Away

ラトビアの若手クリエイター、ギンツ・ジルバロディス(Gints Zilbalodis)が、3年半をかけて製作・監督・編集・音楽などを一人でこなして作り上げた長編アニメーション作品『Away』
公開後にじわじわと評判が広がり多くの国で公開されることとなった。
それは多くの評論家たちへの評価にもつながり、世界の名だたる映画祭で多くのグランプリを獲得している。

ジルバロディス監督は、制作にあたり日本のコンテンツからの影響についても語っている。
それは日本的な映像の作り方というより、自身の感じる「美」へのアプローチについてであると感じる。

自身が思う美しい風景。時間。そして絆。
そういったものをいかに映像として定着させるか。
自身の持つ技術でどこまで解釈できるか。
予算や時間、技術と、自身の美への探究心と、どこで折り合いをつけるか。
そこでより最適な“妥協点”の見つけ方、むしろ自分の持てる技術の最高の活かし方を自身だけの視点に変えて、自身の描きたい世界や物語だけに修練させていく決断の仕方、選択の仕方が日本的だと私には思えた。

そして、彼が描きたかった世界が、オートバイという媒介を通しているということ。

この世界観はオートバイで旅したことのある人以外には見つけられないものだと思う。
オートバイという人工の鉄の塊に、果てしなくオーガニックな感覚を持てる人でなければ、この物語は紡げないと思う。

ここで描かれる旅は明らかにファンタジーだし、夢物語だ。
でも、オートバイ乗りならば、現実の道がファンタジーとの境界線を失う感覚について、少なからず経験があると思う。
オートバイでなければ辿り着けない風景。
オートバイでなければ出会えない絆。
そうしたものをいかに映像として定着させるか。
そこに腐心し尽くした結果がこの作品だと思う。

世界中で評価された映像作品を鑑賞する気分も良いが、果てしない冒険の旅、夢のようなツーリングに出かける気分で今作を観ていただきたい。
オートバイに乗らない人にも、オートバイからしか見えない景色が垣間見えるかもしれません。

(オススメ度:90)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次