東北トリップから戻ってからというもの、花粉症で外出するのも億劫になるような日々が続き、否応なしに春を実感させられている。
これまで私は、言ってもそれほど花粉症で悩まされたことはない。いつもならジワジワと来て比較的短い期間で症状が収まってくれていたのですが、今年は違う。いきなりアクセル全開で症状が収まる気配ならない。
そんなネガティブな気分に追い打ちをかけるように、斑尾高原スキー場で大規模な雪崩が発生した。
非圧雪コースで鳴らす斑尾高原スキー場ではありますが、雪崩が発生したのはコース外コースではなく、紛れもないコース。
加えて、見落としやチェックミスなどの人的要因ではなく、何の兆候もなく大規模な雪崩が発生したのだという。
こうなるともう安心できるスキー場など、どこにも存在しないことになる。まさに悪夢のような出来事だ。
以下は調査に入った「一般社団法人 アルプス雪崩研究所」が発表した今回の雪崩の概要
■ 発生メカニズム
今シーズンの少雪を背景に、以下の過程で雪崩が発生したと考えています。
地表直上のMFcr (氷板)が不透水層として機能し、融雪水が地中に浸透できない状態にありました。雪崩発生前の1週間、夜間もプラス気温が継続したことで融雪が24時間進行し、氷板の上に水が滞留。水を多く含んだ積雪層が斜面上で安定を保てなくなり、雪崩が発生しました。
■前兆がなく、予測は極めて困難だったこの雪崩が深刻なのは、事前に前兆現象が一切確認されていなかったことです。
全層雪であれば、グライドクラックの開口や雪の移動といった視認可能な前兆が先行することが多く、パトロールによる目視確認が有効です。しかし今回は、発生当日の朝の巡回時点でも雪崩発生区域に異常は認められませんでした。
氷板上に融雪水が滞留するメカニズムは外部から視認できません。積雪層内部の水の挙動に起因する湿雪雪崩は、表面的な観察のみでは予測に限界があります。
■ どう備えるか
目に見える前兆がないからこそ、積雪の内部構造を把握するための取り組みが重要になります。
特に少雪シーズンにおいては、定期的な積雪断面観測を行い、地表付近に氷板が形成されていないかを確認することが有効です。また、プローブ(ゾンデ棒)を積雪に差し込むことで、層内の硬い層-すなわち氷板の存在-を簡易的に検知することもできます。明らかな硬い層の抵抗が確認された場合は、それが不透水層として機能し融雪水が滞留するリスクがあると判断できます。
加えて、気温推移のモニタリングも欠かせません。夜間もプラス気温が連続するような状況は、融雪が止まらず積雪層内に水が供給され続けていることを意味します。こうした気象条件が続く場合には、雪崩リスクが高まっていると考えるべきです
ということで、これも異常気象が遠因の雪崩だということだ。
「数十年に一度」の気象状況が常態化している昨今、こうした状況が今後も「あたりまえ」になっていくのだろう。
インバウンドの影響もあり、この国の“コース外”は次々に拓かれていきましたが、発表にあるようなより一層の安全対策が求められるなど、今回の事故はそうした流れにも大きな一石を投じることになるだろう。
といったわけで、急激な季節の移り変わりに花粉症、おまけに無慈悲な雪崩発生が重なり、いよいよ雪山へのモチベーションはダダ下がり。しかも、当の斑尾高原の早割をまだ持っている私は余計に気分が滅入ってくる。

至近な片品あたりでお茶を濁しておくか・・・とか考えてしまう弱気な自分に立ち向かう意味でも、いっそその斑尾に行くことに決めた。
とはいえ今回は用事が重なってしまい前泊はしますが日帰り。
遠路はるばる斑尾まで行って日帰りとは、なんとも勿体の無い話なのですが、ここで時間的制約を優先して片品あたりで済ませてしまったら、それこそ斑尾が営業しているうちにやって来ることは出来なくなってしまうだろう。
要はセコい気持ちがネガティブな気分を凌駕した格好。
それでもなんでも、出かけようと思えたことが肝心。
とか言っていたら、都合よく南岸低気圧が張り出し、山沿いに降雪予報が出た。
関東の平野部でも積もるかも?なんて予報まで出てきた。
こうなったらもう行くしかない。

というわけであれこれと用事を片付け、前日の21時に斑尾に向け埼玉を出発した。
後ろ向きな気分の尻を叩くには都合の良い降雪予報ではありましたが、残念ながら斑尾までの道中に降雪はなかった。この時間に積もってくれないと間に合わない。
そして翌朝、斑尾スキー場の駐車場で目が覚めると、雪は降っていましたが、水分多めで積もるような雪ではなかった。
結果的に雪はこの日の夕方から本格的に降り始めたらしい。負け惜しみも込みで言うが、この時期の降雪はストップスノーになりやすいので、文字通りの足枷にもなりかねない。とか、良いようにとることにする。
なんだかんだ言って、今の私のやる気の源は『IMPOSSIBLE』に乗ることに他ならない。
IMPOSSIBLEはそれくらい、私にとってとても大切なクイーバーとなった。
もしもIMPOSSIBLEがなかったら、それこそシーズンをフェードアウトしていたかもしれない。

そもそも平日ですし、この天候に加え雪崩のニュースも重なったからか、案の定この日の斑尾高原はガラガラに空いていた。営業開始15分前でポールポジション。後ろに列はできたが10人程度。
新雪斜面は待っていないのでポールポジションに何の意味もありませんが、この日はスキー場ボトムですでにナイスなシャバ雪。カチカチの斜面が緩むのを待つ必要もない。
先陣を切って足応えの良い春雪でIMPOSSIBLEを存分に満喫させていただく所存。
ちなみに、少ないながらも外国人観光客もいたのには驚いた。せっかく日本まで来たんだったら、どう考えても今行くべきは北海道だろ。へそ曲がりは世界中にいるんだな。


んで、想像通りにシャバすぎるほどにシャバい雪面にピステンがかけられていた。
スキーに先を越されファーストトラックは逃しましたがまあいいだろう。
少々視界が悪いのがナンですが、前回の『宮城蔵王白石スキー場』同様に、ほぼオートマチックにIMPOSSIBLEが噛みまくり、3割がた上手くなった気がしてしまうGOODな斜面。思い切って来てよかった。


『チャンピオン』を2本、まずはコース・シャウダーを美味しくいただいてから、雪崩のあった『クリスタル』に向かう。
中には成人男性ほどの大きさもあるデブリも窺える。
こんなデブリに飲まれたら・・・と考えると生きた心地がしない。
この規模で被害者が4人で済んだというのは奇跡に等しい。
場合によっては今季営業中止に追い込まれてもおかしくないような惨状だ。

クリスタルを下まで一本味わい『第15リフト』で『タングラム斑尾』へ。
タングラムのシャバ雪ピステンもまた美味しかった。っていうか、コース外コースを含む斑尾高原の比較的斜度のあるコースのほとんどが閉鎖されているため、今回ばかりはタングラムの中〜緩斜面で春雪を味わう方が吉。
もちろんタングラムでもコース外コースを中心にいくつかの斜面が閉鎖されるなど、雪崩の影響は出ているのですが、コース外が滑れないと旨みの少ない斑尾高原と比べれば、タングラムの方がまだメインと言えるコースを滑ることができるだけだいぶマシだ。
と言った具合に斑尾の運命共同体であるタングラムも少なからず雪崩の影響を受けているのですが、通常営業のコースが何の前触れもなく全層に近い大規模な雪崩に見舞われたという事実は、タングラムにとどまらず、全国のスキー場、中でも隣接する長野、新潟のスキー場の関係者にとっては「明日は我が身」の重大な問題となったはず。多くのコース外へのゲートが閉鎖されることだろう。

気持ちの良いタングラムのシャバ雪に誘われて、いつもは滑り込まない、スキー場の一番奥になる『第6リフト』まで行ってみた。
積雪には水分が多くとてもよく走ってくれるのですが、やはりコース下部ではストップスノーも混ざり始める。
この日の降雪は半分雨みたいな湿った雪で、おかげでウェアもびっしょり。
気温は低くないのですが、それもあって凍えてくる。滑っているぶんにはとても楽しい雪なのですが、リフトに乗るたびにテンションが下がってしまう。



そんな少々ブルーな気分の方が上回っている状態で斑尾高原に戻り『SAWAコース』にやって来た。
他のコース外エリアへ出るゲートが閉鎖される中、ここは開けていてくれた。誠にありがたい。

そして、このナチュラルパイプは、ビジョ塗れのウェアでしょぼくれた私の気分を、完全に盛り返してくれた。
いい具合に緩んだ壁はガンガンに蹴り込める。超面白い。
先日の『R天国』よりこちらのSAWAの方が数倍楽しかった。
こちらを滑るには『第11リフト』『第16リフト』と、お世辞にも速くないリフトを2本も乗り継がないとならないので、凍えるような日なら尚のこと、いつもなら積極的にここを回そうとは思えないのですが、今回はあまりに楽しくて3本も回してしまった。
本当はもう一本行きたかったのですが、すでに滑走開始から3時間が経過していたためやめておいた。
深追いは怪我の元。

ランチ休憩後、久しぶりに『KORUA SHAPES APOLLO』に乗り換えた。
そのワケは『SPARK R&D MAGNETO』バインディングに取り付けた『POW SURFER HEEL LOOP』を試すため。
もうちょっと早くテストしておきたかったのですが、IMPOSSIBLEの登場ですっかり後送りにしてしまっていた。
本来スプリットボードで試すべき事柄なのですが、実はバックカントリー関連のアイテムで他にも企みがあり、その企みのためには『SPARK Solid board Canted Pucks』を使ってソリッドボードで試しておく必要があった。
私にとってこれから迎える春のピクニックシーズンがバックカントリーの本命なのですが、今回の斑尾の雪崩の原因はバックカントリーエリアにも共通するもの。
この状況のままだとバックカントリーには二の足を踏んでしまうかもしれないので、その「企み」に関しては、今シーズンはお蔵入りの可能性もなくはない。
それにしても、なぜAPOLLOなのかと言うと、今シーズンのニューアイテムだと言うのに、すっかりご無沙汰になってしまっていたことに加え、SPARK R&Dのバインディングは硬いので、試すのならフレックスの硬いAPOLLOが向いていると考えてのこと。
それと、ソリッドボード用のパックを使って金属製のベースプレートを持つSPARK R&Dのバインディングを使うと、少なからずデッキへの攻撃性が認められるので、デッキの強そうなKORUAにしたということもある。
APOLLOの感想についてはまた改めてまとめさせていただきますが、この日一番に感じたのは「APOLLO短け〜〜」だった。
「IMPOSSIBLE長え〜〜」が本来感じるべき感想なのでしょうが、やはり私はIMPOSSIBLEを長いボードだとは感じていないということが我ながらよく分かった。
一本滑り切る頃には私の脳みそもAPOLLOにアジャストされましたが、初めて使うPOW SURFER HEEL LOOPの乗り味と併せて余計に短く感じられた。普通にターンさせたつもりだったのですが、最初のターンでテールがあっさり抜けて180させるところだった。

第2ラウンドに入ってから、比較的乾いた雪も降り始めた。
今回、IMPOSSIBLEにはカシワックスの『Mazukore & Tsugikore』を、APOLLOには同じカシワックスの春用ワックス『SPRING BRAKE』を塗布して来た。
そのため、期せずして両者の滑走性能を比較することができたのですが、シャバ雪の上に新雪が載るこうした状況では、SPRING BRAKEの性能は圧倒的でありました。
ただ、シェイプの違いなのか、グラファイトの有無のシンタードベースの違いなのか、はたまたワックスとの相性なのかは不明ですが、IMPOSSIBLEとMazukore & Tsugikoreの組み合わせにおいての作動範囲の広さも垣間見ることができた。
むしろ春のシャバ雪までカバーする、シーズンを通して高い性能を維持してくれるMazukore & Tsugikoreの高い汎用性の方に感動してしまった。
やっぱり私は汎用性の高いプロダクトが大好きだ。


APOLLOとともに第2ラウンドもタングラムまでやって来た。
久しぶりに乗ってみたAPOLLOですが、IMPOSSIBLEほどシャバ雪には合っていない。
シャバ雪でも朝イチの整ったピステンであればまた印象は違ったかもしれませんが、この時間の荒れてきた状況だとその硬いフレックスが災いして跳ねまくってしまう。
やはりこれだけフレックスが硬いと、脚力の弱まってきた私の場合は尚のこと、雪質の良し悪しに乗り味が大きく左右されてしまうようだ。
もちろん滑り方を調整すればなんとかしのげるレベルではあるのですが、なにせIMPOSSIBLEがこうした雪面をあまり苦にせず、むしろ乗り心地が良く感じてしまうのであまりにも相手が悪い。
といった感じで、APOLLOと同じ雪で乗り比べたことで、むしろIMPOSSBLEに対していくつかの気付きがあった。やはり同じ雪で比較対象があると諸々解りやすい。
その件に関してはまた明日、あらためてお伝えしようと思う。


そのあとAPOLLOとともにもう一度SAWAコースまでやってきた。
案の定、こうしたナチュラルパイプでは、よりクイックな操作を受け付けてくれるAPOLLOの方が合っていてる。
それはもちろんAPOLLOの162cmというレングスによるものが大きいのですが、そのAPOLLOよりも20cm以上長いIMPOSSIBLEが、及ばすともそう遠くもない操作性を実現していることにはただただ感服させられる。

14時に斑尾を出発して帰路に就いた。
家の用事が待っているため、この日は優雅に高速で帰ることにする。
早割の消化で来たのに高速代を使っていては本末転倒。とか、言わない約束でお願いしたい。
ちなみに、下道を走って帰ることは「時給2,000円」のアルバイトだと私は思っている。
これは、高速道路を使って1時間早く家に帰るためには、通行料という名の2,000円のエクストラコストがかかるという意味。
2時間を稼ぎ出したければ4,000円が必要になり、渋滞などを挟むとバイト代はさらにアップする仕組み。
運転が好きな私ならではの話なのかもしれないが、そう考えると下道を走る意義が明確になる。
とはいえ、帰りにラーメンでも食べれば、1時間も2,000円も簡単に飛んでいってしまう程度の話なのではありますが。


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