VECTOR GLIDE GENIUS Narrow ビンディングの取り付け位置を変更した話

スキーのビンディングは、レンタル用を除き、その構造上スノーボードのように取り付け位置を随時変更ができない。
ビンディングには前後に10mm程度の調整幅はあるものの、その取り付け位置はスキーブーツのソールサイズに依るので、組み合わされているビンディングは好みのモデルであるのかを含め、セットスキーはスキーヤーの数だけ千差万別に存在することになる。
そんなスキーを中古で購入しようとした場合、欲しいモデルであることと同時に、前ユーザーのブーツサイズの確認が必須となるわけだ。私のような大足(27.5cm)を持つ人間が中古のスキーに手を出す場合、ここが最大のネックとなる。

常日頃からフリマサイトでスキーを物色していると良く分かるのですが、男性用のスキーブーツのソールサイズは270〜290mmがボリュームゾーンで、300mmを超すものは滅多にない。
これが私の興味を惹くモデルの傾向なのか、はたまた300mmを超すサイズを履く人間は物持ちがいいのか、フリマに興味がないのかは分からないが、とにかく出物がない。

つまり、足のデカい私が、スキーセンターまでバッチリ合っている中古のスキーに出会う確率は、天文学的なレベルなわけで、ビンディングの取り付け位置の修正や変更は、ほぼ前提となるわけだ。

今回購入させていただいたGENIUS Narrowに取り付けられていたSALOMON SHIFTはブーツ長304mmに合わせられていた。私の『HEAD KORE』のソールサイズは313mmで、ビンディングの調整有効幅に収まっている。ソールサイズの差は9mmなので「ひょっとして取り付け位置を変更しなくても、5mm程度のセットバックでそのまま使えちゃうかも」とか、取らぬ狸の皮算用をしていたのですが、届いたスキーを確認したところ、SALOMON SHIFTは304mmのブーツを20mmほどセットバックさせる位置に取り付けられていた・・・

ベクターグライドがメーカーとして推奨するスキーセンターは一つなのですが、メーカーによってはセットフロントとセットバックそれぞれの目盛が記載されているメーカーもある。今やフリーライディング界隈では、重心位置をわざと外す、セットフロントやセットバックというセッティングは、いたって普通のことなのであります。

セットバックの効能としては、主にパウダースノーでのトップ部の浮力の感じ方が増すことが想像される。
オリジナルのGENIUSが195cmであることを考えれば、GENIUS 185cmをセットバックさせることで、195cmのテール側だけ短くしたことと同じ状況を生み出し、深雪での浮力を維持したまま機動性を確保するという理屈も分からんでもない。
ちなみにセットフロントの目的は、テールを伸ばすことで、キッカーやクリフを飛んだ後の着地の安定性の確保を優先するものかと思われる。

私はGENIUS Narrowに圧雪での高いターン性能を見込んでいるので、ターンの性格を決めるサイドカーブに対するポジションが変化するのは決して望ましいことではない。
加えて、装着されているビンディングはSALOMON SHIFT。
ハイク時の重心位置までセットバックされることで、足を上げたときにスキーのトップが下がってしまうのはいただけない。
というわけで、GENIUSに関してもスキーセンターへの設定変更を施すことにした。

トゥピースを外してみた図。
穴埋めされているのはそれ以前に取り付けされていたマーカー グリフォンのものとのこと。
この穴跡を避けながら取り付け位置を前に移動させなければならない。
ちなみに、右に見える「MADE IN JAPAN」の下にあるラインがメーカー推奨のスキーセンター位置。
ブーツも下側にブーツセンターが刻印されている。それとこのラインの位置を揃えたい。

ちなみに、ビンディング下の赤い染みはバネに塗られた塗料が溶けてできたもののようだ。
近頃流行りのヘアラインが加えられたマット処理のスキーデッキの場合、素材に染み込んでしまいなかなか取ることができない。私はさっさと諦めることにした。こういうことも中古を買う際のリスク。

さておき、その赤いバネが覗く雪だるま型の穴も固定のために開けられたもの。
頭が平たいキノコ型にされたボルトをスキー側に設置し、それを穴の広い方から差し込み、最後端にある2本のネジ部から前方部を後ろにスライドさせることで雪だるまの頭部分にボルトが狭い部分に引っかかって固定される仕組み。
トランスフォーミングのためのパーツの広い可動域を避けながら取り付けボルトの貫通場所を確保するための苦肉の策と言ったところか。

オリジナルのテンプレートを作り、位置決めをする。
ちょうどグリフォンの取り付けネジ穴付近にSHIFTの取り付け穴が来るようにするとセンターが揃うのですが、ギリギリまで攻めても16mm前に移動させるのが限界。せめて取り付け穴同士の間隔だけでも規格を統一してくれれば、元の穴を活用する可能性も残るのに。と、いつも思う。

さておき、ポンチで位置決めしたら、祈るようなドリルで穴あけを敢行する。ここでドジるとビンディングが曲がったり、スキーの縦方向のセンターラインからブーツがズレたりしてしまう。
ステップインは多少の角度誤差は飲み込んでくれるが、テックピンで取り付け角度やセンター位置をミスると、ヒールピースにブーツの踵が収まらないなんていう、かなりヤバいことになる。私は廃棄予定のスキーで取り付けの練習を積んで今に至るが、それでもスキーのビンディング取り付け作業は毎回ビビる。
ただ、自分でビンディングの取り付けをすると分かるのだが、メーカーが用意した穴あけジグを使って設けられた穴であっても、センターからズレているなんてことは多々ある。なので細かいことは気にしないことにしている。

ヒールピースに関しては、届いた状態で私のブーツをはめると調整幅の後ろいっぱいになっていたため、前方向に20mm以上の調整しろが残されており、ヒールピースは穴を開け直して移動させることなく、調整だけで対応ができた。本音を言えば、ヒールピースがあと1cm下がったあたりに収まればスマートなのですがこれも細かいことに含まれるので見ぬフリをする。

というわけで修正作業完了。
それまでの取り付け穴が後ろ側に覗いてしまうが、これは致し方ない。
これで私の313mmのソールサイズのブーツで4mmほどセットバックされた位置となる。
厳密にはメーカー推奨のセンター位置ではないが、この程度なら取り付け誤差の範囲。と思うことにしておこう。

自分の腕前を棚に上げて言うが、これでベクターグライドが意図したターン孤を描くことができる(はず)。
と、言いますか、大した腕前ではないからこそ、まずは基準値を知ることがとても重要なのであります。

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