28年後…

『28時間後…』『28週間後…』につづくシリーズ第3弾、『28年後…』
第1作『28時間後…』でメガホンを採ったダニー・ボイルと、アレックス・ガーランドが脚本で復帰した。
ある意味これこそが『28時間後…』の正統な続編。

言ってしまえばゾンビモノに属する今作ですが、数多ある作品群の中でも異彩を放ったのは、人間を凶暴化させる未知のウィルスが蔓延した28時間後に、ウィルス蔓延前に隔離病棟で鎮静剤を打たれて眠っていた男が目を覚ますという設定。
何も知らない男が廃墟と化したロンドンを徘徊しながら、少しずつ恐怖の事実と向き合わされるというプロット。

そうした観る者をゾンビで溢れるロンドンに引き込む脚本を活かすために、ゾンビは特定の地域に隔離されているという設定がシリーズを通して採られている。
ウィルス蔓延から28年が経過したことで、ゾンビの隔離は完全化され、グレートブリテン島全域(イギリス全土なのか、一部地域なのかは不明)が完全に封鎖されている。
隔離地域内で感染から生き延びた者たちは隔離地域を出ることも許されず、そのため独自の知識と技術を駆使して、“感染者”と敵対し、そして共存している。
この、感染と無関係に暮らす「外界」があるということが、今作の描き出す“希望と絶望”をより明確にしている。

法治国家など存在ぜず、隔離地域内での独自のルールを敷いてサバイブする人間たち同士の軋轢を描写することは、今シリーズの特徴と言っていいだろう。
そうした観点では、マンハッタン島を巨大な監獄にして凶悪犯罪者を隔離した世界を描く『ニューヨーク1997』や、核戦争後の荒廃した世界を描いた『マッドマックス』の世界観と共通していると言える。
そうした感染者と逃げ遅れた人間、そして人間同士の三つ巴の生存競争を通して、「命とは何か」「人間とは何か」を観る者に問いかけてくる。

それはつまり「命の尊厳」だと私には思えた。
「隔離地域に足止めされている感染していない人」はもちろんのこと、「感染者も人である」という、考えてみれな当たり前のこと、そして、外界を知らないまま、社会と隔絶した場所で育つ子どもの成長など、隔離地域と外界という枠組みだからこそ描けるテーマに真摯に取り組んでいる。

こうしたゾンビモノのお約束として、怪我人のようにしか歩けなかったゾンビから、疾走するゾンビが現れたりしたように、今作でも新たなバージョンのゾンビも登場する。
これまでになかったゾンビの生態や、感染から28年という時間の経過とともに、彼らもまた進化していることが描き出される。
進化とはもちろん、彼らの目的遂行能力を高めるための進化。
それはつまり、「捕食」の効率化につながる進化になるわけだが、今作ではついに「種の保存」についての彼らの進化も見ることができる。
「食物がなくなれば、感染者はいつか絶滅する」という大前提を覆す彼らの進化の姿も注目ポイント。

そして、この世界観は、次作『白骨の神殿』でさらに拡張される。

『28年後:白骨の神殿』1月16日、日米同時公開!
そして、そして、28年後は三部作となる計画が進んでいることもリークされた。
監督は未定だがアレックス・ガーランドがつづけて脚本を執筆するとのこと。
なんと、『28時間後…』で主演を務め、その後『オッペンハイマー』でアカデミー賞主演男優賞に輝いた、キリアン・マーフィーとの出演交渉も進んでいるらしい。
『28時間後 バース』からも目が離せません!

(オススメ度:70)

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