUA SHAPESのボードに手を出す日が来るとは、思いもよらなかった。
ただ、全モデル共通の、何も描かれないキャンバスのような真っ白いデッキに、真っ赤なソールというアピアランスに興味を惹かれていたことは確かだ。
どの年のモデルでもデザインが同じなのだから、買い替え需要が起きづらいことは、ビジネスとしてマイナスとも取れるが、そうした「プレミアム」といった概念とは切り離された「潔い」という言葉がぴったりくる無垢のブランディングは、グラフィックを担当するクリエイターに支払うエクストラコストが不要なぶん、同時にコストダウンも果たしているものと思われる。

SHAKIN’ Speed Graphixがデザインを手がけた『UNIT mfg. RABBIT』は、ボードの素性もメーカーのこともよく分からない状態でも、グラフィックだけで「欲しい」と思わされる秀逸なデザインでありました。
これはKORUAとはある意味対極にあるブランディングでありますが、どちらもブランドの位置付けを図るためのマーケティング手法だ。
KORUAのあえて特別感を排するこうしたマーケティング手法は、見た目の差別化にとどまらず、環境等負荷の低い、サスティナブルな企業姿勢という、いたって現代的なメッセージにもなっていると思う。
そんなKORUAの哲学に共鳴したから『APOLLO』を手に入れようと思ったわけではない。それは「左右非対称シェイプ」だから。


左右非対称シェイプのAPOLLOにはレギュラーとグーフィー、それぞれ157と162がラインナップされていて、私はレギュラーの162を購入した。
これまでは試乗はおろか、KORUAのボードを店頭で見かけても、きちんと手に取って眺めたことがなかった。
加えて例によってネットショッピングなので、これがほぼ初見。
それでよく買ったもんだね。と、自分でも思う。いつものことながら。

今シーズンのモデルからKORUAにも近頃流行りのザラザラのデッキシートが新たに加わった。
スキーですが、私の『VECTORGLIDE GENIUS Narrow』、『MAXI GT』も同様のタテスジ状のザラザラトップシート。GENTEMSTICKにも砂粒状のザラザラしたトップシートが採用されているモデルがあったと思うが、これまで私が見てきザラザラ系より光沢がある。加えて、薄く格子状の模様も描かれているところが特徴。
KORUAはこれを『BRUSHED TOP SHEET』と呼んでおり、軽量ながら耐久性に優れ、もちろん撥雪性も持っているとするが、それに加えて、芯材の一部として独自のレスポンス効果があると主張している。
私は従来のグロストップの方がステッカーも貼れるしシンプルで好きなのすが、残念ながらAPOLLOはグロストップも選べる他のモデルとは違いBRUSHEDしか選べない。
ゲンテン乗りの悪いところではあるが、ついGENTEMSTICKとの価格差で、ボードの出来栄えを測ってしまいがちになるが、近頃はいかにGENTEMSTICKと言えども、その価格差ほど品質に違いはないように見受けられる。
もちろん、価格差はシェイプや滑走面の種類、仕上げ作業以上に、シェイパーの哲学が一番に反映されるはずの「不等厚」のセッティングにこそあると私は思うので、本当のところは乗ってみないことには分からない。
果たして、見た目は無垢でも、ブランディングにかけなかったぶんの原資で、滑走性能へのこだわりを通しているのか。それとも中身も無垢なのか?
左右非対称シェイプはサーフボードではずっと以前から存在していたアイデアなので、それじたいに驚きはない。

いま手に入るアシンメントリーのサーフボードでは、私はこれしか知らないのですが、非対称であることを除いてもこの『RYAN BURCH ASYMMETRY』はカッコいいと思う。ちなみにこちらでレギュラー用。
グーフィーサイド(画像上側)がバーチカルなスラスター気味のクワッドで、レギュラーサイドがコントロールの容易そうなエッグ系のシモンズのツイン。
グーフィーサイドではバーチカルなラインを、レギュラーサイドでは伸びやかなラインを狙う。と、そんな感じだろうか。
ライアン・バーチがよく足を運ぶポイントに、グーフィーはホロウな、レギュラーはマッシーな波の来るポイントがきっとあるのだろう。
(ちなみにライアン・バーチはグーフィーフッターなので、話がややこしいんですけど)
ぜひその違いを自身で味わってみたいところなのですが、現在こちらはユーズドでも目玉の飛び出るようなプライスタグが掲げられるお宝物件。
下世話な話は置いておいても、どちらかといえばパフォーマンス・ボードに属するので、たとえお金があっても私には乗りこなせない、まさに高嶺の花なのでございます。
そんな非対称ボードの乗り味を、スノーボードで体験しちゃおう。というのが今回の趣旨。
ここからは、あくまでもへそ曲がり流の勝手な解釈でしかないので悪しからず。

スノーボードにおけるレギュラーとグーフィーでの「乗り分け」とは何なのか。
APOLLOではレギュラー側は前足から離れたところから始まるラディウスを描くボード、グーフィー側は前足から近いが外側に遠いところから、同様のラディウスが描かれているボード、それらが左右に組み合わされている。

果たしてその意図は何なのか?
もう少し考えるために、APOLLOのレギュラーとグーフィー、それぞれのサイドを左右対称にしてみる。
これを見てピンとくるボードはないだろうか?

レギュラーは『ZEPHYR』で、グーフィーは『MIDFISH』って感じナノカ?
それぞれKORUAのラインナップからの引用だろうから、別ブランドのボードになぞらえるのはいかがなものかとは思いますが、私はKORUAのボードを知らないので、そこはご勘弁いただきたい。
あくまでもサイドカーブのアウトラインだけの比較ではありますが、イメージとしてはレギュラーが『ZEPHYR』で、グーフィーが『MIDFISH』といったところ。
あくまでもサイドカーブのイメージが近いというだけで、プロポーションもフレックスも違うし、何よりキャンバーも大きく違うので、実際の乗り味はまた大きく違うことは間違いない。
ただ、シェイパーが設定した方向性を想像する素材にはできる。って、『ZEPHYR』にも『MIDFISH』にも乗ったことがないので『MAGIC38』と『BIGFISH』で想像する他ないんですケド・・・
なので、最初のインスピレーションで感じた「GENTEMSTICKの『ビッグマウンテンシリーズ』と『スノーサーフシリーズ』をそれぞれ半分にして繋ぎ合わせた」というイメージに、実は一番期待していたりする。
基本どちら側もトップの反応を強めにするパウダーボードのアピアランスなのですが、レギュラーターンの方が比較的センター寄りの、前後にニュートラルに反応させる設えで、グーフィーターンではより強くトップの存在感を感じさせ、前からガンガン曲がっていく味付け。
私だけかもしれないが、トップの太いパウダーボードの場合、トップのエッジを引っ掛けるようにしてガンガン旋回して行けるグーフィーは最高に気持ちが良いのですが、特に重めの湿雪でレギュラーターンでトップの太いボードを立ててるように倒し込むと、ブーツの中でつま先が詰まるような、エッジがドラグしているような強い抵抗感を感じることがある。
翻って、スムースにターンに入って、ターン後半で伸びていくような『MAGIC38』や『SPEEDMASTER』のレギュラーターンもまた最高レベルに気持ちがいい。
そういう美味しいトコドリのハイブリッドだったら超ウレシイんですけど。
とかナントカ、今は勝手な想像を膨らませながら楽しんでいる。
というわけで、今シーズンはこの新しい玩具でも遊ぼうと思う。
GENTEMSTICKに比べればまあまあお安いので、使い倒すにはもってこいのアイテム。
とか、失敗だった時の言い訳をしながらも、実はかなり期待しているんですけど。果たして結果は・・・


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