WAR FARE

シビルウォー アメリカ最後の日』、そして私の大好きな『エクスマキナ』の監督、そして、『28年後』の脚本家としても知られるアレックス・ガーランド監督作品。
この日は奇しくもガーランドが脚本を務めた『28年後:白骨の神殿』も同時に公開され、どっちを先に観るかでまあまあ悩まされた。
結果的には時間の都合の良かった今作を観ることにしただけなのですが、観たい作品が多くある状況というのも久しぶりだ。ちょっと嬉しい。

シビルウォーででミリタリー・スーパーバイザーを務めた元アメリカ海軍の特殊部隊員のレイ・メンドーサが、イラク戦争中に実際に体験した事実を映画化している。
メンドーサは今作の共同監督としても名を連ねているのですが、自身を演じる役者が劇中に出ていて、彼の記憶にある「とある小隊の名もなき戦闘」が時に激しく、時に淡々と描かれていく。

戦争映画というよりもほぼドキュメンタリー。
「現実は映画よりも奇なり」とは、脚本家でも思い付かないような物語が、実際に起きた時に使われる言葉だが、この映画はそういった物語性とは正反対の作品。
「実際の戦争とは、これだけ悍ましく、不快で、最悪の状況である」というリアリティを、徹底的に追求している。

プラトーン』以降、戦争をリアルに描く作品が増えたが、それでもエンタメとしての起承転結は維持されていた。
でも、『WAR FARE』では後から加工された部分はなく、一撃必殺のスナイパーも、仲間を鼓舞して絶体絶命の危機を脱するヒロイズムも、一切登場しない。
そして、「勝てば官軍」とでも言いたげな、戦争を大所高所な大きな視点から俯瞰で眺めるようなこともない。
ごく局地的で、とても狭い範囲で起きた、とても小さい、戦場での日常が描かれる。

実際にそこに居合わせた人間の記憶をベースに描かれるので、イラク兵のセリフはおろか、その表情すらスクリーンには映り込まない。
イラクのとある民家を作戦基地にした8名の海軍特殊部隊ネイビーシールズの一部隊が、その何倍ものイラク兵に取り囲まれ、絶望の淵まで追い詰められる様子を、ひとつ一つのディテールを丁寧に積み上げ、ほぼ完全な映像化を達成している。

狭い民家に立ち往生を余儀なくされ、味方の増援もなく、敵を掃討するのではなく、とにかくここから脱出する以外の作戦も意図もない状況。すでにそこに勝利と言う二文字は存在しない。
やっと現れた脱出用の戦車に乗り込む段で、敵の手製の爆弾で味方の数人が吹き飛ばされ2人が重傷を負ってしまう。
仕方なくそれまでいた民家に撤退するも、それ以降味方は近づくこともできない。

重傷を負った兵士の悲痛の叫びが木魂する屋内で、リーダーも茫然自失状態となってしまい、小隊は実質的な崩壊状態に陥ってしまう。
かといって敵が一斉に押し寄せてくるわけでもなく、精神的に痛ぶるように一定の距離を置いてじわじわとプレッシャーをかけ続けるだけ。
敵の数も、武器の規模も分からない状態で、民家に閉じ込められている恐怖が部隊に蔓延する。

生と死。
生きようとする活力と、間違いなくここで自分は死ぬんだという諦めが1秒ごとに交錯する世界。

そんな、銃弾が激しく行き交う以外は、ただただ恐怖と向き合う人間たちを見続ける90分間。

実際の戦争の現場には、正義も悪も理由もない。
そこにあるのは生きる意志と戦う意味だけ。
ということを、嘘も偽りも、喜怒哀楽も虚飾もなく、ただただ起こったことだけを羅列する。

直感的でいて、とても詩的な映像世界が繰り広げられる。
これも映画の役目なのだと、別の意義についても考えさせられる作品でありました。

(オススメ度:40)

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