前回、鵠沼で浸水式を果たした私のニューボード『Ellis Ericson First Model 7’0″』ですが、スネ〜ヒザ程度のサイズだったことに加え、平日とは思えない混雑具合が追い打ちをかけたことで、その片鱗に触れる程度の予告編のような日となってしまった。
となると悶々とした日々を過ごすことになるわけで、早いとこ私向きの乗りやすい波が寄せるあの大好きなポイントで試してみたくなる。トーゼンのように自身の都合と波情報を照らし合わせる日々が続いた。
オン風予報が気になるものの、ウネリの向きは合っていた木曜日。
何より、この週で自身の都合を合わせられるのはここしかない。
半分願うような気持ちであのポイントへやって来た。

朝、いつもの駐車場で目を覚ますと、いつも満車になっているはずの人気の駐車場が、なぜか私のクルマだけがポツンと取り残されていた。
こんなことこれまで一度もない。こりゃあ大ハズししたか??と慌てて海をチェックしに行くと、前回の鵠沼同様のヒザ〜モモ程度の波。若干面がザワついてはいるものの、ほとんど風の影響はなく、何より水深ヒザレベルの超インサイドでブレイクしていた鵠沼とは違い、ミドルでブレイクしているので短い距離ながらもフェイスの張ったブレイクも混ざっている。ここでもっと波の良くない日ならこれまでにたくさんあったし、そういう日でも駐車場は満車になっていた。ここのところトカラ列島で頻発する地震の関連で、こちらに地震の予兆の報せでもあったのだろうか?とか、いろいろ考えてしまった。
そんなことより、私以外に一人しか海に入っていない!
波情報サイトを調べると、ここより以南のポイントでは濃霧が発生しているようで、北上しながら波をチェックする方々は逆に南下したのかもしれない。何より南側のポイントの方がスコアが良いので、ハナからみなさんそちらに行ったのか?理由はさておき、おかげさまで貸切り状態。


6時半に入水して30分ほどはその方と二人だけで入っていたのですが、その方が上がっていかれ、そこから1時間は完全貸切。いわゆるプライベートビーチでニューボードを思いっきり試せてしまった!

波のピークから外れていようが何だろうが、ライトだろうがレフトだろうが、誰に遠慮も躊躇もなくいただいた。
言ったようにサイズは大したことはなかったのですが、それなりに張ったフェイスを滑ることができたのは良かった。
こんな小波でもエッジボードらしい走り出しの速さを引き出しやすい。
他のEllis Ericsonのモデルに比べ、ウネリからのテイクオフの刹那にノーズが20cmほど余計に波の前に突き出ている感覚があり、ピークからフェイスができつつある状況を見下ろす時間が生まれるほど、ウネリを拾う力に長けている。
生み出した加速力を効率的に揚力変換し、それを余すことなく操作に活用できる。ボトム〜レール〜フィンの連携が明確で、無駄がない印象が操っていて清々しい。
①ウネリを捉える
②走り出す
③滑り始め加速する
④フェイスに食いつく
⑤勝手に浮き上がるので、それに合わせて踏み込めばドライブしてくれる
という流れが間髪入らずに移行してくため、荷重操作を意識するや否やボードが動き始めてくれる。
たとえば同じEllis Ericsonでも『Hybrid Hull』だとこれらの過程に一拍ずつの間が入り込んでくるイメージがある。もちろんそのことで乗り手に余裕やリズムを与えてくれるので、そういう波乗りの気分にはバッチリとフィットしてくれる。First Modelはそうした間のようなものを排除しながらも、ミッドレングスらしい余裕はきちんと残されているところが私のような乗り手をよりチャレンジングな気持ちに掻き立ててくれる。
ただ、この感覚を得られているのは、間尺のあるHybrid Hullを経験しているからであって、First Modelでは一連の動作が圧縮されていることに気づけているのだと思う。
なので、エッジボードの最大の持ち味である、波にエッジが食い込んで浮き上がっていくあの感覚を、最大限にパフォーマンスに繋げているところが、エッジ好きにはたまらない魅力に映るだろう。
やはりこのFirst Modelが、Ellis Ericsonの削るエッジボードの原点にして到達点であるように感じる。
聞けばエリス自身が日本の波に乗ることで得たフィードバックを用いて、手ずからチューニングを施しているということで、彼の解釈を日本語に翻訳して味わっているような感覚がとても頼もしい。
そんな体験を貸切の海で味わうことができてしまった。

あなたのマジック・ボードは?と聞かれれたら、今なら間違いなくこのFirst Modelだと答えるだろう。
とか、まだハラを越すような良い波で乗ってないのに答えを出すのは明らかな時期尚早なのではありますが、そんな波に出会えば、間違いのない性能を魅せてくれることはすでに分かっている。
なので早くそうした波に出会ってその確信を確認したい。


そのあと5人ほど入って来られましたが、その人数では持て余すほどの波数が続いた。
そして、入水してからすにで3時間が経過していた。

気がつけば私の体内電池のインジケーターは最後のひとマスが点滅していた。
まだ波は続いていましたが、ほとんど思い残すことなく海を後にすることができた。
上手は人ほど道具に依存したりしないものですが、私程度だと道具によってサーフィンの質が大きく変わってしまう。
自信を持って「この一本」といえる私のサーフィンの質を上げてくれるサーフボードと出会えることの悦びは、ほとんどサーフィンをする理由のすべてと言ってもいい。
そこを目指す道標として、Ellis Ericsonのシェイプするサーフボードを見つけられたことは、私の最高のお手柄だったと自負している。そうしてたどり着いたFirst Modelという新たな道は、もしかすると私のサーフライフのゴールになってくれるかもしれない。
そんな予感に満ちているし、そんな最終到達地点の名前が「ファーストモデル」というのも、なかなか振るっていると思う。
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