結論から先に申し上げておこう。
この日はまさに『TT168 ミズメヒノキ』冥利に尽きる日となりました。
予感はあったが、これほどまでとは思わなかった。
ただただ感謝。
前日の午後からそのまま晴天もキャリーオーバー。
赤倉観光では陽が出てから雪が片栗粉状に固まりはじめてしまったが、もちろんこの日は新たにピステンもかけられているので完全にリセット。
正直もう今シーズンはTTに乗るチャンスはないものと思っていた。
ところが、単に乗れるというだけでなく、絶好のコンディションとなってくれたのだから感謝しかない。
もちろんルスツやキロロの雪質と較べてはいけない“ザ・新潟”の雪ではある。
それでも何でも今シーズンの私にとって、これ以上ない上質な斜面だ。
TTはパウダーボードだ。
何を今さらと思うかもしれないが、私はTTに乗る度にそのことを思い出す。
サイドカーブなんてほとんどない華奢なシェイプにフラットキャンバーを組み合わせる狂気の沙汰は、パウダースノーを滑るため、しかも、深雪で水を切るように、水をいなすように走らせるサーフィンの感覚を得るための意匠。
そんなスノーボードで圧雪をカービングターンすることじたい、極めてナンセンスだといつも実感させてくれるのがTTというボードだ。
最初の1ターンは恐る恐るサイドカーブに体重を預けながら様子を見る。
かなりフレックスの硬い部類に属するミズメヒノキなので、きっちり踏めていないとサイドカーブが現出せず、まともにターン弧を描けないため下向きのダラダラとしたラインになってしまう。
「大丈夫!行ける」と、確信を持ったところから更にボードを立たせ、載せられるすべての荷重を架けていく。
そうしたときに猛烈に、そして無重力に切れ上がっていくTTのスゴ味は、1mmほどの刃にすべてを預けるリスクを取った人にしか与えられない。
手にした掛金をすべてBETするためには、よく噛む、そして面のきれいな雪面が前提条件となる。
(そして、ターンをはじめる前の確実な後方確認)
そうしてデッキが減衰した状態での心材から伝わるバイブレーションがみずめの真骨頂。
雪面を跳ね返すほどの剛体なのに、跳ね返すときの戻り方にダンパーが効いていて、とてもしなやか。
ぶるぶると震えたり、腰砕けになったりしない。
そしてもとの剛体に戻っていくときに独特な感触を伴う。
シングルのフレックスフィンが小刻みに震えるアレ、エッジボードがフワッと浮き上がるアレともまた違うのですが、操作と波、操作と雪の関係値として現れる現象としては似ている。と、かなりの思い込みも含めてそう思う。
ほとんどファンタジーなのですが、そんな夢を魅せてくれるところも“サーフ”だと私は思う。
この日、そんなTTにとってベストな状態だったのはほんの3本ほどだったが、1ターン1ターンごとにこれでもかとミズメヒノキと向き合わせていただいた。
やっぱりTTは得られる悦びの次元が違う。
それはたぶん、TTが持つ構造的な独自性から得られる悦びだけではなく、その独自性を発揮させる“術式”が全開放される条件のウィンドウがあまりに狭いせい、希有な体験だからこそ得られる悦びも大きいのだろうと思う。
でも、そんな外的要因に左右されるスノーボード、その条件を揃えたいとついつい願ってしまうスノーボードって他にあります?
ここのところ意識している“リアステア”に関して言うと。というか、リアステアを意識していたからこそ余計に感じることなのですが、TTはある程度前足でラインをコントロールしてやる必要がある。と思う。
基本後ろ足で舵を切っているのですが、ターンの入口では前足を意識できていないと、向き変えに際し、すっぽ抜けてしまう不安の方が勝ってしまい、結果エッジを立てきれないと思う。
私は無意識でいられるほどふだんから前足を使っているので、否、使いすぎてしまうので、だからこそ“リアステア”なんてことを意識しないと後ろ足の使い方が疎かになってしまうような乗り手だ。
なので、逆説的に言うと私とTTの相性は良い。ということにしておこう。
屁理屈は置いておいて。純粋に乗り切れたときのTTは最高の存在だ。
今回初めて(正確にはかなり久しぶりに)『K2 TT Snowsurfer』でTTを滑らせたわけだが、 重ねて思い込みも含めて言わせてもらうと、TT SnowsurferはTTのためのブーツと言っていいほどの相性を感じさせてくれた。
そして、『UNION FORCE』がその相性の良さを最大限に引き出してくれている。
TTをキッチリ操るにあたり、やはりある程度 足許はガッチリと支えられている必要があると思う。
それでいて膝が入れられること、足首を使い切れることがTTを操る上でブーツとバインディングに求められる重要な要素にになると思う。
TTを操ることに関しては、さすがの『DEELUXE AREth RIN』でも及ばない。
さておき、ここ池の平に来るのは実に半世紀ぶり。
妙高に来るといつもバカのひとつ覚えで赤倉観光と杉ノ原に行ってしまうので、比較的規模の小さい池の平に来ることはこれまでなかった。
そんな池の平スキー場は、私が小学校3年生のときに生まれて初めてスキーをした場所なのですが、当時はアルペンブリックなんてスカした名前は付いていなかったし、確か2日ほど滑ったはずなのだが、この景色にまったく見覚えがない。そのため懐かしさはまったく感じないのですが、半世紀ぶりとか思うと感慨深いものがある。
こうしてここに来られたのは今シーズンからEarthHopperに加盟してくれたおかげなのだが、何となくこの日の池の平は空いているような予感がしたということもある。
前日の赤倉観光は嘘みたいに空いていたのですが、人気の杉ノ原は言うに及ばず、二日続けてそういうラッキーがつづくとは到底思えず「そう言えば」と池ノ平のことを思い出した。
朝のうちは『池の平クワッド』を中心に混雑した時間帯もあったが、その間中私は『アルペンブリック第2ペア』で『ガッシュタイナーコース』をひたすら回し続けていた。
リフト待ち0秒であることに加え、ガッシュタイナーコースは斜度も広さも適度で、斜面が荒れ始めても何とかTTを機能させることができ、ほとんど私のTT道場と化した。
というわけで、予想通りに空いているスキー場を堪能させていただいた。
池の平悪くないな。
斜面が荒れてきて、さすがにTTで滑ることに限界を感じてきた11時にランチブレイク。
限界を感じるとは言ったが、TTでまったく滑れなくなるわけではなく、ほとんど楽しくなくなるという意味。
そのあとは、この日も『MOSS Q545』を持ち出した。
スキーももちろん積んであるのですが、この週末はスノーボードに首ったけだ。
そうしてQ545に乗れば、荒れて固まりはじめた雪面も、ガッタガタのツリーランも縦横無尽に楽しめる。
ちなみに私の場合、硬くなりはじめた雪のツリーランでTTに乗ると木にぶつかる危険性が一気に高まる。
ここ池の平の非圧雪エリアは、赤倉観光に較べて斜度がないので、たとえここが新雪だったとしてもあまり楽しそうには思えない。
今回のように降ったらアカカン、翌日は池の平っていうのがベターな選択かな。
帰りしなにこちらをお読みの方に声をかけていただいた。
こちらのサイトでリニューアルしてからはじめて。
ありがたいことにFC2時代以のアクセス数を取り戻すことができている。
とてもありがたいことです。今後ともよろしくお願いいたします。
そうしてこの日も脚が売り切れるまで滑り倒した。
朝一のよく噛む雪面をTTで味わったら、硬く荒れ始めた斜面をQでいなす。
まさに「TTとQ、夢の共演」と言ったところ。
とても分かりやすい適材適所。この雪質あってのモノダネだ。
そして、重ねて言うが、この日のミズメヒノキは本当に素晴らしかった。
今シーズンはさすがにもうTTを出せるような日は訪れないだろう・・・
・・・と思いきや。訪れるのでありました。しかも深雪で。
その模様はまた来週。
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