WEAPONS : ウェポンズ

ある日の深夜2時17分。
とある小学校のひとクラスの子どもたち、17人がまとまって失踪する。
ただ一人だけ失踪しなかった男子は何も知らないと供述。
担任教員のジャスティン・ギャンディは、失踪した子どもたちの親はもとより、街中から訝しげな目を向けられてしまう。

と、ネタバレせずに書くのはここまでが限界。

失踪した子どもたちの行方と、失踪の原因を究明していくスリラーなのですが、こういった場合、事件の原因は推し並べて荒唐無稽なものに決まっている。
子どもたちが失踪した原因に理屈が通じないことは、映画が始まるまでもなく、映画館を訪れる前に分かっている。
つまり、こうした作品の明暗を分けるのは、いかにそうした荒唐無稽さに神経を逆撫でされるか。にある。
逆撫でされる具合が、いかに不条理でいて不穏であるのか。
そこに、ホラー作品の芸術性が問われると私は思う。

そして、
本作の神経の逆撫で具合は、ギリギリ凝視できる、とても良い落とし所に置かれている。

何人かの視点から、事件の真相に迫るプロットも素晴らしく、それでいて、それらの視点によって謎が少しづつ明かされるのではなく、映画の終盤に一気に明かされる。
街のあちこちに散らばったそれらの視点が、一か所に集まる“その時”に一気呵成にフィナーレを迎える。
不条理モノでありながら、ものすごいカタルシスでもって幕が降りる演出が、特に素晴らしかった。

北米では公開直後は低調な滑り出しだったものの、SNSをはじめとした様々なメディアで、仕込まれた伏線に関する多くの考察を生んだことで一気にバズり、大ヒットを飛ばした。
そもそも日本では公開の予定がなかった本作ですが、世界中での予想外の大ヒットを受けて急遽日本でも公開が決定したという、いわく付きの作品。

アルコール依存症の担任教師。
執拗に担任教師を疑い追い詰めようとする保護者の父。
キレやすく義理の父が警察署長を務める警察官。
事なかれ主義の同性愛者の校長。
窃盗を繰り返しながら森の中でテント生活をつづける若者。
親戚中を転々と渡り歩く身寄りのない老婆。

そうした人々が、とても分かりやすい違和感としてあちこちに配置されているのですが、残念ながら、私としてはそうした人物像に関して考察すべきところは特になかった。
様々な違和感や伏線を深追いすれば、よりこの物語を堪能することができることは分かりますが、あれこれ難しく捉えようとしなくても、『ウェポンズ』はエンターテインメントとしてとても完成度が高く、言ったようなカタルシスをしっかり受け取って劇場を後にすることができた。

ただ一点。
なぜ題名が『ウェポンズ(兵器たち)』なのか。
この題名も伏線になっていて、ラストシーンにその答えが雪崩をうって観る者に襲いかかります。
シンプルに面白い映画でありました。

(オススメ度:80)

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