ハウス・オブ・ダイナマイト

北朝鮮付近から発射されたと思しき未確認の飛翔体が捕捉された。
当初、日本のEEZの外に落下するものと思われた飛翔体は、上昇軌道から水平軌道に移行し、大陸弾道弾と特定される。着弾予測地域はアメリカ・・・
大陸弾道弾の補足から19分で着弾する。その後、予想着弾位置がシカゴであることが確定する。

監督は『ハート・ロッカー』(2008)でアカデミー作品賞、監督賞を受賞した初の女性監督であるキャスリン・ビグロー。オサマ・ビン・ラディン殺害計画を描いた『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)の監督と言った方が分かりやすいかもしれない。

第1幕「傾斜が水平に」
第2幕「弾丸で弾丸を撃つ」
第3幕「爆薬で満たされた部屋」

の3つのチャプターで構成される『ハウス・オブ・ダイナマイト』は、
それぞれ、
第1幕:国家安全保障会議が統括するホワイトハウス内のシチュエーションルーム。
第2幕:アメリカ戦略軍の核戦略司令部。
第3幕:大統領。

という3つの場所と視点から、ICBM着弾までの19分間を繰り返し描くことで、防衛システム、国家、そして、人間の脆さと不完全さを次々に暴露していく。

日本の航空自衛隊も運用しているミサイルを迎撃する地対空誘導弾システム『パトリオット』の名前は聞いたことがある方も多いだろう。
今作の中では更に精度が高いと思われる迎撃ミサイル基地から、シカゴに向け飛行を続ける弾道弾に向け迎撃ミサイルが発射されるが、大気圏外での命中率は61%であることが明かされる。
それを「まるで弾丸で弾丸を撃つようなものだ」と軍事アナリストは揶揄する。

「アメリカに核を放てば報復攻撃で壊滅させられる。だから核は抑止力として働く。」という大前提は、飛翔体の発射位置も、誰が発射したのかも特定できないことで脆くも崩れ去り、反撃の判断も下せない状況に陥ってしまう。

「もしかしたら不発弾かもしれない」

と、着弾予想時刻まで残り2分という場面で放つ専門家の楽観主義が、逆にこの物語の真実味を強めているのは、なんとも皮肉な話だ。

大統領がホワイトハウスを離れていた時に事態が発生したことで、19分間では有識者の意見を集約することができなかったことなど、鉄壁と思われていた防衛システムが、実は爆薬を詰め込んだ部屋の中で国民を暮らさせるような、砂上の楼閣であることを、今作は世界に示している。

そして何より、今作ではイドリス・エルバが合衆国大統領を演じており、彼のイメージ通りの大統領のキャラクターが設定されている。
もし今作で描かれる世界が現実だったとすれば、19分間での判断を任されるのは“あの大統領”ということになる。
発射国が確定しなくても、彼なら迷わずに反撃の引き金を引くことは想像に難くない。
それはつまり世界の終焉を意味する。
いままさにホルムズ海峡で起きていることは、この映画と地続きの世界だ。
私にはそのことが何より恐ろしく感じられる。

(オススメ度:90)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次