DCコミックスの『スーサイドスクワッド』のマーベル版と言えば話が早いか。
共通するのは、これまでにヴィラン(ヒーローの敵対役)として登場した面々でアッセンブルされた、急ごしらえの寄せ集めチームであるこいうとなのですが、『スーサイドスクワッド』が初登場の面々で構成されていたのに対し、『サンダーボルツ*』では主要な登場人物がすでにマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の作品中に登場しており、各キャラクターへの理解がある程度進んでいるところが大きく違う。

以下は各キャラクターの出演作一覧。
エレーナ/出演作『ブラックウィドウ』『ホークアイ』ブラックウィドウの妹
レッド・ガーディアン/出演作『ブラックウィドウ』ブラックウィドウとエレーナとの父親
ウィンター・ソルジャー/出演作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『ブラックパンサー』『インフィニティウォー』『エンドゲーム』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』
ゴースト/出演作『アントマン&ワスプ』
U.S.エージェント/出演作『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
タスクマスター/出演作『ブラックウィドウ』

そんなはみ出し者たちを操るのはCIA長官のヴァレンティーナ。通称ヴァル。
このヴァルもこれまで度々MCU作品の中にカメオ的に自身の工作員として今回の登場人物たちをリクルートをしている姿が描かれていたのですが、今回はじめてその姿を公に見せることになった。そのため彼女の素性や目的などはまったくの謎のまま。
アメリカという国や世界平和に対して、彼女なりの正義感もあるのでしょうが、手段を選ばないやり方もあり、今回も自身の政治生命に関する隠蔽工作にサンダーボルツを起用しさらに状況を悪化させるという役回り。
原作コミックでは元S.H.I.E.L.D.の職員で、ニック・フューリーの元恋人であるなどの裏設定があるようなのですが、いまのところそうした部分は完全にスルー状態。

「ウィンター・ソルジャー」こと、バッキー・バーンズはこれまで多くのMCU作品でアベンジャーズの一員として活躍してきましたが、元は秘密結社であるヒドラの特殊工作員。そうした過去もあって今回のヴィランチームをまとめる立場に置かれるわけですが、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で明かされたように、なんとブルックリン選出の下院議員となっていた。
超人血清をを打たれた100歳越えの元敵方の特殊工作員が、いかにして下院議員となったのかに関して、何か説明があるのかと思ったら、ただの正義感からの立候補だった様子。というわけで、残念ながらそこに特に重要な伏線はなかった。今後何かの形で、一番似合わないこの人が政治家になっている理由ついて回収されるのであろうか。
私としてはヴァルの真意と、バッキーが政治家に転身している理由が気になって仕方がなかったのですが、そんなわけで、深く考えずに寄せ集めチームの活躍を楽しめば良いことが、まあまあ前半には明らかにされる。まあ余計な詮索をせずに済むので助かりますが。

今回、そんな寄せ集めチームであるサンダーボルツが対するのは、原作で「100万の太陽の爆発」に匹敵すると言われる超強力なパワーを有する「セントリー」。戦闘力はまさにMCU最強クラス。
ヴァルが裏で進めていた、アベンジャーズなき時代に、それに匹敵する最強の戦士を生み出そうとする人体実験「セントリー計画」のただ一人の生存者であるボブがセントリーの正体。
ただ、被験者となったボブは双極性障害(躁うつ病)を抱えていることから、その精神状態はかなり不安定。表のボブはちょっとトボけた陽キャなのだが、ダークサイドとなる「ヴォイド」が現れると、ほとんど制御不能の状態に陥ってしまうのは、予告編の映像でも知れるところ。
そんな、アベンジャーズが駆け付けたとしてもそれなりに苦戦するであろう最強の敵を、寄せ集めのサブキャラチームで何とかしようとするところに今作の見どころがあるわけだ。
スーパーパワーを持たないヒーローたちが、最強の敵とどう渡り合うのか?どう決着をつけるのか?について、『キャプテンアメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』を観た感想で私なりの見解を述べましたが、案の定“そういう方向”でケリをつける描き方が選択されていたのは、嬉しいやら悲しいやら。少々複雑な心境。

それと、題名の最後に意味深につけられた「*(アスタリスク)」の理由も、最後に明かされるちょっとしたサプライズへの伏線となっているのですが、これに関しては公開直後からあちこちでネタバレしているので、すでにご存じの方も多いだろう。
近頃はもうMCUフェーズいくつとか、コロナ禍もあって諸々グダグダになったおかげで、かなりどうでもよくなってきておりますが、このサンダーボルツ*がMCUフェーズ5の最後の作品なのだそう。
そんなわけで、フェーズ6の最初の作品となる7月公開の『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』へとつながるポストクレジットシーンも最後に用意されている。ただ、このポストクレジットシーンを撮影したのはファンタスティック4を監督したマット・シャックマンではなく、『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』を監督するルッソ兄弟によるものなのだそうで、つまりこのポストクレジットシーンは、ファンタスティック4ではなく、アベンジャーズ第6弾へとつづくものだったようだ。つまり、ファンタスティック4のラストシーンから連なる映像だということか。
というわけで、今作を楽しむにはかなりの分量の予習が必須となる。
残念ながら初見の方が楽しめる作品ではなく、Disney+でしか観られないMCUドラマシリーズも観ないと今作の魅力を100%受け取ることはできないだろう。
そういう意味では前日譚のない『スーサイドスクワッド』の方が単独作として優れていると言えるのかもしれないのですが、残念なことにジャスティスリーグへの合流を果たせなかったスーサイドスクワッドの面々とは違い、サンダーボルツの面々はこのままアベンジャーズに合流することがすでに発表されている。
とはいえマーベル自身も、ドラマシリーズまで制覇しないと楽しめない、まるで宿題のような作品を供給する路線を変更し、各ドラマシリーズの個別性を上げてユニバースとの連関性を薄める方針なのだそう。
喜んでそうした宿題と向き合って来た私にとって、それはそれでちょっと寂しい気もしますが、質の低下を招いていたこともまた事実なので、そうした路線変更も致し方なしか。
というわけで、デアデビルとスパイダーマンの共演は無理っぽいな。
(オススメ度:MCUファンには100)
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