アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ

面白かった。
安定の面白さ。

この配信時代に、映画館までわざわざ足を運んで、お金を払って映画を観るという行為に対して、求められる対価は人ぞれぞれだと思うが、多くの方々をきちんと満足させて劇場を後にさせることが映画の最大の価値だとすれば、『アバター』ほど間違いようのない映画はないと思う。

そんなアバターも3作目。
あえて難癖を付けさせていただけば、前2作とストーリーの立て付けがほとんど一緒だという点。
1作目と2作目の間には13年という年月があったので、復習の意味も含め、『ウェイ・オブ・ウォーター』ではあまり気になりませんでしたが、さすがに三連続で見せられるとオチがミエミエで、ほぼテンプレに感じられてしまう。
このあとの続編の作り方が、かなり難しくなったのではなかろうか。

とかいった素人の思いつきそうなツッコミどころなど、ハナから想定内とも言わんばかりに、飽きの来ないような多くの伏線や仕掛けが散りばめられている。

これまでは鉱物資源の豊富な惑星『パンドラ』に、資源開発という名の略奪のためにやってきた地球人“スカイピープル”と、パンドラの原住民で、超自然的存在である『ナヴィ』との対立を軸に描かれてきましたが、強盗を繰り返す盗賊部族の『アッシュ』の登場によって、今回初めて原住民同士の戦いも描かれる。

主人公の家族は森で暮らす種族『オマティカヤ族』。パンドラに入植してきたスカイピープル。そしてオマティカヤ族に近づくために、人間の思考がインストールされたアバターたちに加え、前作では海辺に暮らす『メトカイナ族』も登場した。

そうした『惑星パンドラ』の多様性を示す設定の数々も本シリーズの見所のひとつですが、今回、火山に暮らす炎を操る種族『アッシュ族』の登場によって、この惑星の新たな生態を目撃することになる。

現代3D映画の先駆けと言っても過言ではない、全編フルCGであることを感じさせなかったアバター・シリーズであっても、さすがに3作目ともなるとアニメーションを観ているような、“VFX感”が拭えなくなってきているのは確か。
ただ、このアッシュ族の族長である『ヴァラン』に関しては、生々しい実写のような存在感を感じさせてくれた。
悪役ながら、ものすごい魅力に溢れたキャラクターだ。

そして、唯一人ナヴィと行動を共にする人間の少年『スパイダー』が、人間には毒性の強いはずのパンドラの空気を克服する。この惑星での活動を大きく制限されていたスカイピープルにとって、この星の空気を苦にしないスパイダーの存在が大きな転機となってしまう事態も発生し、続編の展開に大きく関係してくるものと思われる。

この他にもここまで伏せられてきたナヴィの神髄である『エイワ』に、唯一人間として統合されたグレース博士と、未知の力を秘めたナヴィの少女『キリ』との関係性についても今作で明かされる。

というわけで、アバターはストーリー展開はテンプレ気味でも、登場人物の魅力や、少しずつ明かされる神秘的な生態系の姿、そうしたキャラクターや背景を際立たせるパンドラの美しい景色を堪能するだけで、十分以上の満足感を得ることができる。

Netflixが老舗の大手映画スタジオのワーナー・ブラザースを買収したことが大きなニュースとなっている。
配信コンテンツビジネスの躍進によって、映画館を媒体とした映画産業の持続可能性が揺らいできている。
自宅のテレビで体験できてしまうコンテンツを、映画館にまで惹き寄せる映画体験とはいったい何なのか。
そのとても分かりやすい解答が『アバター』にはあると思う。

そんなアバターシリーズの4作目の公開予定は2029年。
今のところの完結編とされる5作目の公開は2031年まで待たねばならない・・・
次回作の展開より、観ているこっちの健康の方がよっぽど心配だわ。

(オススメ度:80)

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 本年の更新は今回が最後となります _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _

今年も一年間『土と雪と:』にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
こちらをお読みの方を一人でも多く沼に溺れさせるべく、オートバイに、サーフィンに、スノーボードに、スキーに、映画にと、まずは先頭を切って溺れてまいりましたが、2026年も覚悟も新たに引き続き溺れて行こうと思っております。

2026年は1月13日(火)からの更新を予定しております。
来年も飽きずに、こちらにお越しいただくことを切に願っております。

皆様の2026年が素晴らしい一年になりますように。

それではみなさま、良いお年をお迎えください!

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