R18に不具合というほどでもない、些細な問題が発生した。
とか言うと余計に気になるかもしれないので一応書いておくと、エンジン前部のクランクカバー、通称カメノコカバーのエンブレムを外そうとしたところ、エンブレムの取り付けネジが二つとも緩まなくなっていた。どうやらカバーの内側でカシメられているはずのナットがネジと共回りしてしまっているようだった。
このネジが外せなくてもとくだん問題のない箇所とはいえ、やはり寝覚めが悪いのでカメノコごと交換修理をお願いした。もちろん無償交換。
ちなみに、エンブレムの下にカメノコを留めるボルトが隠されているので、エンブレムが外せないとカメノコを外すことができなくなる。ただ、聞くところによると、以前はカメノコの下にジェネレーターを回すベルトが収まっていたのですが、R18のこの部分には何もないらしい。つまりエンジンをバラすとき以外にここのネジが外せなくても本当に問題はないようだ。だからって、いいかげんなリベット打ちで済ませていいってわけでもありませんが。
たかだかネジ二つ頭をグラインダーで削ってエンブレムを外すだけの作業なのですが、あのカメノコを外すには前側のダウンチューブを一旦外さないとならないたいそうな作業になるそうで、R18は預かりとなってしまった。
なぜここのエンブレムを外そうとしたのかについては、また今度お伝えしようと思う。
というわけで、前置きが長くなりましたがここからが本題。
代車としてあてがわれたのは『BMW C400GT』というスクーターだった。
BMWのスクーターに乗るのはこれが初めて。
ビッグスクーターを買うにしても、わざわざBMWを選ぶ理由が私には見つからない。
なので逆にその理由を知りたい。
セカンドバイクを物色している最中の私であっても、こんなにデカいオートバイを置く場所などないので選択肢には入らないが、私が探しているのはコミューターなので、実際の交通の中で、いまビッグスクーターがコミューターとしてどういった位置にあるのか知るにはこれは良い機会だ。
ヤマハの初期型『TMAX』を4年ほど所有していたことがあり、ビッグスクーターの経験はそれなりにある。
ビッグスクーターの本丸である250ccも、これまた初期型をだいぶ経った頃に中古で買ったので、果たして経験のうちに入るのかどうかは少々怪しいが、ホンダ『フリーウェイ』に2年ほど乗っていた。
私がTMAXを選んだのは「何とかと煙は」の理論で、単純に排気量は大きければ大きいほどエライと盲信していたためなのだが、TMAXは、スクーターで本気でスーパースポーツを追い回そうとしたかなりの異端者だった。
そんなTMAXと較べようとしているわけなのだが、その名が示すとおりこいつは「GT」だ。
何よりBMWだし。TMAXと較べちゃ申し訳ない・・・
・・・と思ったら、とか書き出す場合、「意外にも」といった展開が予想されるだろうが、残念ながら『C400GT』は、予想通りのグランドツアラーでありました。
走り出してすぐ感じるのは乗り心地の良さ。
ロングホールベースが効いている直進安定性とソフトに振られたダンパーの効き具合のマッチングが良い感じ。
ASC(オート・スタビリティ・コントロール)の恩恵に預かるシーンはなかなかないのですが、着いていると聞くと安心できる自分がいる。
これなら長距離運転もかなりリラックスして走らせることができそう。
コーナーワークでのスポーティーさに関しては、そのぶん抑えめに感じるが、グランドツアラーとして見れば、充分にキビキビとしているし、中でもミドル域以上の速度で回れるコーナーでは爽快のヒトコト。
そうした足廻りの性格とは裏腹に、エンジンは走り出しでかなりガナるタイプで、振動も大きめ。
ライド・バイ・ワイヤーなのだそうだが、それが疑わしく感じるくらい。
良く言えば活発、悪く言えばかなりラフな印象。
50km/hを超すような速度域に達すれば整ってくるのだが、シグナルスタートなどの発進時のバイブレーションは高級とはほど遠いまあまあ低級なもの。
グランドツアラーというイメージから想像されるような洗練されたエンジンではなかった。
個体差かなあ。代車だしなあ。
峠道のような登り坂を試していないのでエンジンの本当のパワー感は分からないが、登りできっちり回せるエンジンなら、先述の足廻りの良さと相まってターンパイクあたりでも楽しく走らせることができそう。
TMAXのキャブレターのエンジンもこんな感じだったけれど、TMAXの場合は逆にやる気が溢れて感じるアドレナリン系。C400GTのエンジンは車体の性格との落差が目立つ“意外系”。
この車体には電気モーターの方が合っていると即座に感じるので、電気系の『CE04』と棲み分ける意味も含めてあえてエンジンらしさを演出したつもりなのかもしれない。
そんな箱根への日帰りツーリングも軽く熟してくれそうなC400GTですが、コミューターとしての存在感は抜群。
アクセル一捻りでほとんどのクルマを置き去りにできる機動力があるのに、車重が軽くて取り回しも良いので街中での運転もとてもラクだし、近距離の都市型移動手段としては申し分ないどころか過剰なくらい。
っていうか、たぶんこれをコミューターとして見ているのは私くらいなのだろう。
装備面に関しては代車だけあって廉価バージョンだったのか、こんな大きな液晶パネルなのにトリップメーターの選択しかできない。
セッティング変更のインターフェースと言うより、この画面にナビを表示したりできるのだろう。
なのでこれだと宝の持ち腐れ感が高い。
そして、こいつもキーレス。
メインスイッチで電源のON/OFFにハンドルロックまで行う。
最初は面食らったがすぐに慣れた。使い勝手は良い。
安全装備では格差を付けないのがBMW Japanなので、LEDヘッドライトは上位機種と同じなのだろう。
R18と遜色のない明るさ。さておきよい面構えだ。
さすがだな〜と感心させられたのはシート下の「フレックスケース」と呼ばれる可変式のトランクルーム。
スイッチを押すと荷室がタイヤの方に落ち込むように拡大してフルフェイスのヘルメットも飲み込んでくれる。
トランクが広いとテールセクションのデザインが縦に間延びしてしまうものだが、それを上手いこと抑えている。
このままでは飛び出した荷室がタイヤに当たってしまうため走り出すと危険なのですが、これを元の位置に戻さないとエンジンがかからないように制御されていた。こういう芸の細かいところはBMWらしい部分。
というわけで結論ですが、BMWのスクーターを選ぶべき理由は結局のところ良く分からなかった。
ただ、調べてみると250ccのヤマハXMAXで70万円強、561ccのTMAXは税込で140万超えだった。
そうと知るとC400GTの税込111万円というのは説得力があるのかもしれない。
って、改めて思うけど、これってすでにスクーターの値段じゃないね。
ちょうど発売が開始された『XSR900 GP』が税込143万円。
TMAXがほとんど同じ値段って・・・・
とか思うような人間に最新ビッグスクーターの価値など分かるはずもない。
すでにビッグスクーターは私の窺い知れないハイソサエティな道を歩んでいるのでありました。
そういう時代におけるBMWの解答がC400GTなワケだ。
私にはよくても70万円くらいの価値しか見いだせない。とか思い直して中古車を探してみたら、まさにそのあたりの値段だった。ちなみにTMAXは中古のタマ数も少なそうで値崩れせず新車と値段が変わらない。
C400GTの中古というのは悪くない選択かも。
ただ、BMWのセカンドバイクとしてはどうなんだろう?
たぶんファーストバイクとして選ばれる種類のオートバイだと思う。
BMWはBMWでも、4輪の方を持っている人のファーストバイク。
C400GTはそういう位置づけではなかろうか?
土と雪と:次回の投稿は明後日金曜の予定です。お楽しみに。
コメント