K2 TT Snowsurferのファーストモデルである16-17モデルを2シーズン使い、以降は『DEELUXE AREth RIN』を4シーズン半のあいだ、2モデルに渡り使用して来た。
こちらのブログでも再三申し上げてきたように、私はRINに充分以上に満足している。
K2 TT Snowsurferの1stモデルに2シーズン乗ってみて、その意図、それがスノーサーフかどうかは分からないが、私の解釈としてはフリーライド、について分からせてもらった部分もたくさんあった。そのタイミングで登場したDEELUXE AREth RINに乗り換えることにしたのもまた、それこそほとんどジャケ買いではあったのですが、TT Snowsuferとの時間があったからこそRINから感じる予感は大いにあった。
その予感の多くは「膝が入りそう」にある。
そして、その予感は爆アタリする。
加えて、あくまでも私の使用感でしかないが、TT Snowsurferよりも踵が浮かない。踵が動かなかった。
あくまでもフリーライドという使用条件の中で、ホールド感と可動性という二律背反する要素を、RINは見事なまでに高次元で融合して魅せたのであります。
そんなわけで、今でもRINのことはとても気に入っているので、正直に申し上げて買い換える必要性はまったく感じていない。
そのはずの私がなぜこうした蛮行に至ったのか。長くなるが言い訳にもならない言い訳をお聞きいただきたい。
先日ご一緒させていただいた方(女性)に、「なんでみんなそれ(TT Snowsurfer)が気になる(欲しい)って言うんですかね?」と、問わず語りに訊かれた。
それは単に私がゲンテンバカだから。
とは、さすがに初対面の方には言えないので、そのときは「どうしてですかね〜〜」とはぐらかす他なかった。
それではミもフタもないのでもう少し書かせていただく。
そもそも私がGentemstickをチョイスしたのは、品質感を含めたディテールの方に惹かれたから。
いわゆるジャケ買い。
ジャケットだけ見て買ったCDからそのアーティストの事をもっと知りたくなるように、こういったディテールをプロダクトに籠める人の滑りの発想に逆に興味が湧いた。
私はスノーボードやサーフボードについて理解を深めようとしたとき、同じメーカーやブランドだったり、同じシェイパーが削ったものの中で比較をしたいといつも思う。
それぞれのシェイパーが、それぞれの意図と意志をもって生み出したモノ同士を比較しても、私には好き嫌いしか答が出せない。
でも、同じシェイパーが個々のモデルに籠めた意図なら比較できる。と思っている。
それぞれに足された部分、引かれた部分を比較しながら、そのシェイプの意図、ひいてはそのシェイパーの意図を私なりに解釈してきた。
そして、この作業はGentemstickだけの考察に用いられるのではなく、別メーカーや別ブランドのボードに乗ったときにもその尺度を使ってそのボードのアウトラインを想像することができる。
そうして逆説的にスノーボードやサーフィンというものを分解して咀嚼することができてきたのだと思う。
そう言った意味で、一人のディレクター(シェイパー)によってシェイプを含むブランドが管理されているところもGentemstickの魅力だと私は思う。
そのシェイパーがスノーボードを開発するのと同じ発想でプロデュースしたブーツですので、RINという伴侶がいても、その反対側ではいつもTT Snowsurferというブーツのことが気になっておりました。
というのが先の質問への偽らざる回答であります。
私のような考え方をする方はそうそういないとは思いますが、いわゆる“ユーザーエクスペリエンス”という観点で見れば、Gentemstickのもつ世界観への共感がこのブーツの購買理由になっている方は多いように思う。
とはいえ、1stモデル以降、正確には18-19yモデル以降のTT Snowsurferのカラーを含むデザインが、私はあまり好きではない。
スニーカーを彷彿とさせるストリート・カルチャーのテイストをふんだんに与えられた、オールドスクールな魅力に溢れたRINと較べれば、TT Snowsurferはかなり未来的で、いっそ前衛的なフォルムや造作を与えられている。
さあどっち?と訊かれれば、トーゼンのように私の選択はRINの方になるため、これまでは浮気(元サヤ?)の危険性から逃れることができていた。
でも、昨季からTT Snowsurferに追加されたレザーモデルの『LS』だけは違った。
古くは『SHIMANO FLAKE AB』からはじまり、『DEELUXE SPARK SUMMIT』、『BURTON ION LEATHER』、『BURTON ROVER LTD』にいたってはRedWing Leatherと、Diemme Leatherのバージョンとも手に入れた。
それほど本革で設えられた特別仕様のブーツに弱い私はまさに格好の餌食。
もうちょっと言わせてもらうと、初代『AUDI TT ROADSTER』(TTかぶりにとくだん意図はありませんので悪しからず)の、野球のグローブを模した本革シートも好きで、これだけでこのクルマを欲しいとさえ思ったこともある。
それくらいに、本革に限らず素材の魅力を最大限に表現しているプロダクトが大好き。
使い方だけでなく、自身の生み出したボード(Stick)と、どう向き合って欲しいのか。
そうした哲学や思いまでをもボードのディテールに籠める、Gentemstickの意図と同じものを、この本革色だけで表現されたTT Snowsurfer LSには感じてしまった。
とはいえ、22-23モデルで定価¥104,500(税込)、23-24モデルは¥139,000(税込)にまで値上げされ、いくら興味があってもおいそれとは手を出せない。
何て言ってますが、これまで欲しいとなれば商品タグからは目を逸らし、清水の舞台を飛び降りまくる私でしたので、そんな私が飛びつかなかった(飛び降りなかった)のはやはり、大のお気に入りとなったRINを差し置いてまでこちらに飛びつく理由もまたなかった。ということに他ならない。
それほどお気に入りの私のRINですが、21-22モデルも今季で3シーズン目になる。
そろそろ来季モデルの情報が入りはじめたこともあり、来季あたり新しいのに履き替えようかな。とか、思っていたところに、先シーズンまでRINを履いていて今季からTT Snouwsurferに履き替えたマッツンが現れた。
「RINの方が膝が入りやすいでしょ?」と聞くと、「K2 TTも変わらない」とかサラッと言いやがる。確かに後ろからマッツンの滑りを眺めていても、きれいに膝が入っている様子が窺える。
とはいえ、マッツンはブーツにインソールが入っていなくても、バインディングのトゥストラップが壊れてなくなっていても、「ちょっと滑りにくい」とか言うだけで普通に滑ってくるような輩なので、こういう人の言うことをまともに聞いてはいけない事は百も承知だ。ただ、頭ではそうと解っていても、このことがTT Snowsurferに対する都合の良い後ろ盾となってしまうのでありました。
ううう〜〜〜ん。1stモデルからどんなアップデートが施されているのか、試してみたい・・・・・
そうして情報収集を開始すると、TT Snowsurferの熱成形にも耐えるインナーブーツは、履いているときの体温で成型する低温成型がメーカー推奨なのだという。細かいコトかも知れませんが「またショップに出向いて施工してもらわないとならんのか・・・」ということも、私の勢いを削いでいた要因であることもまた事実。
「熱成形を任せられるショップで買いたい」とか思ってしまう私は、販売価格優先でショップを選べなかった。
この縛りから開放されればお値段優先で買うことができる。
こうして、領域展開された私の術式の必中効果は最大化された。
しかも、ただでさえ短命に終わりそうな今シーズンもすでに中盤を過ぎ、こういった状況であればお得な出物も出て来たりもする。そこに割引プランやら、貯まったポイントやらを全集中し、ノーマルモデルの八掛け、RINのStage4の定価より少し高い程度のお値段でLSを手に入れることができた。
1stモデルを履いていたので、乗り換え時に一番目立つ特徴であるダブルBOAについても違和感はない。
ちなみに1stモデルはワイヤー仕様だった。
BOAによって履きやすさは確かに向上するが、RINのレースアップも慣れれば手数に大きな差はないと思う。
とか、頭では理解していながらも、さあブーツに履き替えて・・・とブーツを取りだしダブルBOAだと気づいた瞬間に毎回ホッとする自分がいる。
単純にスノーボードブーツを脱ぎ履きする精神的な苦痛から解放されることが、これほどまでに重要なのかと毎度痛感させられている。とても小さいことなのだが、こうしたチリツモって大切。
これも大した問題ではないが、手に持ったときにハッとするほど軽く感じたので一応量ってみた。片側927g。
RINとは200gも違う。
カバーに着くファスナーは、外側向きから内側に向けて傾けるように向きが変えられた。
ちなみに1stモデルではセンターに配置されていた。
ベロ(タン)を持たないインナーブーツのラップ仕様は変わらず。1stモデルにあったラップ部のベルクロは廃止されていたが、重なる部分に滑り止めが施されていた。
23-24モデルからインナーブーツのアンクルポケットとL字のパッドが廃止された。のだそうだ。
いずれもホールドを上げて踵浮きを抑制するための装備だったと思うが、それだけインナーブーツからホールド性能が上げられたということなのだろうか?
RINのインナーブーツにはハーネスが出荷状態から装備されるが、K2 TTのインナーブーツのハーネスは付属品として同梱されている。
ただし、インナーブーツに巻くタイプではなく、アウターブーツの内側に固定するタイプ。
アウターブーツの内側に用意されるホルダーにハーネスの突起を差し込んで固定する。
一度填め込むと外すのはかなりたいへん。覚悟のないままに迂闊に装着しない方が身のためだ。
そもそも装着されずに出荷されている時点で、これがなくても問題のないことを示唆していると思うので、私はまずは装着しない状態で使用してみて、踵のホールド具合と、膝の入り方の様子を見ることにする。
ちなみに、24-25モデルではRINと同様のインナーブーツに装着するタイプに変更されるとの情報もあり。
TT Snowsurferのコンパクトさが良く分かるアングル。
というより、こうして並べて見ると、むしろモッサリとしたRINの寸胴さの方が目立つが、注目したいのは角の切り立ったソール形状のシッカリ感。
TT Snowsurferの方は左右の角が取られバインディングの中でゴロゴロと転がせるような意図に見える。
イメージ的にはブーツの底とバインディングのデッキの接地面積は大きい方がレスポンスに優れると思っているので、これを見る限りTT SnowsurferとUNIONバインディングとの相性が気になる。
そして、TT Snowsurferはブーツ自体が内側に3°傾けられていることもポイント。
上の画像でもその傾きが見てとれると思う。
手持ちの『UNION FORCE』と『STRATA』にはカントベッドが採用されているので、TT Snowsurferと併せて6°の傾斜となってしまうがどうなのだろう?
TT Snowsurferの前傾角度は6°とメーカーから公表されている。
DEELUXEは前傾の数値を公表していない(と思う)が、足を入れてみた印象では大きな違いはないと思う。
こうして並べて見て思うのは、TT Snowsuferはアキレス腱から上のあたりがえぐれて見えるほどふくらはぎへの配慮が大きいこと。私はふくらはぎの膨らみが比較的上の方にあるので、この部分が当たることはないためその効果を享受することはない。
1stモデルでは踵からふくらはぎの下まで、一本プレートでも入れられているんじゃないかと思うほど、不自然に突っ張るような、前傾方向に強めのプレッシャーを感じていた。
そのあたりがどう改善されているのか、はたまたされていないのか。そこが一番気になるポイント。
ブーツを入れ替えるときは、心機一転の気持ちも兼ねて、シーズン頭と相場が決まっているが、シーズン中盤で乗り換えるという暴挙によって、ある意味真の比較ができるとも思っている。そのこともとても楽しみだ。
こちらも実際に使ってみた“答え合わせ”はまたそのうちに。
コメント
コメント一覧 (6件)
おめでとうございます!
高値の花がさらに高値に…(私はSTEP ONで楽してます)
埼玉のへそ曲がりさんの考察とインプレが大好きです
いつも興味持って拝観させてます
遅れましたがリニューアルおめでとうございます
一つお聞きしたいのですが、北海道へ行く際はボード、スキーは宅急便ですか?
ボードはケースにブーツ、ウエアなど詰め込みますが、スキーはどうやって送るのか?(息子がスキーなので)
スキーはケース無いです、ブーツと一緒にクロネコビニールで送れるのか?
もし知見がありましたらご教示いただけたらと
よろしくお願いします
アッチさん
STEP-ONも高嶺の花ですよ〜〜〜いつか試乗してみたいと思ってます。
北海道に行くときはこちらのスキーバッグにスノーボード、スキー1セットずつ入れて運んでいます。
http://psyvano.blog109.fc2.com/blog-entry-876.html
飛行機に預け入れていくときも宅急便で送るときもこのバッグに入れて送っています。
宅急便のスキーケースにスキーを入れておけば宅急便はもちろん飛行機への預け入れも(重量制限内であれば)いけますが、
ブーツと一緒に送る際は上記のようなキャリングケースに入れないとブーツと2個口になってしまいます。
過去記事にあったんですね
まぁまぁデカいバック!
となると今回はスキーブーツバックで2個口ですね
来週月曜日から行ってきます
息子の受験勉強のご褒美です
そんな事もあり、私も雪山へ行くのを自粛しておりました
20年ぶりの北海道、楽しんできます
ありがとうございました
北海道羨ましい〜〜〜〜〜!楽しんで来てください!
いついかれるのかなぁ…と思っておりました。
今シーズン北海道に行った際にホテルのエレベーター内でRINを持った方から「TTレザーいいですよね」と声を掛けていただきました。「私は逆にRINが気になっています」と返答したところ「TTレザーも持っていますがそっちの方がよさそうな気がします」と仰っていました。私にとって今のところ全く欠点のないブーツですが、買換えの時期がきた時の出費が頭痛の種です…。
まさに隣の芝生的な永遠の2択案件かもしれませんね〜〜