「ダンディズム」なんて言葉、すっかり流行らなくなって久しいが、スマートでスタイリッシュな大人の男性像には未だに憧れる。
今ではスマートでスタイリッシュなんて言葉、それこそ何通りもの解釈ができてしまう抽象論でしかないが、私の知る“あの頃”ではその解釈は一通りしかなかった。
「私立探偵」なんていう職業が、ひとつのスタイルとしてしっかりとした意味を持っていた時代。
もちろん、誰にでもできる仕事ではないし、何より、それができる人は、それ以外の何もできない人。
“アウトサイダー”、“はぐれもの”といった人の職業。
でも、一般的な道筋から外れていることのカッコ良さ、明日を垣間見ない生き様にはつい憧れてしまう。
私の世代では松田優作の『探偵物語』がひとつの到達点だと思うが、ジョン・シュガーは松田優作演じる工藤俊作を更にスタイリッシュにした人物像だ。
無口だけどユーモアがあって、ちょっと古い映画を愛し、高価なスーツをさりげなく着こなし、世界中の仕事を引きうけ、自宅を持たないホテル暮らし、操るクルマは1953年モデルのベビーブルーのシボレー コルベット。
数カ国の言語を数時間でマスターした頭脳の持ち主で、元CIAの特殊工作員。
他人に優しく(犬にもやさしい)、もちろん女性の扱いは特級品。
あの頃のハリウッドが数多く描いていた私立探偵の、まさに王道をいく人物が主人公。
いつもは信頼するエージェントに入った仕事しか承けないシュガーであったが、自身の携帯に直接連絡の入った飛び込みの案件を引きうけることにしたのは、それが他でもない敬愛する伝説的な映画プロデューサー、ジョナサン・シーゲルからの依頼だったから。
エージェントからは、その案件を引きうけずに休みを取ることを強く薦められるが、シュガーはエージェントに知らせる前にシーゲルの邸宅を訪れていた。
行方不明となったシーゲルの孫娘の捜索を開始したシュガーは、ハリウッドの暗闇だけでなく、自身の過去とも対峙することになっていく・・・
とにかくジョン・シュガーという人物がカッコイイので、彼の哲学や、所作に触れているだけで充分楽しめる。
それもあってか、事件の真相を暴いていく部分にはあまり力点が置かれていないな・・・
・・・とか思っていたシリーズ中盤。シュガーのとんでもない真実が明かされる。
一応言っておくと、この明かされた謎の中身が、良い意味でも悪い意味でも「とんでもない」。
まさにどんでん返し。
私はこれまでこんなの見たことがなかった。「唖然」って言葉、ここではじめて使わせてもらう。
それを知らされたあとでも、観続けるかどうか、視聴者の忍耐力や想像力が試される。
ちなみに私はその真実を何とか飲み込むことができたので最後まで観続けることができた。
このとんでもないひっくり返し方をしたドラマシリーズが、一体どう評価されたのか。
それについては続編が制作されるかどうかで判断できるだろう。
(オススメ度:50)
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