

昨晩はぐっすりとはいかず、まあまあ寝苦しい夜を過ごした。
戸隠よりも気温が高かったこともありますが、もちろん暑いというほどでもなかった。
戸隠でパンクしてしまったインフレーターマットの代わりに持ってきたマットの寝心地があまり良くなかったことに加え、「熊出没注意」の五文字の印象が強すぎたようで、ついテント外の物音に反応してしまいなかなか寝付けなかった。眠ってもテントの中から熊と目が合う夢を見て目が覚めてしまったりした。オレって意外と繊細。
とか言いながら7時間はきっちり眠ったんですけど。

寒河江まで距離を伸ばしたのは、単に一度訪れていたため土地勘があって安心感があったから。なのですが、ここまで来れば大好きな鳥海ブルーラインまで2時間ほどで行けることに気づいたということもある。
鳥海山へはR1200GSを手に入れた20年前に一度走ったことがあるだけ。
日本海を見渡せる素晴らしい景観だったことを覚えている。
ただ、そのときはGSのナラシ運転も兼ねていたため、高速道路で一気に距離を稼いだので、もっとあっさりした旅路だった記憶がある。
R18に乗るようになってからオートバイとの付き合い方自体が、あの頃とは大きく変わってきている。
新たな鳥海山の記憶を、ぜひR18で上書きしたい。
とかいったそれらしい表向きの理由もあるにはあるが、鳥海山なら長距離を走る前向きな理由となってくれることの方が大きい。
近頃モチベーションの欠如によって腰が重くなりはじめたオッサンの悲哀。


画像はキャンプをした『いこいの森』の入り口に位置する『上沼』。
キャンプ場を含め、この池もこの施設のほんのとば口にすぎない。この奥にはハイキングができるほどの広大な土地が広がる。施設は市営。寒河江市民の皆さんが羨ましい。


冬も走った112号線。
とはいえ真冬の景色とは似ても似つかないので初見と言っていい。

月山、湯殿山を経て、日本海側に出る。
シートバックに括り付けられた持ち帰りゴミの入ったコンビニ袋がとってもキャンツー気分。

そういえば、那須からずっと暑さとは無縁だ。
体内の血液が沸騰するような酷暑の日々を思えばまさに天国。
しかもどの道も渋滞なんてない。
雨の心配もなく天候も安定しているし、この夏空と併せてツーリング気分は最高潮。どこもかしこも良い道だらけ。
ほんといい日にツーリングに出た。


湯殿山スキー場を過ぎてすぐの、112号線から眺める月山ダム。これまたどデカい。

夏空の下走らせる青々と実った稲穂を見渡す田園風景が素晴らしかった。
庄内平野から鳥海山までは視界を遮るものが一切ないので、走っているあいだ中、青々と伸びる稲穂越しに鳥海山が居座りつづける。
これまた目の前に見えているのに、いつまで経っても麓に辿り着かないやつ。
山登りの時は嫌気がさすが、ツーリングだと逆。
いつまでも終わらない気持ちの良い道に恍惚としてしまう。あ〜〜気持ちいい〜〜〜〜

寒河江から3時間。ちょうど正午に『鳥海山 鉾立展望台』に到着。


丸い水平線が見られるとのことでしたが、ちょうど水平線に雲がかかってしまった。
その代わりに手が届きそうな雲から感じられる高度感がすごい。これまた画像じゃ伝わらない。

そして、鳥海ブルーラインの真骨頂は秋田県側。
森林の中を突き抜けるように走る山形側に、海側の景観が開ける秋田県側と、その趣は大きく異なる。
たとえこのあと山形側に引き返す行程だとしても、展望台から山形側へ鳥海ブルーラインを降りてはいけない。
というわけで、山形ツーリングというお題目ですがちょっとだけ秋田県にお邪魔する。
天気にも恵まれ、私の鳥海ブルーラインは素晴らしい記憶となって上書きされた!
ちょっと遠かったけど来てよかった!

これで無事この日の目的を果たしたわけだが、次の課題は「今日はどこまで走るか」。
鳥海ブルーラインを往復して来た道を引き返す道程も考えましたが、日本海沿いに進みたいキブン。
日本海を眺める海沿いのキャンプ場で一泊するのも良いが、それだと15時には到着してしまうので少々物足りない。かといって、明日は帰路に就きたいので日本海からだと最終日の行程が長過ぎてしまうのもちょっと困りもの。

いっそ米沢まで走ってホテル泊して米沢牛を堪能するか・・・と、思うが先か、Googleセンセイにルートをお願いするのが早いかのタイミングでこの問題は脳内処理され、日本海側を南下して米沢牛まで走り切ることに決めた。
こうなると今度は逆に時間が足らなくなるので「坂田みなとI.C」〜「あつみ温泉I.C」間は『日本海東北自動車道』を走った。

日本海を眺めながらの快走を想像していたのですが、海に開けている場所が少ない。
よそ見しないで済むからいいっちゃあいいんですけど、どこか寂しい。

途中、Google Mapに『新潟 山形県境標』とあり、どれだけの観光スポットかと思い寄ってみたら、こじんまりとした石碑が立っているだけだった。
とはいえ、よく考えてみるとここを挟んでお隣の住所の町名どころか所在県まで変わってしまうのは、いかがなものかとは思う。
行政サービスに差があったら揉めそうだ。


米沢市内まであと少し。だいぶ陽も傾いてきたが、今晩はホテルなのでかなり気楽。
進行方向にラピュタ級の積乱雲。極めて夏休みらしい景色。
お盆期間であること忘れてしまうほど、このタイミングの山形の道は空いていて、日本海から飯豊に抜ける113号線も素晴らしい快走ルートだった。
皆さんお盆はゆっくりご自宅で過ごしているのだろう。
休みだからとウロチョロと出かける都会もんの方がよっぽどゆとりがない。

たまたまですがこの日も17時半に目的地に到着。
この日は8時間、約400kmを走破した。
さすがに尻が痛い。
ところで、こちらのホテルには屋根付きのオートバイ用駐輪場があった。かなりうれしい。

いつものように旨そうな飯どころを求め、歩いて街を散策する。
人混みや渋滞を想起させるお盆休み期間に出かけることに対して、少なくないマイナスイメージを持っていたが、今はむしろお盆でよかったとさえ思えている。
それはやはり山形という時間のおかげだ。
那須のあたりまではクルマや人で溢れかえり、都会の忙しなさに侵食されていた感じだったが、福島を過ぎるあたりからガラッと雰囲気が変わった。
私はやはり田舎の時間の流れ方が好きだ。
またぜひ訪れたい。

あちこち歩きましたが、結局ホテルからほど近い『ミートピア』に入ることにした。
歩いてすっかり汗をかいてしまった体に、何はなくとも瓶ビール(大びん)を流し込む!
20分ほどで注文した『特選ロースステーキ150g』が供された。
噂に違わず米沢牛の霜降り肉は超美味かった!
人気店のようで入店まで30分ほど待ったのですが、まさに待った甲斐のある名店でありました。
正直申し上げて、霜降り肉を一度に150gも食べることはもうないだろう。というくらいに、近頃すっかり食が細くなってしまった。文字通りに一生分食べた感じがするが、人生最後(?)の霜降り肉150gが米沢牛でよかった。そう思える食経験。
食は何はなくとも肉!オートバイは何はさておきパフォーマンス!
と思い込んでいた時季を過ぎ、人生に味わいの季節が訪れている。
私は「旅」じたいにはまったく興味がない。
オートバイに乗ること(そして行き先の旨いもん)が目的地。私にとって旅は方法ですらない。
「走る」「喰う(飲む)」「寝る」「目覚める」、そしてまた「走る」。
最高だ。
(Day-3 につづく)
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