Apple TV+で新作映画の『ウルフズ』の配信が開始された。
実は今作、日本でも9月20日の劇場公開公開予定だったのですが、なんと公開1ヶ月前に急遽配信に切り替わることが発表された。
北米でも大々的な劇場公開を経てから配信に切り替える予定だったのですが、20日から一週間のみの劇場公開を経て、27日からApple TV+での配信という方針に転換された。
私も何度か劇場で今作の予告編を観ていたのでこれには本当に驚いた。
コロナ禍に劇場公開を回避した作品や、失敗作が劇場公開から間をおかずに配信に回されるケースはかなり増えたが、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピットという2大スターの起用に加えて、『スパイダーマン:ノーウェイホーム』のジョン・ワッツ監督作となれば失敗のしようがないように思えるので、これは異例中の異例の判断だろう。
理由について公表はされていないのですが、1億ドルの予算が投じられ大コケした同じApple製作の『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』の影響ではないかと言われている。
ちなみに『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』はいまだに無料配信になってはおらず、そんな噂を聞いてしまったらレンタル料だって払いたくなくなるし、私でも無料配信になっても観るかどうか怪しい。
劇場の使用料に加えて、劇場数を押さえるのにもかなりのお金がかかるそうなので、それらの対価に見合わないと判断されたということなのでしょうが、日本でもそれなりに宣伝費等をかけていただろうから、そうは言ってもそれなりの損失は発生しているものと思われる。なんともイマ風な珍事ではありますが、エンターテインメントに限らず、ビジネスとは切った張ったのシビアな世界で、それを賭け事にはせずにいかに確実な投資回収に繋げるのかが求められるわけだ。これまでの仕組みから外れたところから参入したAppleは、ブランド資産として映画制作を見ており、どちらかというと芸術家のパトロンのような立ち位置で映画界に接してきていたと思われがちで、そうしたAppleの経営方針に寛大な投資家たちであっても、さすがに大作を2本続けてコケさせれば黙ってはいないのであろう。
んで、私の『ウルフズ』を観た感想ですが『オーシャンズ』を楽しめた方なら問題なく楽しめると思う。
強いてあげればジョン・ワッツとスティーヴン・ソダーバーグとの違いによるところが大きいと思った。
そうしてみると、ジョン・ワッツはソダーバーグを意識しすぎのように思え、彼らしさが希薄だったことが気がかり。
そんな中で唯一ジョン・ワッツらしさが弾けていたのが、2大スターに挟まれながらも魅力に溢れて見えたキッド役を案じたオースティン・エイブラムスの演技だろう。
ワッツ監督の若者の心の機微を絶妙に魅せる手腕は、ほんと大したものだと思う。
もっと彼にスポットを当てた脚本だったら良かったのに。とか思ってしまうが、だとすれば2大スターが余計になってしまうだろう。
そんな『ウルフズ』ですが、配信に切り替えられる前から続編の制作はすでに決定していたのだそう。
ジョージ・クルーニーもブラッド・ピットも、劇場公開が大幅に縮小されたことに関して思うところは大いにあるでしょう。少なくとも契約内容の見直しは行われるだろうから、果たしてその約束が果たされるのかどうかはかなり怪しいし、何より続編を観たいか?と問われれば答えに窮する。
ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットで別の作品を生み出してほしいのはもちろんのこと、オースティン・エイブラムスとワッツ監督で新作をお願いしたいと思うのが偽らざるホンネであります。
(オススメ度:60)
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