東京モーターサイクルショー2025見聞録

BMW F450GS

まずは『R20』とともに本邦初公開となった『BMW F450 GS』。
現在、世界のモーターサイクルシーンをリードしているのは、間違いなくBMWだ。と、誠に勝手ながら私はそう感じている。
ニューモデルと言いながら、重箱の隅を突いたような、煮詰まり切ったモデルが多い。
そんな、各メーカーが未来に対して模様眺めを続けている、と言うよりも、未来に対して投資する財力やら余裕がない中、BMWだけは我関せずの構えで次々にブランニューモデルを投入している。
そんなBMWを象徴するのがこのF450 GSだと思う。

「我関せず」とは言ったが、BMW以上にマーケティングを徹底しているメーカーもない。
近頃は需要を捉えるだけでは全く足らず。マーケットを創造するくらいの意気込みがないと後手に回ってしまう。それを一番に知るBMWが、これからのモーターサイクルに求められる「FUN」の部分を、オフロードマシンに見ていることが興味深い。

BMWは『M 1000 RR』で、世界スーパーバイク選手権において圧倒的な強さを見せつけ制覇。オフロードだけでなくオンロードシーンにおいても、市場が求める「FUN」の創造に躍起になっているわけですが、私はオフロードシーンにおける「駆け抜ける歓び」はオンロードの市場を生み出す原動力にもなると思っている。

新たな市場を創造するオフロードモデルとは一体どんなモーターサイクルなのか。
都会でも、砂漠でも、どんな場所であっても走破できる、真のグランドツアラーである『R1300 GS』。
1300よりも廉価でありながら、走破性に磨きをかけた『F900 GS』。
そして、先日発表になった、高い走破性に加えてスタイルも楽しめる『R12 G/S』といった、全方位で固める“GS ファミリー”の、ある意味においてのフラッグシップとして、最高、最善のマテリアルによって、誰にでも最速を引き出せるオフロードギアが、このF450 GSだと思う。
ピュア・オフローダーの走る場所に事欠かない大陸系とは違う、日本の風土や環境には合わない、無用の長物であるかもしれないが、世界はこうした方向性を求めていることを知る、最善のベンチマークであると考えれば、とても興味深い一台だと言えよう。

BMW R18 2025y

先日こちらでもお知らせした、大ききめのマイナーチェンジが加えられた『R18』
私としては、16インチから18インチに拡大されたリアホイールを与えられた新たなアピアランスが、見た目にどのような違いや影響があるのかに興味津々。
正直、この仕様変更には懐疑的な立場の私であっても、こうして実物を見てみれば、確かに軽快感が増していることは認める。
1,800ccエンジンの強烈な見た目のせいか、R18に対して「大きい」という感想を抱く方が多いようなのですが、実際にまたがってみれば分かると思うが、実はそれほど大きいわけではない。乗ってみればさらに、低重心で扱いやすく転ぶ予感がほとんどしないほどの安定感を持っていることに気づくだろう。
そうしたボタンのかけ違いを防ぐ意味では、リアフェンダーの意匠変更と併せ、リアホイールの拡大はとても良い効果があると思う。
ただ、これまであった漂うような雰囲気はだいぶ減退してしまったように思う。こう言っちゃあなんだが、国産のアメリカンに似てしまったようにすら感じる。
個人的には併せてフロントを21インチまで拡大して欲しかった。

BMW R12 nine T(に装着されていたスポークホイール)

R12 nine Tに装着されていたスポークホイールの意匠が気になって見入ってしまった。

このゴールドのリムを持つホイールを最初から装備しているモデルがあるのかどうかは分からないのですが、『OPTION 719ホイールCLASSICⅡ』というオプションパーツとしてもラインナップされていた。本体価格は税込 ¥473,000。

スポークホイールはそのオーセンティックな見た目がかっこよく、雰囲気を求めるモデルに多く採用されておりますが、実は性能的にはアルミホイールに遠く及ばない。アルミホイールに比べ、しなやかなレスポンスが得られるとも言われますが、それはチューブタイヤを装着するのであれば。という但し書きのつくお話。
重量に関してもアルミホイールと同等の剛性を得ようとすればするほど重くなってしまう。
それでもいまだにスポークホイールが重宝されるのは、まさに見た目がカッコいいから。
とはいえもしもの場合の対応力に優れるチューブレスタイヤを使用したいところなのですが、スポークがリムを貫通することで内部の空気を密閉するには多くのアイデアや加工技術が必要とされる。
私の知る限り、スポークホイールのチューブレスタイヤ化に先鞭をつけたのはBMWだと思うのですが、BMWのこういった“よく分かってるよな〜”と唸らされる、こだわりのアイテムってやっぱりカッコいいと思う。
R18用にもフロント21/リア18インチでラインナップしてくれないかなあ。

ホンダ電動過給機付き新型V型3気筒エンジン

昨年の11月にイタリア・ミラノで開催されたEICMA 2024 ミラノショーにおいて、二輪車としては世界初となる電動過給機を採用した水冷75度Ⅴ型3気筒エンジンのコンセプトが展示されていた。
排気量は発表されていたいが、次期大型モデル用のコンセプトとのこと。
小型の過給機を持つエンジンは、高出力と低燃費性を同時に達成する4輪車ではすでにデファクトと言っていい技術。もちろん2輪車にとっても必須と言っていい技術なのですが、搭載スペースの限られるオートバイの場合、インタークーラーの搭載場所など制約も多く、小型軽量化が難しかった。

それを打開するアイデアとして電動式の過給機が搭載されたというわけだ。
モビリティの電動化が急速に進み、原動機の時代が終わりかけているこのタイミングで登場したこのアイデアはかなり興味深い。ただ、トラスフレームの繋ぎ目(溶接?接着?)のカッコ悪さ加減に、妙な胸騒ぎがする・・・

ホンダ CB1000F Concept

2020年に発表された『CB-F Concept』の市販に向けた発展形といったところか。
2020年はコロナ禍でモーターサイクルショーが中止になってしまったので、CB-Fコンセプトの実物がお目見えするのはこれが初めて。のはず。
BMWのところで「これからのモーターサイクルに求められるFUN」と書きましたが、近頃の国産メーカーは残念ながら「温故知新」一本槍。それゆえに上記のV型3気筒エンジン搭載車には、この閉鎖的な世界観を打開するような新しいアイデアを期待したいところ。
「オッサンホイホイ」と揶揄された、昨年のモーターサイクルショーで発表された『ヤマハ XSR900 GP』をはじめとして、今やモーターサイクルショーの花形はこちらの方向性ばかり。
まあ、オジサンど真ん中の私としては楽しんですけど、若い世代に響いているのか甚だ心配になってしまう。

さておき、こうして時を経て二つのコンセプトモデルを眺めてみると、「新しい方はフレームワークに随分と無理があるなあ」と思わせられてしまう。ふたつともCB1000Rをベースに作られているとのことなのですが、フレームは新造されたのだろうか???どう考えてもコンセプトモデルのフレームの方がカッコいい。っていうか、上手く誤魔化していると思う。こういうのはやっぱりヤマハの方が一枚も二枚も上手だ。
もしかして、CB1000Rもモデルチェンジするのか?だとしたら余計なことをしたなあ。
期待してたんだけどなあ。

モリワキ ヤマハ XSR900 GP

XSR900用のモリワキ・フォーサイトマフラーのプレゼンテーション用かと思ったら、このカラーリングの車両販売の予定があるらしい。

デザインの元ネタは、その後ろに展示されていたこの『モリワキZERO X-7』。
モリワキのオリジナルアルミフレームシャーシにホンダCBX750Fエンジンを搭載し、1984年全日本ロードレースTT-F1クラスのチャンピオンを獲得したマシン。
バリバリ伝説世代の私にとって、F3クラス、そして鈴鹿4時間耐久での活躍で一気にスターダムにのし上がった宮城光と、その後WGP500ccクラスまでステップアップした八代俊二を有するモリワキの代表作と言えばこのZERO X-7。

そうした背景をもつモリワキのXSR900もまたオッサンホイホイなわけなのだが、確かにカッコイイと思うものの、そもそもモリワキはホンダと関係の深いコンストラクターだったはず。ヤマハでやっちゃあダメでしょう。

ヨシムラ GSX-R750 #604 コンプリート

1986年AMAスーパーバイクにゼッケン604番を纏って参戦した「ヨシムラ GSX-R750」を、ヨシムラ自らが復刻するレプリカモデル。
程度の良いユーズドバイクをベースに、車両の状態に応じて新品の純正互換パーツによってレストア。マフラー、エンジン周辺パーツ、足回りに新たに開発したヨシムラパーツを使用し、熟練のヨシムラメカニックが精密に組み上げた一台。
展示用に組み上げられたこちらの車両は6月からオークション形式で販売されるのだそう。
これまた金持ってるオッサンしか買えないので究極的なホイホイモデルではありますが、確かにこれなら私のような頭の硬いオッサンでも納得だ。ヨシムラの誇りにかけてオッサンホイホイの世界から一歩も二歩も抜け出した格好。

ただ、これを書いているオッサンとしては、こちらの『トルネード ボンネビル』の方が欲しいところではありますが。

SHOEI X-Fifteen GARDNER

昨年の『巨摩グン』レプリカにつづきワイン・ガードナーレプリカが発売される様子。
ガードナーは80年代に活躍したグランプリライダー。これはもう疑いようのないオッサン向け。
批判的な言いように聞こえるかもしれませんが、私もしっかり反応しちゃってるんですよ。
ただ、私にはこれを被る勇気がないってだけで。

東京モーターサイクルショー2025を見てみての感想

今回は『BMW R20 Concept』を観に行ったので、他の車両の情報もなく、ほとんど流して見ただけだった。
それもあり尚のこと「オッサンホイホイ」モデルが強調されて見えてしまった。
時代は巡るとは言いますが、本当にこれでいいのだろうか?
確かに私の若い時分にも「カフェレーサー」や「モッズ」といったスタイルがリバイバルしていたので、時代というのはそもそもこういうものなのかもしれないが、今の国産メーカーが示唆する方向性は、再解釈というよりどこかコスプレみたいに感じてしまう。
それはつまり新しいアイデアやスタイルがすでに枯渇してしまったということではないのか?
それはそれで一向に構わないのですが、それをいま風に言えば「オワコン」ってことではないのか?

なので尚のこと、私はBMWが「SOUL FUEL」と呼ぶ「時代の再解釈」に惹かれてしまうのかもしれない。

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • 今回も楽しく拝見しました。
    初のBMWバイクを購入し約1年半。その間に二度の冬を越し実質的には半年しか走ってない自分のバイクもようやく初回点検を迎えます。走行距離4,000km手前くらいからエンジンフィーリングが変化してきてこれからのツーリングシーズンが楽しみになってきた矢先にR12 G/SやF450G/Sの発表に心中穏やかになれない春の日ですw 点検中になにか試乗でもしようと思っていますが事故と心変わりだけは気をつけて乗りたいと思います。そしてR20。どんな未来が待っているのか今から楽しみです。

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