ARC’TERYX RUSH JACKET & STINGER BIB PANT

なんとなく。という、いい加減なマイルールでしかないのですが、ゲレンデではGreen Clothing、バックカントリーではGORE-TEXのウェアを着ている。
基本的にスノーボードではGreen Clothingのストリートっぽいテイストを楽しみたいと思っているのですが、いかに「合コンからアラスカまで」を標榜するGreen Clothingであっても、あの生地の透湿性能では汗かきの私の代謝をカバーしきれない。よって私に関してはGreen Clothingを着てアラスカに行くのは無理。
脇の下にあるベンチレーションを解放しても、ウェア内側にびっしりと水滴が付いてしまうこともあるくらいなので、流した汗が体温を奪う天敵ともなり得るバックカントリーでは命取りになりかねない。とか言いながらGreen Clotgingでバックカントリーに出たことがないわけではないので、命取りというのはかなり誇張した言い方ではありますが、小心者の私としては、心配事は一つでも塗りつぶしておきたい。
そんな思いからバックカントリーでは透湿性に優れるGORE-TEXが採用されたウェアを着るようにしている。
ちなみに、GORE-TEXのウェアで透湿性能が問題になったことはない。

Green Clothingは、ほぼ毎年買い足して着回しを楽しんでいるのですが、GORE-TEXウェアは6年間にわたり『The North Face RTG Flight Jacket & Bib Pant』を着つづけてきた。
「そろそろGORE-TEXのウェアも買い替えたいなあ」と思ってはいたものの、そもそもあまりバックカントリーに出ていないという元も子もない状況だったので我慢することができていた。

そんなわけで長らく後回しにしてきたのですが『Fall Line 2026』で紹介されていた『ARC’TERYX RUSH JACKET』の「Black / Graphite」を見て一目惚れしてしまった。「コレホスイ」。
なので「今シーズンはバックカントリーにたくさん出るぞ」といった、やる気や前向きな意識があっての話ではなく、単なる物欲。
話は逸れますが、クマは冬眠と言っても眠りが浅く、栄養が不足している時などは余計に目を覚ましやすいとも言われる。バックカントリーでクマに遭ったりしないのかなあ???

もちろんパンツもARC’TERYXで揃えたい。
ジャケットと同じ『RUSH BIB PANT』があるのですが、RUSHシリーズに採用されている軽量でしなやかにできている『GORE-TEX PRO ePE素材』よりも、多少ゴワつきますが、それが逆に堅牢で頑丈な印象を与える『80デニール 3L ePE GOR-TEX』を採用する『SABRE BIB PANT』の方が私は好み。

【ePE素材とは?】
永らくGORE-TEXの主素材として採用されてきたのが、ePTFE(Expanded Poly Tetra Fluoro Ethylene=延伸ポリテトラフルオロエチレン)と呼称されるフッ素化合物なのですが、近年フッ素化合物の自然環境への残留が指摘されており、欧米ではすでに使用の制限、禁止を定める規則が発表されはじめている。
そうした動きに対応した環境配慮型の「フッ素化合物フリー」な素材が『ePE素材』なのだそう。
フッ素化合物と言われると撥水加工剤を思い浮かべてしまうが、材質にも使われているので、加工剤だけでなく、材質を代替しないと問題の解決にはならない。
RUSHに採用される『PRO』表記は、これまでと同様に、しなやかさ、柔らかさを持たされた上級バージョンという解釈で良さそう。

素材の違いに加え、SABRE BIB PANTには、RUSH BIB PANTにはないベルトループが着いているところも私的には大切なポイント。腰にベルトがあれば、ちょっとした小物入れを装着できたり、荷物の積載性にも関わる大切な部分。
SABREシリーズにはBIBではない、それこそウェストがベルトで留められる腰丈のモデルもあるのですが、RUSHジャケットには腰からの雪の侵入を防ぐパウダーガードがないためBIBを選ぶことが吉。
そして、胸の位置に大型のポケットがあることもSABRE BIB PANTの特徴。

画像からも分かるように、同じブラックでも見た目に素材感が結構違うのですが、それでも採用素材優先で『SABRE BIB PANT』を組み合わせることにした。

見た目の素材感だけでなく、RUSH JACKETはサイズM、SABRE BIB PANTのサイズはLと、上下でサイズも変えている。
RUSH BIB PANTの方がスノーボードを意識しているのか、気持ちルーズ目のフォルムで、SABRE BIB PANTの方はタイト目のフォルムが採用されている。
加えてRUSH BIB PANTの方が股下も気持ち長い感じで、そのためSABRE BIB PANTのMサイズをRUSH JACKETに合わせると、あまりバランスが良くないように感じたのでSABRE PANTはLサイズにした。

そんなわけで、6年ぶりにARC’TERYXを着ることとなったわけだが、The North Face RTGを着るようになるまでの6年間着つづけたARC’TERYXから、なぜThe North Faceに浮気したのかと言えば、身も蓋も無い言い方ですが、それはARC’TERYXが高価だから。
言ったようにePEなどの新素材も登場してきているので、「GORE-TEX採用」と言っても価格差があるし、物価も上昇しているので一概には言えないが、GORE-TEXと銘打たれたThe North FaceのRTGあたりと比べてもARC’TERYXのシェルレイヤーは1.5倍程度高価だ。
精密機器の極みのようなR18用のOHLINSサスペンションと、ジャケットだけで同じような値段設定がされている事実は、なかなか飲み込めるものではない。

そんな偏屈な貧乏性の私の目を覚まさせたのは、先ごろ池袋にオープンしたARC’TERYXのブランドストアに併設されている、国内では3店舗目となるReBIRD™ サービスセンター。
ここではアイテムの修理に加えて店舗内に洗濯乾燥機を設置し自社製品のクリーニングのサービスも実施しているのだそう。

サスティナビリティに感度の高いPatagoniaでも自社でリペアなどを行うサービスが展開されているが、店舗は裏方の工房への窓口でしかない。それをARC’TERYXでは店舗でファクトリーとして可視化している。
これはサスティナビリティという観点以上に、オフラインで購入するユーザーエクスペリエンスを提供する、プレミアム体験の醸成のための意図だと感じる。

ARC’TERYXが地価の高い都内の一等地に多くの店舗を構えているのは、あからさまにインバウンドのニーズを見越してのことなので、それを考えればこうしたサービス展開にも合点がいく。
ただ、サービス展開のためのエクストラコストは相当なものだと思われ、貧乏な私は「そのぶん割引してよ」とか思わなくもないが、インバウンド需要を含め、それを維持できるだけのブランド価値が今のARC’TERYXにはあるという証左であろう。
こうした展開によって、これまでは問題があれば買い替えを繰り返してきたような裕福なユーザーにも、この星の持続可能性に関するメッセージが届くものと思われる。

今回そうした世のダイナミズムを目の当たりにして、どういうわけか心打たれてしまった。
「これが最後の一着」だと心に決めて“使い倒そう”と思えたことが、手持ちのアイテムを大量にフリマに出してまで清水の舞台から飛び降りてしまおうと思えた理由でもある。
そうした思いと、飽きのこないシンプルなブラックカラーも合致してしまった。
やはり永く愛することができそうなプロダクトにこそ、強い引力を感じてしまう。

できればミッドレイヤーやベースレイヤーなども一式ARC’TERYXで揃えたいところなのですが、そうしたアイテムの方が他社製品と比較したときに圧倒的に割高に感じてしまい、よっぽど手が出せない。いっそシェルレイヤーの方が格安に感じられるほど。
ってなわけでシェルレイヤー以外は素敵な出会いを待ちながら、ちまちま揃えられたらと思っている。

けっこう気に入っているのでゲレンデでも着ちゃおうかな。
とか言いながら、今シーズン用にしっかりGreen Clothingも買い足していたりする。
そちらの話はまた今度。

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