『GENIUS Narrow』に関しては、さまざまな状況に対応が可能な「可用性(Availability)」を重視していることをお伝えしましたが、『MAXI Gran Turismo』に関しては、その逆。
単一目的に絞り込まれた特殊と言っていい性能が魅力だ。
その単一目的とは、圧雪でのカービング性能。
ただただひたすらに深いターン弧を描くことだけに収斂された性能が潔い。
新雪でもいけるのかもしれないが、私はMAXI GTにソッチ方面は一切期待していない。
圧雪斜面でのカービングのみを期待して所有している。
他のカービングスキーに乗ったことがないので、一般的なカービングの価値基準のことは分からない。
バックカントリー人気が高まる中で乗り継いできた、パウダースキーとの比較においてのカービングの話になってしまうことをご了承いただきたい。
それでも、これまで多くのVECTOR GLIDEに乗らせていただいてきた経験から、突飛なコトは狙わずに、あくまでも乗り手の意思を尊重するような操作性を実現した上で「強い遠心力と強い横Gを発生させるターン」という、コンマ数秒を争ったり、的確なレスポンスを意図する競技性能ではなく、あくまでも演出された官能性能としての乗り味を目指していることがよく分かる。
とにかくエッジを雪面に食い込ませようとする印象で、気持ちごとターンの内側に突っ込んでいかないと前側に吹き飛ばされる、オートバイで言うところの“ハイサイド”を起こしそうになる。
現在、MASTIFF、GENIUS Narrow、MAXI GT、OMNYの4本のVECTOR GLIDEを所有していますが、そのためMAXI GTだけ乗る位置が違う。
他がテールのズレを抑えるように注意を払う、体軸を中心としたターン弧になることに対して、自動的にテールが固定されるMAXI GTは、体軸よりも大きく外側をスキーが走っていくイメージがあり、特にMAXI GTを先に乗ってからの乗り換えには、技術以上に、滑りへの発想をそれなりにアジャストする必要がある。
そうした注意さえ怠らなければ、深〜〜〜く、エグ〜〜〜いターンを、かなり容易に描くことができてしまう。
本当はもっと雪面に近いところまで体軸を倒して、真横に飛んで行くくらいの深回りターンを目指さないとならないのですが、そんなターンを中斜面のリフト1本ぶんするだけで、その日1日分の筋力をすぐに使い切ってしまうので、オジサンにとっては諸刃の剣。
なので、倒し込みはそこそこに抑えながら、中程度に深く回しこむターンで、中くらいのカービングを楽しませていただいている。
それでもMASTIFFでする2割増しエグめのターンができてしまう。
MAXI GTはそんな、毎回の再現性の高いコンビニエント性を持ちながら、かなり専門的でエッジィな滑りが達成できてしまう特殊な遊び道具だ。

というわけで、ビッチビッチのピステンバーンが想定されればMAXI GT。
斜面が荒れ出すタイミングまで引っ張るつもりならMASTIFFかGENIUS。
新雪が絡むことが想定されれば迷わずGENIUS。
といった使い分けをしながらVECTOR GLIDEを楽しませていただいている。
あとは春のコブ斜面用にMAKEが欲しいかなあ〜〜
雪の状況とはほぼ無関係に、滅多にないことながら、どうしてもMASTIFFに乗りたくなる日というのもあることも、念のために追記しておく。
と言った具合に、スキーでも状況やその日の気分に合わせながらクイーバーを使い分けているのですが、それは重箱の隅のようなかなり狭い範囲の話でしかない。
それなのに、これだけ多彩な滑りの目的が存在するところが悩ましいし、その悩みこそ道具選びの楽しさの真髄でもあるわけだ。
そして、スキーの重箱の隅は、スノーボードのそれよりも端的であるように思う。
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