『Gentemstick GLIDER』が25-26yのアーリーモデルとして発売されることが発表されたことから、なぜか私の思考の旅はそこから『MAXFORCE』へと辿り着いたくだりは先日書きましたが、案の定と言いますか、その裏ではGLIDERを手に入れるべく、右往左往としておりました。
限定50本という狭き門は早い者勝ちみたいなところもあるので、即断力も必要なのですが、正規ディーラーとしても馴染みの太客に出したいと思うのは人情、否、必定ですので、いかに購入を即断できても、根無草の私に転がり込んでくる可能性が低いことは、ある程度覚悟はしていた。
ただ、198cmというレングスを誇るボードに、それほど関心が集まるとも思えず、限定数50とはいえ意外となんとかなるのではなかろうか?とか、かなり甘い目算を立てていた。
蓋を開けてみれば、そんな甘い考えでいた自分が恥ずかしいと思えるほどに、競争率は相当なものとなったようだ。
私はGENTEMSTICKのリミテッドエディションのハシリのような『TT168 木曽ひのき×みずめ』を所有させていただいておりますが、いまほどの争奪戦にはならず、高額だったためかキャンセルも出たりして「なんなら160もあるけど」みたいなノリで、その頃のGENTEMSTICKはまだ牧歌的で平和な時代だったのだなあとシミジミ思う。
というわけで、限定数50本のGLIDERを手に入れることは叶いませんでしたが、久しぶりにGENTEMSTICKのアーリーモデルのお祭りに盛り上がれたことは、それはそれで楽しかった。
限定50本というレアモノであったことを差し引いても、198cmのレングスを誇るGLIDERが注目されたのは、酸いも甘いも嚙み分けた、良い塩梅に角の取れたオトナたちに向けられたアイテムであったからではなかろうか。
サーファーの中でも、ロングボードを嗜む人は、忙しなく過ごすことに意義を感じていた頃を過ぎ、少しばかりペースを落として趣味や自分の時間と向き合いたいと思ったタイミングで、自然とロングボードに目がいったのではなかろうか。
マニューバーを描くよりも、波のトップをトリムするようにボードを走らせて、束の間よりも長い時間、波と戯れられるサーフィン。ロングボードにはそうしたオトナに対する訴求力があると私は感じる。
サーフボードでもその呼称が使われる「GLIDER」とは、そうしたロングボード的な世界線にあるものだ。
なので、最初にそのネーミングを目にした時に、真っ先にそうしたオトナの趣味性が感じられた。
私が言うのもナンですが、GENTEMSTICKのユーザー層もまた、それなりに高齢化が進んでいるはずなので、そうしたこともGLIDERの登場とは無関係ではないだろうと推測する。
そんなことを私に想起させてくれたGLIDERという新しいボードに、GENTEMSTICKの新たな方向性を感じてしまった。
そして、そうしたキブンやら価値基準やらは、GLIDERの登場よりもずーっと以前から私の頭の片隅にはあって、その役割は『SPEEDMASTER』が果たしてくれるものと思い込んでいた。
だがしかし。それが思い違いであったこと、SPEEDMASTERはもっと雪山を戦略的に量るための、むしろマニューバーな存在であることが、奇しくもGLIDERの登場によって判明してしまった。
そうしたGLIDERへの妄想は、そのままIMPOSSIBLEに転化される。
MAXFORCEとIMPOSSIBLEには何の因果もなかったことが判明したことで、私にIMPOSSIBLEを諦める理由はすでにない。そこにGLIDERを手に入れられなかった鬱憤も乗っかった私は、当たり前のようにIMPOSSIBLE探しの検索行動を開始した。
できることならデッキの中程に「gentemstick MFG」の透かしがプリントされた、私に“あの頃のGENTEMSTICK”を彷彿とさせてくれるチョイ古いモデルが欲しい。
もちろん“あの頃物件”には、それなりのリスクも伴うワケですが、IMPOSSIBLEはそうそう市場に出回るようなモデルでもないので、見つけたらある程度のリスクは覚悟して飛び付かないとならない。

もちろん『八甲田スペシャル』のIMPOSSIBLEなんてのが出てきたりしたら、それこそリスクなんぞ度外視で飛びついてしまうところなのですが、モノゴトはそうそう都合よく運んだりしない・・・
・・・・はずなのですが、これまた「念ずれば通ず」。
小心者の私のチンケなリスクヘッジな気分など軽く吹き飛ばすような優良物件が出てきてしまった。
それがこの、通常ラインナップとは違う特別なコアが奢られた『IMPOSSIBLE カラマツ×ヒノキ』。

こういった希少物件がポロッと出てきてしまうのだから、まったくもってネット社会とは恐ろしい。
そして、我ながら自身の引きの強さには驚かされる。
特別なものだからこそ、マニアな方によって新品未使用のまま保管されていたという。まさにタイムカプセルな逸品。
昨シーズン『BURTON GENESIS TT』の新品未使用品という、タイムカプセル物件を手に入れることができたことで、すっかりこういったお宝への感度が高まっていた私を止める理由などもう何もなく、ほとんど秒殺の勢いでポチッといってしまった。
あくまでもチョイ古いIMPOSSIBLEを探していた私にとって、希少物件かどうかはさして重要ではなかったのですが、おかげさまでスキモノの私の心を満たす特別な乗り味まで手に入れることができてしまった。
ちなみに、本来『木曽ひのき×みずめ』として発売されたものを、私は長らく語呂がいいというだけで「ミズメ×ヒノキ」と呼ばせていただいているので、そもそもこちらは「ヒノキ×カラマツ」と紹介されておりましたが、ここではあえて「カラマツ×ヒノキ」と逆順で表記させていただこうと思う。
この『IMPOSSIBLE カラマツ×ヒノキ』について、その詳細は不明。
前オーナーの方のお話だとこのカラマツ×ヒノキコアのIMPOSSIBLEは、3本のみ製作された極めて希少なものだとのことなのですが、それ以上の情報は不明。
10年以上前のものだと思われるのですが、長野県産の木材に精通するGleen.LABが扱う木材をGentemstickに持ち込み、数本のみプレスされたIMPOSSIBLEが存在するという噂があったことは私も覚えている。
今ではもう無理だと思われますが、当時のGentemstickは30本だか、50本だかのまとまったオーダーに対して、セミオーダーの制作に対応していたという話を聞いたことがある。
なので、このカラマツヒノキも表に出た本数が3本というだけで、本当はもう少し製作されたのかもしれない。
もちろんおカネさえ払えば誰にでもオーダーできるという類の話ではなく、加えて他社扱いの材木を芯材に使うとなれば、それなりに強いコネクションのある方の発案だったはずだ。
そうしたコネクションのある関係者か、もしくはライダーの方が秘める長野の木材への思いや、それによる乗り味への興味が結実して実現したものだと想像される。
なので、このカラマツヒノキは、Gentemstickが企画/制作した限定モデル。という位置付けではなく、あくまでも私的な使用目的のために製作されたプライベートなオーダーモデルであであったことが想像されますが、今となってはその詳細は不明だ。

実際に手にして、ボードを手で撓ませてみると、案の定、かなり硬めのセッティングであることがすぐに分かる。
ホームページによると、現行モデルのIMPOSSIBLEのフレックスは「16」、『SLASHER II』のフレックスは「18」。
このカラマツ×ヒノキは少なくともSLASHER II と同等かそれ以上のフレックスを持たされているので「18」以上あり、カラマツ×ヒノキはノーマルモデルよりかなり硬く設定されているということになる。
それはSPEEDMASTER(現行モデルフレックス「17」)が柔らかく感じるほどで、ミズメヒノキよりは柔らかく感じるレベル。
とはいえそれは、細長いダブルピンテールがしなやかに撓むぶんそう感じさせるのであって、ボードのトップ〜センターのフレックスに関してはミズメヒノキと同等程度であると考えた方が適切であるように感じさせる。つまりフレックスはそれなりに強い。
この硬さと、それによって発生する振動を減衰する芯材の採用は、TTという低抵抗なスノースティックから、さらに抵抗感を削りとるためのかなり特殊な設えなのだと、ミズメヒノキに乗るたびに思わされる。
186cmというレングスを誇るIMPOSSIBLEであれば尚のこと、スティープな斜面において、トップがバタつくことや与えた荷重が安易に抜けることを嫌うことは想像に難くない。
2009年に『IMPOSSIBLE BIG MOUNTAIN FLEX』と称される、GENTEMSTICKライダーの鈴村 新氏のプロモデルが限定発売されていた。

そちらの説明書きには「凝縮された山岳エリアでは、未知なるナチュラルバンクや雄大なカールなどが待ち構えている。超困難なチャイニーズダウンヒルとは異なる、美しく描くラインをスケッチするためには、耐えぬく突破性とブレーキ性能を重視したヘビーウエイト対応モデル(が必要となる)。」とあり、やはりIMPOSSIBLEのハードフレックス化は、際どい場面での突破性や安定性の確保が主眼であることが窺える。
カラマツとヒノキを芯材に採用したこちらも「ビッグマウンテンにおいて、真に不可能を可能にするボード」としての可能性を追求したものだと考えるのが妥当であろう。
ちなみに、こちらのIMPOSSIBLE BIG MOUNTAIN FLEXは限定数10本で価格は税込186,900円。
画像にあるように、このとき同時に『MAXFORCE BIG MOUNTAIN FLEX』も発売されていたのですが、当時の私はこちらの方が欲しかった。こちらは限定数25本で税込114,450円。
この製作本数の差を見ても、IMPOSSIBLEがいかに食わず嫌いをされてきた隠れた名作であったのかが分かるように思う。って、それは私のことなんですけど。
さておき、30年近く前の話とはいえ猛烈に安く感じてしまうのは私だけではあるまい。

もちろんTTより長くワイドなトップによって、豊かなサイドカーブをもつシェイプ。そして浅めとはいえキャンバーを持つことの利点を活かすことで、TTミズメヒノキよりもずっと、溜めた荷重を雪面に放出しやすくなるなど、この硬さが整地バーンでのカービングにも好影響をもたらす可能性も連想させてくれる。

現行モデルの特性を表したこのレーダーチャートを見るに、私が目指す「緩やかに過ごす老後の相棒」としてIMPOSSIBLEは適切であると思われるが、ハードフレックスバージョンとされたこのカラマツヒノキに至っては、そうした私の嗜好からはズレてしまっている可能性もなくはない。
果たしてこのIMPOSSIBLEは、GLIDERに対して湧いた私の思いを埋める逸材となってくれるのか。否か。
言ったように完全な新品未使用品ではありますが、ありがたいことにプレチューンが施された状態で保管されていたものだったので、届いてすぐにベースからワキシングを施し、すぐさま出撃準備を整えることができた。
そうしたことを早速ゲレンデで確認していきたいと思う。
「今シーズンはGetemstickの3本でシーズンを乗り切る」とかナントカ書いていたような気もしなくもない。
舌の根も乾かないうちにこういう事態に陥っていることに、すでに言い訳も反論の余地もございませんが「ホントにバカなヤツだ」と、笑っていただければ幸いであります。かしこ。


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