SALOMON SHIFT を改めて見てみたら感心することしきりだった話

今回手に入れたGENIUS Narrowには『SALOMON SHIFT』が装着されていた。
ベクターグライドがビンディングにMarkerを推奨していることもあり、すっかりMarker信者となっていた私は、それとは似ても似つかないデザインテイストを持たされたSHIFTにはまったく惹かれてこなかったのですが、今回手元に届いてシゲシゲと眺めてみたら、これがまた「よく出来ているな」と宗旨替えさせられるほどの出来栄えを持っていることに気づかされた。

滑走時はステップイン、ハイク時はテックピンにトランスフォームするのがSHIFTの最大の特徴。
テックピンで滑走もするKINGPINやG3 IONを使ってみれば、つま先をトゥピースに放り込むだけで滑走準備が整ってしまうことの優位性はすでに説明が不要なわけですが、それにしてもこの間延びしたように見えるデザインには馴染めなかった。

それが今回、見た目だけで物事を判断することがいかに良くないことか、身をもって知ることとなった。
同じタイミングでリリースされた同様のステップイン〜テックピン機構を持つ『Marker DUKE PT』については店頭で確認していたのですが、あまりに重かったことと、ゴツいカバーを外すことでテックピンにトランスフォームする野暮ったさを見て、このアイデアの限界を見た気になっていたのですが、SHIFTは同じ時期に更にその上をいくアイデアをカタチにしていたというわけだ。

中でも良いと感じたのはハイク時の話になるが、テックピンの装着方法。テックピンの装着のしづらさ、慣れの必要さに関しては、誰もが感じるところだろう。G3にしてもMarkerにしても、バネでピンが「バッチーン」と閉じてくる“ネズミ捕りタイプ”のため、立った位置からでは見えない場所にあるブーツのつま先に設けられた穴に対して、その刹那に適切な位置にピンが来ないと固定できない。対してSHIFTの方はと言うと、レバーを前に押し倒している間だけピンが開き、レバーを戻すとやんわり閉じる動作となっていて、じっくりと位置決めができてはめやすい。これはSHIFTのテックピンが、滑走時の開放値を考えなくて良いからこそできたことだ。ハイク時の誤開放を防ぐロック機構ももちろん装備されている。

こちらが滑走時のヒールピース

こちらがハイク時のヒールピース。
トゥピースが前側に開くようにテックピンにトランスフォームすることで、ハイク時のブーツの取り付け位置は自動的に前寄りに移動する。そのためKINGPINのようにヒールピースを後に移動させたり、G3 IONのようにヒールピースを回転させてクリアランスを作る必要がなく、滑走時の位置のままでブーツをヒールフリーにすることができている。
トゥピースを動かすか、ヒールピースを動かすかの差でしかないのですが、KINGPINやIONと比べてその作法は最小限に留まっているところでSHIFTの勝ちとしたい。まさにアイデアの勝利。

ただし、それもあってモードチェンジに際しての操作項目とその操作が完了したかの確認項目が多すぎる。
スキー〜ハイク、ハイク〜スキー、いずれの場合でもモードをロックしたかどうかの確認を忘れてしまいそうで怖い。

ヒールピースの後ろ端から覗く円柱形のスチールパーツをケースのツラ位置に揃えることで前圧調整は完了する。
前圧が掛かるかどうかは滑走時の安心材料としては大きな存在となるので、これはとても頼もしい装備。
KINGPINはもちろん、IONでも前圧は架かるように設計されているのですが、その前方向の圧力を引き受けるのが、テックピンなのか、ステップインのトゥピースなのかの違いはかなり大きいと私は思う。

滑走時のスキーデッキからブーツのつま先のソール底までの距離も
Marker Kingpin : 14mm
G3 ION : 21mm
SALOMON SHIFT : 20mm
と、1mmながらG3 IONよりも低い。

重さは1/2pairで
Marker Kingpin (M-werks 12) : 685g
G3 ION : 585g
SALOMON SHIFT : 885g

と、この3者の中では最も重いのですが、1,150gを超すDUKE PTよりはずっと現実的な数値。

IONもKingpinもそうなのだが、滑走時、ハイク時ともに、通常モードからすでに踵側が上げられた前傾ポジションにセットされているのは近頃の流行りなのだろうか。ブーツ自体も前傾ポジションに設定されているので二重に前屈みにされるわけですが、前からこんなに前傾させてたっけ??太ももへの負担は増すばかりだ。
あと、ヒールリフターが1段しかないところが気になる点。
とはいえ、スプリットボードと比べて、スキーでのハイク中にヒールリフターを2段目まで上げた記憶はほとんどない。ヒールリフターを上げた方が踏み込み荷重は減る傾向にあるので、より荷重の入れやすいスキーの方が傾斜のきつい箇所に強い。そして、スキーで2段目が要るような場所はアイゼンを履いているという事もある。
冷静に考えるとヒールリフターの2段目は過保護な設定と言えるのかもしれない。

最後に、ブレーキが左右に縮んで畳まれる幅がかなり少なく、その収まりは超絶悪い。
着いているのは120mm幅だと思われますが、GENIUS Narrowのウェスト幅は115mmなので110mm幅のブレーキでも問題ないように思う。
ブレーキは分割できる構造のようなのでブレーキだけ手に入らないかなあ。

というわけで、SHIFTのファーストインプレッションは概ね上々。
『VECTOR GLIDE GENIUS Narrow』とともに、こちらも早く試してみたいのですが、その前にやはりビンディングの取り付け位置を調整して、ブーツセンターをスキーのセンターに合わせておきたい。
面倒だが仕方がない。さっさと取り掛かるか。

そして今シーズン『SHIFT 2』が発売開始されるようだ。
テックピンのウィングが広くなり履きやすくなったことと、ヒールリフターが 4mm高くされたとのこと。やはりヒールリフターが1段しかないことに対する市場からの意見が多かったのか?
「アルミニウム製マイクロアジャスタブルAFDパワーブロック」が採用されたとのことなのだが、トゥピースのどこが変更されたのかは不明。ただ、滑走時のパワー伝達の向上に関するバージョンアップのようなので、コバの部分の剛性アップが図られているものと推測される。ちなみに以上のバージョンアップは、ATOMIC、ARMADAのSHIFTにも施される。
私も気になっていたヒールピースのアルミ素材剥き出しだったレバー部分にアルマイト加工が施されているのはかなり羨ましい。私も塗装しちゃおうかなあ。私のSHIFTは本体のカーボンモノコック素材が剥き出しになっていて、それはそれでカッコいいのですが、2ではボディに艶消し処理が施されたカラーもある様子。これもかっこいいなあ。

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