『硬い足回りをなんとかしたい その2』を先にお読みください。
『ライダーハウスドリーム』からウィルバース社製フロントフォークスプリングを取り寄せ早速交換作業開始。
とか言うと簡単そうに聞こえるかもしれないが、フロントフォーク・スプリングの交換はリアサス交換作業の3倍面倒が多い。
フロント回りをバラすのはXJR1200が最後なので、どれくらいぶりだろう・・・
これまでもフロントフォークを分解したことは幾度となくあるので基本的な工程は把握しているものの、R18では初めてここを分解するため未知数な部分も多い。
要は出たとこ勝負になるため途中で撤退する可能性も少なくない。
一番怖いのは、前輪を外して移動もできない状況で元に戻せなくなること。

なんてことを心配をしはじめるとそれこそキリがないのでライダーハウスドリームさんの「みんな自分でやってるよ」の一言を胸に抱き、度胸を決めて作業を開始する。

フロントシャフトを留める六角ネジ穴は22mm。普通このサイズのソケットは持っていないと思う。
さほどのトルクで締め付けられているわけでもないので、六角レンチを2個穴に突っ込んで回す荒技もなくはないが、ここはソケットを用意したいところ。ただ、ここはR1200GSと同じサイズだったので買い足さなくても済んだ。ラッキー。

左右のブレーキキャリパーを外し、ABSのセンサーを外し、フロントホイールを外し、フロントフェンダーを外すといよいよフロントフォークを三つ叉から抜き取れるようになる。

ここで最初の出たとこ勝負ポイント
通常、ステムの上下ブリッジ(三つ叉)ともフォークはクランプされているものだと思うのですが、R18では、下側はクランプされているものの、トップブリッジでは上からボルトで留められている??外から見ているだけでは内部構造がまったく理解できない。

そして第2の出たとこ勝負ポイント
フロントフォークカバー。
なんと、R18のフロントフォークカバーは分割式ではなく、完全なチューブ状になっていて、フォークを抜かないと外せないようになっている。なんという不合理な構造。メンテナンス性はあまり考慮されていない。
案の定、クランプを緩めて、トップのボルトを外してもフォークは抜けてこない・・・

上の画像はボルトを抜いて、カラーを外した状態。
これを見ただけではフォークカバーの内側がどうなっているのか皆目見当が付かず、なぜフォークが抜けてこないのかが分からない。
これまた考えていても仕方がないので、イチかバチか見えている部分を上からプラハンで叩いて押し抜いてみた。

ほとんど壊している感覚でしたが、これで正しかったようでなんとか外すことができた。


外したフォークカバーを確認すると、ゴムのカバーでフォークチューブに圧着してズレて隙間ができたりしないようにできていた。
つまりこのゴムパーツがフロントフォークに貼り付いてフォークが抜けてこなかったわけだ。カバーを戻さないのであればフォークはスンナリと取り付けられるわけなのだが、もちろん私はカバーを使い続ける所存。

どうしてこういう構造になる??と思うところですが、トップブリッジをクランプにぜす、上からボルト留めにしているのも、フォークカバーを割らなかったのも、余計なネジ類を外から見えるようにしたくなかったからなのだろう。伊達の貫き方がハンパではない。

そして最後にして 最大の出たとこ勝負ポイント
フォーク・トップキャップだ。
ここは鬼のような硬さで閉じられており、ここが今回の交換作業の最難関ポイント。
本来はインナーチューブに傷が付かないように硬質プラスチックで養生された万力などでフォークを固定してトップキャップを緩めるのですが、私はそんなもの持っていない。
トップブリッジにクランプされた状態で先に緩めておくのが定石なのですが、言ったようにトップ側は複雑怪奇な取り付け方がされていてそれもできない。
加えてフォークカバーがあるため、一旦カバーを外してから、フォークを今一度下側のブリッジにクランプさせて固定させてやらないと、ツルツルで丸いチューブ状のフォークを固定することができない。
しかも、トップキャップはご覧のような特殊な形状で、たぶん特殊工具が用意されるものと思われる。それ以外では大型モンキーしかバイトすることができない。んで、やっぱりウンともスンとも言わない。
ここまで来て撤退か・・・と頭を抱えたが、ここでまたライダーハウスドリームさんに電話で泣きつくと。
「バーナーで炙って ネジロック剤を溶かしちゃいなよ」と一言。要は熱膨張させて緩ませるわけだ。

電熱式のヒートガンなら持っているが、バーナーは持ってないので、急ぎ近所のホームセンターまで買いに行った。

バーナーでトップキャップとフォークとの接合部の辺りを10秒ほど炙ると、それまでの苦悩がウソみたいにアッサリと緩んでくれた。助かったー。
逆側はフォークのメッキに焼き色が付くのを恐れて炙るのを5秒程度に抑えたがそれでも緩んだ。ただ、緩めるための力は余計に必要になった。10秒炙っても焼き色は付かなかったので10秒でも問題なかった様子。
熱した部分は5分近く熱いままなので触るときに注意が必要です。それと、トップキャップには、中のスプリングによって、それなりのプリロードが掛かっていますので、外れる瞬間「黒ひげ危機一髪」的にキャップが飛び出します。毎度のことながら、これがかなり怖い。
ちょうどこの前日に『アメトークビビリ-1グランプリ』を観ていたのでよけいに怖かった。
最後の2回しくらいになったら布でくるんだ状態でキャップを回して脱落も防止しておくことをオススメします。
って、基本こういった作業はプロに任せましょう。

画像左がトップキャップで右はただの化粧パーツかと思っていたらフォークトップを固定するカラーだった。
この2つがとにかく重い。軽量化する気など毛の頭ほどもないことが良く分かる部分。

このトップキャップが、このようにトップブリッジに填まり込む構造。
トップキャップはここでは構造上回るわけないので、あんなに強力なトルクでキャップを締め付けておく必要などないと思うのだが。
さておき、この宮大工の接ぎ木細工のごとき構造には素直に感服させられる。

上がノーマルスプリングで、下がウィルバースのスプリング。
ノーマルが一定の巻きで太さも太い。それに対しウィルバースは10%ほど細い上に途中から巻き幅の変わるプログレッシブ・サスペンション。
全長もウィルバースの方が10mm以上短い。ん〜〜〜〜嫌な予感がする・・・

ウィルバースはフォークオイルを粘度7.5に指定しているが、販売元の「ライダースハウスドリーム」は柔らかくなりすぎるとして粘度10を推奨している。

フォークオイルは、新車から走行4千キロでこれだけ変色する。
ただこれは熱によって変色しているだけでこのすべてが汚れや劣化を表しているわけではない。
片側で500cc以上使うので2L用意が必要。

油面は120mmが指定。この計測治具で油面を設定したら、スプリング、ワッシャ、カラーを挿入してトップキャップを閉めて交換完了。
あとは逆順で組み上げれば作業終了。
ちなみに、フォークチューブにシリコンオイルをベッタベタに塗って元に戻したら、すんなりとフォークカバーの中に治まってくれた。
もちろんすぐにテスト走行に出るわけだが、交換作業中ですでに敗戦濃厚であることはある程度見えていた・・・
ジャッキアップするときにフロントフォークはすでに自重だけで5cm近く縮んでいることが今回判明した。
それだけエンジンが重く、フロント荷重が大きいということだ。これだけ縮めば硬くなるに決まっている。
つまり、全長も短く、柔らかいはずのウィルバース・スプリングだと当たりを柔らかくできてもフロントは更に下がってしまうはずだ。
んで、案の定。
リアサスを交換して下げた車高を無効化するほどフロントは下がり、ノーマルのハンドリングに逆戻りしてしまった。
ただ、段差で跳ねまくっていた乗り心地に関してはかなり向上した。
跳ねたり、不用意にハンドルを取られることもほとんどなくなった。
つまり、ローダウンな見た目と、ハンドリングはノーマルのままで乗り心地を向上させるのがこの前後サスペンションの組み合わせの目的ということのようだ。
というわけで、リアサスを交換して3歩進んだが、これで2歩下がった格好・・・人生はワンツーパンチ。
汗かきベソかき行きましょう(水前寺清子)。
その4につづく


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