「コミックモーニング」に連載されていたのは1988年~1996年。もう30年も前だ。
かくいう私も毎週楽しみに読んでいたことを思い出す。
それだけに『沈黙の艦隊』への思い入れも強い。
そういった方は多いものと思う。
昨年の9月に劇場版が公開され、それをドラマシリーズにしたものがAmazonプライムで配信開始された。
おもしろいのは配給を東宝が受け持ち、製作はAmazonスタジオが担当するという座組み。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のように、Appleスタジオ製作の劇場公開作品はありますが、劇場版をそのまま配信するのではなく、個々のシーンを肉厚にしながらドラマシリーズとして再構築し直して配信している。
コンテンツ業界のあの手この手のアイデア創出力には頭が下がる。
先日劇場公開された『ゴールデンカムイ』もWOWOWで続編がドラマシリーズとして放映されるらしい。
さて、肝心の出来映えですが、結論から言うと70点。
ドラマの脚本とコミック原作者との認識違いが問題になっている昨今。
こう書くとそのことを思われる方もいるかもしれなませんがそうではない。
むしろ、その再現度は私の記憶によればほぼ完璧だ。
ではなぜ70点なのかと言うと、漫画なら気にならない設定の矛盾点も、映像化された途端に露見してしまうその代表例のような作品になっているから。
独立国「やまと」を宣言する原子力潜水艦は、唯一の同盟国である日本国と同じく「専守防衛」を掲げる。
「武力による攻撃を受けたときに限り、防衛力を行使する」という解釈について、やまとの行動はその盲点を突いているとも言える。
加えて、“世界の警察”を自認するアメリカという国の欺瞞と矛盾を、自らの行動によってあからさまにしたという点も理解できる。
でも、そういった理論的な文脈だけで、最大の同盟国であるアメリカの軍艦(しかも空母)を、防衛のためとはいえ沈めた相手と日本国が同盟を結ぶか?そもそもその原潜一隻を独立国として認めるか?と、問えば、それはあまりに荒唐無稽だと言わざるを得ない。
日本国での補給を受けられなければ、国土(潜水艦)と国民(乗組員)、そして軍事国家としての重要な根幹となる、武器を補給できなかったこと、そして、日本国民に対してアメリカからの武力行使があるかも知れないリスクを考えれば、海江田元首(艦長)の立てた戦略は、あまりにも奇跡的な偶然を前提にしていると言わざるを得ない。
とか考えると30点減点。
重ねて言うけど一週間ごとに細切れに読む週刊マンガだと気にならない。
なので、30年前のワクワクしながら木曜日を待った自分の気持ちを思い出しながら、ある意味懐かしむように観ることで、そうした見逃せない矛盾点を乗り越えた。
そうして観ることができればなかなか良くできた作品だと言えると思う。
少しだけ贅沢を言わせてもらえば、VFXの完成度を上げて欲しかったとは思うけれど、潜水艦の実写映像を多く利用している点など、迫力に関しても申し分ない。
ただ、原作で描かれた最終局面のストーリーは、マンガであっても「?」だったので、果たしてそこがどのように表現されるのか。そこは注目ですかね。
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