またもや念じれば通ず。
「フリマサイトで安いのが見つかったら欲しいなあ」とか思っていたのですが、『VECTOR GLIDE GENIUS Narrow』も手に入れることが叶ってしまった。
フリマサイトでは滅多にお目にかかれない逸品だし、近頃は店頭で確認することもできなくなってきているので、今回も実物をほとんど確認する事もなく、情報とイメージだけでポチッといってしまった。
メーカー直販のオンラインストアや実店舗を拡充させるようになってから、ベクターグライドを店頭に並べるショップがだいぶ減った印象がある。
流通経路が多様化し、中間マージンを省くことが可能になった昨今、その理由に関しては推して知るべし。
ハンドシェイプでニッチさが魅力だったサーフボードが、大手のスポーツ量販店が扱うようになったことで、数は売れるようになったかもしれないが、目利きのイノベーターやアーリーアダプターたちにとっての魅力を失うこともある。書店売りを諦める代わりに編集者のこだわりの詰まったマガジンをネットで発売できたりもする。
今はそういう時代。
ただし、当然いいことばかりではない。自由競争には常にそれなりのリスクが伴うのは今も昔も同様だ。
中間マージンについて、あれこれ思うこともあるだろうが、この国が採ってきた市場保護施策は悪いことばかりではない。
そうした自由競争が普通になった世界では、ニッチなプロダクトであればまだしも、ある程度の規模を持つメーカーともなれば、数を売ることとブランドを維持することを両立させることの難しさは言わずもがなだ。
スノーボードではバックカントリーブームのあとに「スノーサーフ」、ジャパウダーブームのあとはインバウンド消費といったムーブメントがそれぞれのムーブメントの後を埋めたように見受けられるが、日本発信のスキープロダクトにはそうしたムーブメントは起きていないように思う。
あくまでも私見でしかないが、ベクターグライドもパウダースキージャンルの中のいちプロダクトというイメージから脱しきれていないように感じ、同じ市場で争う海外勢と比べれば、それはそのまま割高感に繋がってしまう。パウダースノーブームに翳りが見える昨今において、そこでの差別化を含むブランド戦略の一環としてここ数年の動きを見れば、ベクターグライドの苦労はよーく分かる。
それでなくても慣習とかしがらみとか色々ある流通社会の中で、なかなかに思い切った戦略を採ったものだと感心させられる。
中古ばかりを買っている私がとやかく言える立場にはないが、先日の『雪乞いアウトドアマーケット』など、こちらからイベントまで出向いてでも情報を採りたいと思える魅力が、ベクターグライドにあることは確かなので心配御無用なのだとは思うが、一見さんお断り的な門前払いはあまり印象がよろしくないように思えて、少々気がかりだったりはする。
『GENIUS Narrow』に関しても、実際に目の当たりにして、もうちょっとでもシェイプを感じたりしてから購入に至りたかったのではありますが、そういったわけでこの際仕方がない。
バックカントリーブームからこっち「スキーといえばベクターグライド」な私であっても『LINE SAKANA』のインパクトにはほとほと感心させられた。
それまでにも4FRNTなど、ソッチ系の海外勢のスキーを試してきてはいたのですが、SAKANAの軽量さと絶妙な浮力バランス、それでいて圧雪斜面でのターン性能も疎かにしない、軽快感と操作性の相乗効果の高さには文字通りに舌を巻いた。
※ GENIUS NarrowとMASTIFFが同じ穴のムジナに見えるのは私だけだろうか?
エリック・ポラードの生み出した『Season eqpt.』にも強い関心があるが、私としてはSAKANAで感じた世界観を、ベクターグライドで感じてみたい。
とか、歪んだことを私が考えてしまうのは、私がオールラウンドモデルが大好きだからだ。
もちろん、それぞれの目的意識に特化しているからこそ個性的で魅力的なプロダクトになるのであって、そんな都合の良い世界などあるはずもないことは良〜〜く分かっている。
でもだ。
例えば北海道にトリップに行こうとなれば、せっかくの北の大地での滑走を、たとえ一本であっても外したくないと思うのが人情だろう。トリップの中にバックカントリーが含まれる場合などはさらに事態はややこしくなる。かといって、あれもこれも持っていくことは叶わない。スノーボードも持っていく私の場合は尚のこと、スキーは一本持っていくのが関の山だ。
自家用車で行けるスキー場でもスキーは2本が限度。できればスキーは一本で済ませたい。
スキーの用途別と同じくらい、ここぞの一本が「ベクターグライドであること」が私にとって大切であるのは、ベクターグライドの持つ圧雪でのターンへのフィロソフィにある。
10cmほどの新雪が乗った斜面、ディープパウダースノーでの操作性が確保されたスキーは数多あれど、コーデュロイの美しい圧雪斜面で魅せる、あの重厚感のあるターンを引き出せるのは、私はベクターグライド以外には知らない。
といった悩みや欲望はここ数シーズンの間、ずっと私の頭の片隅に残っていたのですが、じゃあベクターグライドのラインナップのどれが私の融通に一番に応えてくれるのか。そもそもベクターグライドにそれはあるのか。
そんなことを考えるのはへそ曲がりな私だけだとは思うが、私だけだからこそ、いかに高度情報化社会にあっても自分自身で試さないとその答えは得られないのであります。
『POLARVE』がその位置にあるのでは?という話を聞いてからも、私なりの論理に則して考え続けていた。
そうして得た答えが『GENIUS Narrow』なのでありました。
「GENIUSの見た目に苦手意識を感じてしまう方のためのもの」だと言いながら「GENIUSが好きな人にNarrowはお勧めしません」
とか、まるで禅問答のような話をあちこちで聞くのですが、その言葉だけを聞くと、今あるGENIUSのパイを守りながら、横に拡大させたい意図を感じる。
つまり、NarrowはオリジナルのGENIUSを喰ってしまう可能性をも秘めているということか。
GENIUSは生粋のパウダースキーだ(と想像してみる)。
そして、粉雪の上において浮力は絶対的な正義だ。
つまり究極のパウダースキーとは、絶対的な浮力でもって、フカフカの深雪にあっても圧雪のように踏み込むことができる操作性に秀でたスキーのこと。
GENIUSはそうしたスキーだと仮定してみる。
それを求めたファットスキーの見た目に苦手意識を感じるということもよく分かる。
近頃のウェスト100mm前後のパウダースキーが人気だということもそれを裏付けている。
そうした世界観の中で、これまでにない深雪での操作性の高さと、圧雪でのターン性能を高い領域でバランスさせていると感じさせたのが、私にとってのSAKANAだ。
BUTTERKNIFEのように、深雪でも踏み込んで回す大回りのターンはしずらいが、その代わりに深雪を縦に落とすショートターンをしやすくして、その特性はそのまま圧雪でのカービングにも活かされているものがNarrowなのではなかろうか。
と想像してみる。それってつまりSAKANAじゃん!そこにベクターグライドらしい圧雪でのターン性能が上乗せされているとしたら・・・
GENIUS Narrowがそうしたイメージの通りなのだとしたらそれは、SAKANAには、そしてMASTIFFにも乗る機会が激減することを意味するのですが、元よりそれが目的なので覚悟の上であります。
果たしてその推論が当たっているのか間違っているのか、確認していきたいと思う。
コメント
コメント一覧 (2件)
うらやましい…
またレビューお待ちしてます!
mimizooさん 私の見立てが違ってもご報告いたします