【2024年の答え合わせ】K2 TARO TAMAI SNOWSURFER LS

『KS TT SNOWSUFER』を手に入れるにあたり、私が一番に興味を惹かれたのはやはり『DEELUXE AREth RIN』との比較にある。

『K2 TT SNOWSURFER』と『DEELUXE AREth RIN』。
おおよそ想像はしていたが、たとえ手法や哲学が違っても、このふたつのスノーボードブーツはやはり、同じゴールを目指しているものと私には思えた。
そのゴールとは“FREE”という単語に集約されるように思えるのですが、そこへ至るそれぞれの辿る道筋には大きな隔たりがある。

そもそもフリーライドをするスノーボードブーツに求められるものって何だ?って話なのですが、残念ながら私はまだ多くのフリーライダー達が求める“FREE”の全貌を知るには至らない。
なのでかなりの部分に私の勝手な妄想が混ざるが、私が気づいているものだけでも、
①足首をタテ方向に柔軟に使えること
②内側に膝を入れやすいこと
③足裏から明瞭な雪面の感覚を得られること
の3つがある。

こうした自由を得るための機能と反比例する拘束具たるブーツとしての固定力との、ちょうど良い塩梅を探るということが、この2つのブーツのゴールなのだと仮定して比較を進めてみることにする。

そうして私なりに得た結論は、

RINはブーツの中で足を自由にし、
TT SSは“ブーツごと足にする”ことで足を自由にしている。

RINはブーツの中にある足を、レース、BOA、パワーベルトの3層で拘束している。
これらによって、甲の部分、足首、足首から上の3つの箇所の拘束具合を選択できるようになっていて、足首だけ締めてあとはフリーにするであったり、甲の部分だけ締めて足首から先をフリーにさせたりできるようになっている。
私は、BOAは一杯まで締めることで踵のホールドを強めて、レースはほとんど留めておく程度で済ませて、パワーベルトはそこそこ強く締めることで、スネ部分を固定して足首から上を動かしやすいようにしていた。

対してTT SSの方はいうと、RINとは逆にブーツを足に一体化させているように感じる。

久しぶりにTT SSを履いてみて、一番に思ったのは、それまで履いていたRINに較べてあまりに足に馴染まないということ。
今回TT SSは熱成形をせずに使いながら足に馴染ませようとしているので、熱成形されたRINとは違うのも当たり前だとか思っていたのですが、TT SSを使ううちにそれは誤解だと思うようになった。

最初はRINの時と同じように緩めにしていたのですが、それだと操作に対してRINのように踵が納まっていてくれず、レスポンスが得られない。
BOAをある程度ガチガチになるまで締め込んで、踵を納まる場所に納めておいてやっと、きちんとレスポンスするようになってくれた。
それはまだインナーの成型が済んでおらず、私の足に馴染んでいないからで、馴染んだ後はBOAを緩めて使えると思っていたのですが、それは完全な誤解だった。

一旦RINのことは忘れてTT SSの一番の履きドコロを探ってみると、それはやはりBOAをガッチリと締め込んだときだった。
トゥサイドターンの足首の可動範囲に関してははRINに対して30%ほど足らない感じでそこが引っかかっていたのですが、ヒールサードターンではRINよりも強い荷重を架けられることに気づいた。

『TT168ミズメヒノキ』と対峙するに至っては、その拘束性の高さが高レスポンスを生み出し、ミズメヒノキの本性を余すことなく引き出しているとさえ思えた。
そこまで締め込むと、足首の動きが大きく阻害されたり、足が鬱血したりすることが危惧されるが、足の動きに何ら違和感はなく、それでいて快適性が維持されている。

つまりTT SSは、極限まで足とブーツを一体化させることで、ブーツごと足を自由にしようとしているのではないか?

そのための拘束力と快適性を両立できるダブルボアであり、

小型化であり、

軽量化なのだと考えれば合点がいく。

TT SSのファーストモデルを履いていたときから、特に歩いているときにアキレス腱からふくらはぎにかけて硬いプレートが縦断しているような強い違和感を感じていたのですが、それが強いヒールサイドターンを補助しているのだということをRINと比較することで気づくことができた。

私の滑り方に即して言わせてもらえれば、RINからTTSSに履き替えたときはその剛性の高さに強い違和感を感じたが、その逆の時はRINの“ユルさ”に違和感を感じてしまった。
足首をグッと倒し込むことで身体を斜面の面前まで低くしてするトゥサードターンの気持ち良さを取るならRIN。
力強いヒールサイドのエッジングで、グイグイ引っ張られるようなバックサイドターンをしたいならTTSS。

例によって私の妄想が大きく含まれているので、真実はまったく違うところにあるのかも知れないが、私の場合、如何に自身に腹オチさせるかが最大のテーマなので、私にとっての答はこれだ。
なので、この理論で言えば、ブーツの中で自由を得るブーツと、ブーツごと足を自由にするブーツのいずれが好みなのかでこの2つを考えれば良いのではかろうか。

ブーツごと足を自由にしているのだとすれば、もちろんバインディングとの協調性やストラップの締め具合などが、RINに較べて大きく関係してくることになる。
現在私が使っているUNIONの『ULTRA』『FORCE』『STRATA』の3機種において、個人的に一番好感が持てたのは『STRATA』。『STRATA』の内側に膝を入れやすい構造と、ボードの撓みをつぶさに足裏に伝える構造が、私の求めるフリーライドに一番合っている。
ただ、『TT168ミズメヒノキ』との相性だけで言えば『ULTRA』のハイレスポンス性が一番合っていた。
というように、UNIONの『ULTRA』『FORCE』『STRATA』において、それぞれのキャラクターの差はあれど、TT SSの使い勝手に大きく影響するようなことはなかった。

唯一思うのは「UNIONに組合わせるなら、やっぱりブーツのブランドはDEELUXEだよな」というモノ好きの言いがかりくらい。

確実にホールド感を得るためには、踵を所定の位置までしっかりと送り込むこと、タンの部分を足首〜甲にフィットさせるために下に押し込むことなど、条件もあるが、それさえ守れればインナーハーネスなしでも充分なホールド感を得ることができる。
ちなみに、興味本位でインナーハーネスを付けて滑ってもみたが、中途半端に窮屈になることと引き替えに得られるホールド感としては、私の期待を下回ったので、すぐに外したことはお知らせしておく。

最後に、TT SS LSの本革についても伝えておく。
バインディングと当たる部分は以上の画像のようになる。
感じ方に個人差があるとは思うが、私はビニール系の生地にキズが付いたり、磨り減ったりする様子に較べれば、こちらの方がずっと好感が持てる。

これも補足情報ですが、私は以前モトブーツに使っていたGAERNEのオイルを、使ったあとに毎回塗布するようにしている。

使い終わって家で確認すると、つま先を中心に乾いてしまってる。
逆説的になぜRINがここを強靱な素材で覆っているのかが分かる出来事だ。
カサカサに乾いたところに馴染ませるようにオイルを塗布するとこんな感じでリセットされる。
毎回これをするのは面倒にも思うのですが、やればやったで愛着が増す。
刻まれたキズも自分と過ごした歴史のように感じてしまうのは本革ならでは。
本革製品の一番の良さって、実はここにあるのではなかろうか。
ちなみに私は、染み込むほどオイルを擦り込んで、当初の本革の質感や色味が損なわれるのはイヤなので、表面にコーティングする意識で薄く塗り伸ばすように心がけています。

というわけで、こころへんで私の結論を述べさせてもらうと、TT SSのソリッドな乗り味の方に今は惹かれている。
それはもちろんどっちが上とか下とか、優れているとか劣っているとかではなく、単に履いた順番、つまり時間軸の前後の話でしかないのかもしれない。
まあ、これだけ高価なものを買ったのだから「やっぱりダメでした」とは言いずらいだろう。と、思われてしまうのも仕方がないとも思うし、RINとの価格差を超えるモノなのかと問われれば反論の余地はない。実際私はRINのレースをガッチリと縛り上げてミズメに乗ってみていないし、履き込んで柔らかくなるかもしれないTTSSを試していないので、結論を出すのは時期尚早であることは理解している。

という注釈つきの結論ではありますが、書かせていただけば、初日の一発目から膝が入りまくるRINの方が、ホリデーにスノーボードを楽しみたいムキには正解だと思う。
でも、質感を含む所有欲を満たす意匠や、腹オチしたコンセプトなどに共感できたこと、何より、TTというボードを操るにおいての整合性の取れ方を加味して考えれば、TT SS LSの存在感や説得力は、RINと充分以上に渡り合えるものだと私は思っている。
言ったように、TT SSが今後柔らかくなっていったときにはまた別の感想も出て来ると思うので、TT SS LSの成長について、今後も報告していきたいと思う。

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