『SLASHER』を買い直したことに端を発し、すっかり温故知新な気分に支配されている私は「そういえばジェネシスってどんなバインディングだったっけ?」と、思ったが最後、その問いかけが頭の中を無限ループし始めてしまった。
最初はフリマサイトでボロくていいので安いものを物色していたのですが、さすがはBURTON。中でもGENESISはいまだに人気があるようで、私が使っていた10年前くらいのモデルでも、UNIONの1年落ち程度のものと同じくらいの値段で取引されている。最近のモデルだと新品の8掛けくらい。新品の値段はUNIONの『Atlas』あたりの高級モデルと肩を並べるプライスタグが貼られているのですが、Atlasの中古なら比較的若いモデルでも6掛けくらいから手に入る。やはりBURTONの人気は相変わらずだと感心させられる。
それでも何とか安値で手に入れようと、5〜6個の出物に的を絞って様子を伺っていたのですが、最後は決まって「なんでこんなボロいのにこんな値段になるの???」と納得がいかなくなってしまいなかなか手が出せないでいた。

「もういいか。どうしても要るってモノでもないし」と思った頃に『GENESIS TT』の新品未使用なんて出物を見つけてしまった。
発売から10年が経った今、新品を手に入れるチャンスなんて、この先あるわけない!
そもそも試したかっただけで、新品である必要などどこにもないのですが、「TTならそれも仕方がないか」という謎な納得感に背中を押されてすぐさまポチッといってしまった。
そんなわけで、ほぼ10年ぶりの再会。
こんなことなら手放さなければ良かった。
なんてことは、それこそSLASHERの時も思ったし、実際『MAXFORCE』は一度手放してその後買い戻した前科もあるので、私にとってこうしたことはさほど驚くことでもなかったりする。
ちなみに、これまで手放したモノの中で未だに後悔しているのは『GENTEMCHOPSTICK TT160』。
バックカントリーにあまり行かなくなった今でも「なんで手放しちゃったんだろう」と、悔やんでも悔やみきれない。あ〜自分のバカ。
もしGENESIS TTを手放さずに持ち続けていたとしても、使用に耐えるだけの状態を維持できていたかどうかは分からない。TT専用のカラーリングが施されたパーツ類はもう手に入らないので、どこかパーツ交換になった時点でそれはもうTTモデルではなくなる。きっとその時点で手放していただろう。と思えばこそ、私にとって新品未使用品であることの意味は大きい・・・そのおかげで現行モデルの新品とほとんど同じ価格を支払わされることになりましたが・・・





それはさておき、GENESIS TTはやっぱりカッコいいなあ。と、改めて感心した。
BURTONの誇る高い工作精度と併せ、これが私の思うGENTEMSTICKの可視化された世界観というやつなのだろう。貫かれる価値観は10年という時を経て『K2 Taro Tamai Snow Surfer LS』にも通ずるところもまた素晴らしいと思う。肝心のGENTEMSTICKのボードの品質の方は下降気味に感じてしまうのですが・・・
実は再購入に際しては懸念点もあった。それは私が履く28cmのブーツを0〜6°程度のアングルで使うと、MサイズのGENESISではブーツセンターが出せないこと。ちなみにGENESIS TTにはLサイズの展開はない。

ディスクには3つボルトホールが開けられており、これによってブーツセンターを出すのですが、28cmのブーツだとその調整幅を上回ってしまう。

一番踵側に移動するセッティングでも、ご覧のように6〜8mmほど爪先側にズレてしまう。
Lサイズなら28cmを超えるブーツでもセンターが出せるのですが、Lサイズだとハイバックが大型化されることと、ストラップやベースなどのブーツとのフィッティングが上下左右に余る感じがして、それがすごく嫌だった。
できればMサイズで済ませたいというへそ曲がりなこだわりがBURTONを使わなくなった原因とも言える。


この頃のBURTONのMサイズは28cmのブーツもカバーすると謳われていたはずだが、それでもこうしたことが起きるのは、GENESISやMALAVITAに採用された二重構造のハイバックが、一重構造のものよりも厚みがあることが原因。

実際、最新モデルではこの部分の厚みが抑えられブーツが前に押し出されることを防いでいた。
そうした問題を認識しながらも再購入を断行したのは、魔改造を思いついてしまったから。
むしろこれを思いついてしまったことでGENESIS TTが欲しくなってしまったとも言える。


さらに1cmほど踵側に動かせる4つ目の穴をディスクに開ける魔改造を施した。
さすがにオリジナルのディスクに新たな穴あけ加工を施すのは気が引けたので、Re:Flex用のディスクを中古で買い足し、そちらを加工した。
なぜベージュのディスクなのかと言うと、黒いものより影が見やすく加工の度合いを見極めやすいから。明るい色なら水色でもなんでも良かった。
もうちょっときれいに加工できると思っていたのですが、この柔らかいナイロン素材にうまいことドリルの歯が立たず、思った以上に手こずった。おかげで見た目はかなり邪悪な感じになってしまった。まさに魔改造。まあ使う時はベースマットで隠れてしまうのでディスクの見た目は気にしない。

話は逸れるが、BURTONのバインディングディスクに刻まれた精密で緻密なギアの噛み合わせの美しさには圧倒させられる。UNIONのギアは噛み合わせが甘く、加えてボルト穴も緩めに開けられているためセッティング出しも甘めになってしまう。
ちなみに、ピンクに塗られた取り付けボルトはもちろん社外品。GENTEMSTICKのボードの場合、主に後ろ足のボルト穴が浅いことが多く、付属される長さが16mmボルトだとソールを押し出してしまうことがある。そのため私は15mmのボルトに変更している。こちらは緩みづらいノッチ加工が施されたボルト。オススメです。

ハイバックの取り付けネジと、アンクルストラップの取り付けネジが分けられていることもBURTONのこだわりを強く感じるところ。それぞれの調整幅の確保とともに、内側へ取り付けネジやボルトが飛び出さないようになっているので、ブーツに突起物が当たってしまうことを避けることもできる。
素材選びや工作精度の高さ、品質管理を含めた細やかなディテールへのこだわり、そしてその積み重ね方がBURTONのBURTONたる所以。やはりBURTON製品はランクが一つ違う。

最後にハイバックの取り付け位置を調整してバッチリとセンターを出すことができた。
合わせているのは『TT168』。
というわけで装着完了。固定力や操作時の剛性に関しては大丈夫そうに見えるが、本当に大丈夫なのかどうかは例によって私には保証できないので、くれぐれも真似はしないように。って、俺以外にいねーかこんなことする人。

私がUNIONを推すのは横方向のヌケの良さにある。
この画像からも『STRATA』のハイバックがブーツに回り込まないようにデザインされていることが解る。
加えてヒールカップの峰のつま先側が低くされ、幅が広くとってあることと併せてつま先の先導で足を動かしやすくなっている。
『FORCE』はSTRATAと比べるとハイバックのフレックスはかなり硬く、ベースも狭いため横へのヌケよりもホールド感を重視している。GENESISはそんなFORCEに近い設定ではある。

ただ、GENESISは母屋のガッチリさと反比例するように、ベースにボード自体の撓みを阻害しないしなやかさを持たせた『Re:Flex』が採用されているところがFORCEとの最大の違い。
果たしてGENESISは、UNIONのもつ「硬軟」や「強弱」のバランス感覚を超えるのかどうか。
UNIONに乗り換えた時はGENESISの良いところも併せ持ちながら、そこにヌケの良さが加わっていると感じたのですが、今の私の気分だとどう感じるのだろうか。
あと気になるのは、STRATAとFORCEに採用されている3°のカントベースがGENESISにはないこと。
同じUINONでも、カントベースを持たない『ULTRA』では膝を傾ける感覚に若干の違和感があったので、そこはちょっと気になる。
そんなわけで、GENESISをきっちり味わうための準備は10年前よりもしっかりできている。はず。
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