
いきなりですが、結論を先に申し上げさせていただきますと、
SLASHERにお乗りの方であればSLASHER IIは要りません。
もちろん、よほどのSLASHERマニアの方であればその限りではありません。アップデートバージョンとして、その進化をしっかりと感じることができます。遠慮なく買っちゃってください。
ただ、私のようにGentemstickのフラットキャンバーに想いを馳せていて、その道程でSLASHERと出会っている方であれば、SLASHER IIに乗り換える必要はないと思いました。
むしろ、その予算があるのであれば、TTのフレックス違いや、サイズ違い、モデルイヤー違いを試すことに使うべきだと私は思う。ちなみに、残念ながら私は『GT』とは縁がありませんでした。
SLASHER IIは、TT165 Classicのネガを潰すために、SLAHSERよりも更にトップとテールの反応をより明瞭にすることで、より取っ付きやすくするためのリファインが加えられていた。
そもそも抑揚のないほぼストレートなサイドカーブと、フラットキャンバーを組み合わせるというTTの狂気のデザインは、雪の上でも中でも、最大限に抵抗を減らすための策だ。と、私は信じている。
SLASHERに与えられたそうしたリファインは、トップを含めたサイドカーブに依存しないからこそ得られるフラットキャンバーの美味しい部分を潰すことにもなってしまうのですが、たいしたものだと感心させられるのは、そうした相反しかねない要因を、SLASHER IIとして、一切の破綻なく、あくまでもSLASHERという枠の中でまとめ上げているトコロ。
タテ方向のヌケの良さを殺さないギリギリのところで豊かにされたトップの反応を活かし、ヨコ方向のヌケの良さを邪魔しないギリギリのところまでテールの反応が増されるチューニングが施されている。
後ろ足で捌くファット・フラットキャンバーであるMOSS Q57を経てから、前足も使う必要のあるSLASHER IIに出戻った格好となったことで、前後荷重に関するトレンドというか、一般的な解釈についても意識するようになり、自分のクセのようなものを理解できたことが、そうした学びの中で得たいちばんの収穫かもしれない。
それ以来、神格化するほど孤高の存在として感じていた『TT168 ミズメヒノキ』と、ある程度デイリーに付き合えるようになれた。
そもそもSLASHERとは、あまりにも性能が尖ってしまったフラットキャンバーを、民主化するための役割を持たされたモデルであると私は勝手に思っている。
Gentemstickは今やあれだけのラインナップ数を誇る大メーカーだ。TTを試してみて合わないとなれば、他にオススメする選択肢は山ほどある。
いかに多様性を重視する時代にあっても、正直私にはGentemstickに拡大路線は合わないとずっと思っている。GentemstickとTTSSが分けられていた時代が限度だったと今でも思う。
そんな、現在のGentemstickの方向性に懐疑的な私でも、あえてSLASHERという教材を用意し、そうした役割を持たされたモデルをSLASHER IIとしてバージョンアップさせる重箱の隅を追求する姿勢には頭が下がる。
それこそ私の知るGentemstickの「らしさ」だと思う。
そんなGentemstickを見直す契機もSLASHER IIは与えてくれた。
「エポックメイキング」と「温故知新」は本来真逆の話ではありますが、その二つが同時に押し寄せてきた感じがする。私の中でちょうど価値基準が一周したということかもしれない。まさに還暦。
コメント