前日の尾瀬岩鞍ではカッチコチ斜面だったので、スノーボードにモードチェンジすることなく、一日スキーを楽しんだ。改めてスキーの汎用性の高さを実感させられた。
『SLASHER II』の購入から、“私のTTを巡る旅”はいよいよ大詰めを迎えており、更なる理解を求めて2年ぶりに『TT165 Soft Flex』を持ってきていたので、ぜひ確認して帰りたいところなのですが、TTをカチコチの斜面で滑るのかと思うと帰りたくなる。
まあどんなボードであれカチコチ斜面は御免ですが。

今回は日帰りで良いかな〜と、気持ちはそこそこの及び腰だったのですが、この夜に数センチ程度ですが降雪予報が出ており、TTでも少しは踏めるようになることを信じて『ささの湯』に浸かった。
帰るかもう一日滑って帰るかウダウダ言い続けていたので、一緒だったTくんにも「明日どうするのか、温泉に浸かって考えても良いんじゃないですか」と言われたのですが、私は疲れた状態で風呂に入ると強い睡魔に襲われてしまう体質なので、もう一泊する覚悟が固まらないと温泉には入れない。なので、これは決意の入湯なのであります。

そんな覚悟を持ってやって来たのは『オグナほたか』。
二日続けて尾瀬岩鞍でも良かったのですが、またアイスバーンだった場合、すぐに脱走することも想定されるので、そういう日はせめて駐車場代は避けたいトコロ。
尾瀬岩鞍もオグナほたかも、Earth Hopperが使えるのですが、今シーズンのEarth Hopperは前回の舞子高原で使い切った。
割と早い段階から今シーズンのEarth Hopperを使い切ってしまうことは見えていたので、群馬の5つのスキー場で使える時間券『Powder 5 ぐんま』の10時間券をOYくんに譲ってもらっていたのでした。
Powder 5はスキー場だけでなく日をまたいで1時間ごとに使える時間券。当日有効の時間券がチケット購入時間から滑っていようが休憩していようが終了時刻が変わらないのに対して、こちらの時間券は最初に自動改札機を通過してから1時間が経過したあとにリフトに乗らずにランチや休憩に入れば、その休憩時間はカウントされない。
改札を通過した時間を覚えておかないとならないのが面倒だが、それさえできればかなり効率的に使えるリフト券。こういう曖昧な気分の日に持ってこい。春スキー向きのリフト券だと思う。
しかもこの日は最初に乗った第2ロマンスリフトの自動改札機が不具合だったのか、はたまた単純な電源の入れ忘れなのか分からないが、まだ稼働していなかったようで、次に乗った第7ペアリフトが最初の改札時間となったため20分ほど得してしまった。


多いところで5cmほどの新雪が乗っている状況。
ギリ足応えを得られた。良かった〜〜
とはいえ、5cm下には硬い雪面がいるので、この積雪量ではそれも踏み荒らされる朝イチが限度か。
とにかく集中して滑らないとならない。

ここのところ『MOSS Q57 / 545』にばかり乗っていたこともあって『TT165 Soft Flex SPRAY 20th Aniv.』に乗るのは2年ぶり。
たとえターンのキッカケが薄く感じられてしまっても、ボードから抵抗感をなくすこと、それによって得られる純度の高いターンの実現に絞り込まれた設計が施されているのがTTというスノーボードだと思う。

今ではTTだけでも様々なモデルをラインナップするようになったフラットキャンバーシリーズですが、Classicの名が示す通り、その哲学の純度が一番濃いのがTT165 Classic。
そして、シリーズの枠を超えて、TT165こそがGentemstickの原基だと私は思う。
私のTT165はオリジナルではなく“ソフトフレックス”。
(Woman’s Flexであったり、同じソフトフレックス名義でもフレックスの設えは現行モデルとは違うものと思われる)
TTのオリジナルは、TT以外のボードと比べてもハードフレックスに分類される撓み強度を持たされている。と思う。
ちなみに『TT168 ミズメヒノキ』もオリジナルに倣った硬いフレックスを持たされていますが、水目と檜という特別な芯材が奢られているのは、その硬さ故に発生する振動の減衰を目的としているのだと私は感じている。

硬く設定することで、「雪圧を受け止めずにいなす」TTの細いスティック形状の特徴をより際立たせるための設定なのであろう。
新雪の中をサーフライクに滑ることを想像すればそれは的を得ていると思えますが、ボードを撓ませることで強いサイドカーブを現出させる必要性の高まる圧雪斜面だと、撓みづらいハードフレックスを選択していることはむしろネガティブに働いてしまう。
そうしたネガティブな性格が、逆に圧雪でも澱みなくキレ上がるような、独特の走り方となって現出するわけなのですが、そうした特徴を引き出し、しかも安全に操作するには、扱い方に特殊な作法を必要とする。
ゲンテンファミリーの山下勝さんに「TT165は日本刀だ」と言われたことはトラウマ級に今でも思い出されるが、そうしたTTの特殊性が“日本刀”と揶揄させる所以だと私は思う。
ただ、それが逆にTTにしかない乗りこなす楽しさ、所有するヨロコビを生んでいるのだと感じている。
それを(多少なりとも)一般的なスノーボードの方向へ補正しようとしたのが、ワイズを持たせることでレスポンスを増したTT168、TT160、そして撓みやすくされたソフトフレックスなのだと思う。
そしてさらに輪をかけて乗りやすく補正されたのがSLASHER II。
そんなSLASHER IIの乗り方、そしてTTをパウダーボードらしくファットにしたようなアピアランスを持つ『MOSS Q57 / 545』の乗り方を学んだことは、自らの滑り方を補正することにつながり、「条件が整わないと曲げづらい」と思っていたTTのことを「曲げやすい」と感じられるまでになった。
その感覚が冷めないうちにTT165 Classic Soft Flexに乗っておきたかった。
そうしてTT168と比べれば、想像通りにTTの持つ“スッキリ感”が、より際立って感じられた。
引っ掛かりがなく、さらに滑りに淀みがないのはTTの特性ですが、165はその特性が更に強調されているように感じられる。
ただ、そこにソフトフレックスが加えられることで、それは頑固なだけではなく、連続性を乱すリズムチェンジも易々と許容するような汎用性も併せ持つようになる。
そうしてTTというスノーボードが追い求めるものを、より分かりやすく咀嚼させている。
とはいえ、それはあくまでもTTという特殊な世界の中での「分かりやすさ」でしかないのでご注意いただきたい。
ただ、ことTTにおいては、分かりやすさにあぐらをかくことが堕落にすら感じてしまうという自己矛盾に陥ってしまう。こうなると今度は165をオリジナルフレックスで味わいたくなってしまう。
といった悩みは実はすでにここ数年続いているのですが、2021年に発表されたファイナルエディションを境にして、新しいイヤーモデルのTT165 Classicには食指が動かされない。
どういったわけか近年のGentemstickのプロダクトたちからは、私の所有するTT168 ミズメヒノキ、TT165 Soft Flex、SPEEDMASTER、MAXFORCEが放つようなオーラを感じ取れないのであります。
ま、極端に財布の紐の緩い私にとって、それは幸いなことだとも言えるのですが、なんとも寂しい話ではある。



スタートから3時間が経過し、新雪というメッキが剥げはじめ、硬い雪面が露出しはじめた斜面は、ただただ修行の様相を呈して来た。
とはいえ、この状況になるまでTTで対応できるようになっている自分がちょっと誇らしい。
この時間も雪は少ないながらも降り続けており、帰りの道中がちょっと心配になってきたのでこのあたりで撤収することにした。

こちらの画像は『利根沼田望郷ライン』の、しかも南側に位置する昭和の辺りの様子。
標高が高く北側に位置するオグナほたかスキー場の辺りよりもよっぽど雪が積もっていた。
来る時には路面は完全に乾いていたので、ここ数時間での積雪。
いつもは県道62号線で大間々を抜けて帰るのですが、薗原湖のあたりからすでにズルズルに滑り散らかしていたため、道幅が狭く屈曲のきつい62号線は諦めて望郷ラインに切り替えたのですが、道幅が広く走りやすい道であっても水分を多く含んだヘビィなシャーベットは、アイスバーンなんかよりよっぽど滑る。
途中の登り坂では数台のクルマがスタックしていて、対向車が来なかったから思い切って登り続けられましたが、それらをかわしながらの登坂にはかなり肝を冷やした。
今季の雪道運転で一番シビれたシーンでした。春雪って侮れない。
コメント