ハンターカブに『YSS フロントフォーク・アップグレード・キット』を組み込んだ話

梅雨空も去り、すっかりツーリングシーズン真っ只中ではありますが、私の左腕の調子が芳しくないため、R18で長距離ツーリングに出ることができないでいる。
腕の痛みの我慢ができる範囲でのクイックツーリングに加えて、最近はハンターカブで近所を走って気を紛らわせることも増えている。
そうしていると、ハンターカブに関して気になる部分が出てきてしまった。
「出てきてしまった」なんてネガティブなことのように言ってますが、実際はアラを探してでも「見つけ出した」と言った方が適切なデキゴト。
走りに行けない鬱憤を晴らすのは、オートバイいじりに限る。

もうだいぶ前にハンターカブのリヤサスペンションをYSSのものに交換しておりましたが、そのことはこれまで完全にスルーしておりました。
ブロックタイヤを履かせたことによってリアタイヤがリアフェンダーの内側に当たってしまうことを避けるため、80kgを超える私の体重でも硬くストロークしづらいサスペンションに替えたかっただけで、本来のサスペンションを交換する意図とは違っていたため、こちらで紹介することなどすっかり忘れておりました。
といったわけで、YSS製リアサスペンションについて、初めてその乗り味について観察することとなった。
文字通りの「怪我の功名」。

ハンターカブはホイールベースが短いため、前後の荷重移動はそれほど気にはならず、ほとんどの場合は見過ごされてしまうかもしれないのですが、よくよく観察してみると、ブレーキングでフロントフォークが沈み過ぎる、いわゆる「ノーズダイブ」が強めに出てしまっていることが気になり出した。
私のハンターカブはリヤタイヤの大経化による高重心化に加えて、リアサスペンションのプリロードが最大に架けられているだけでなく、ロングスイングアーム化されでいるので、ノーマルよりもリヤがかなり “張っている” 状態であるので、これは増改築を繰り返した私のハンターカブ特有の不具合だと思う。
これもまた “カスタムの玉突き事故”。一般的には “泥沼” と呼ばれる状況。

そこで、以前から目をつけていた『YSS フロントフォーク・アップグレード・キット』をインストールしてみることにした。
「スプリング」、「プリロード調整機構付きトップキャップ」、「専用カラー」、「PDバルブ」、「専用フォークフルード」のセット。
めざとい私は以前から25%ほど割引されているものをチェック済み。そうと決まれば「お気に入りリスト」から即ポチることにした。

リヤサスもYSSなので前後バランスという意味でもこのパーツで十分なのですが、オーリンズからも同様のアップグレードキットが出ている。
ただ、そちらの価格はこちらとは比較にならないくらいにお高い。R18でもYSSからオーリンズのリアサスペンションに交換し、値段の差以上に乗り味の質の違いを感じさせてくれたので、きっとハンターカブでも同様の感動を届けてくれるものと思いますが、ハンターカブにはYSSくらいの手軽さがちょうど良い。と私は思う。ハンターカブもYSSもタイ出身だしね。

カートリッジ式や倒立式フロントフォークは構造が複雑なため、私には手が出せないが、R18をはじめ、私はこれまでにもテレスコピック・フロントフォークのスプリング交換や、シール交換などを繰り返して来た。
大排気量車の場合、重い車体を支えるためのジャッキひとつとってもそれなりの道具が要る。作業前の準備が整い、作業を開始したらしたでボルト類がいちいち高トルクで固定れていたり、いちいちパーツが重かったりして、その作業は気が重くなるものばかり。
それと比べればハンターカブのような軽量車の場合は整備作業も軽い。
心も軽く、気軽にはじめさせていただく。

取り出したフォークスプリングをYSSのものと並べて比べてみたところ。
上がノーマルで下がYSS。YSSの方が全長が長い。
両者ともにプログレッシブ・レートが採用されておりますが、YSSのスプリングの上部分の巻きの間隔が広く設定されている。
素材の違いや厳密なワイヤーの太さの差は分かりませんが、ノーマルよりも硬く設定されていることは巻きの違いを見れば想像がつく。

スプリング長が長くなると車高が上がってしまうことになりますが、組み合わされるカラーはYSSの方が短い。
つまり、イタズラに車高を変える気はないということ。
この考え方はリヤサスペンションにも通じていて、リヤも全長はノーマルと揃えられている。

アップグレードキットの核心部は、一般的に『PDバルブ』と呼ばれるこのパーツ。
フロントフォークに限らずショックアブソーバーは、内部のフルード(オイル)の流量を制限することで抵抗を生み出し、スプリングの動きを制御して車体の上下動を適切な範囲に留めておくもの。
説明は省きますが、テレスコピックサスペンションのオイル通路の構造はかなりシンプル。と言うよりも「単純」と日本語で言った方が適切なシロモノで、その制御効果はかなりざっくりとしている。
フロントフォークの性能を飛躍的に向上させたのが『カートリッジ式』と呼ばれるフルードの流れをバルブで緻密に制御する、まさに「精密機器」と言って良いもの。
伸び側、縮み側、それぞれ精密にセッティングが可能となるカートリッジ式の方は走行性能の向上だけでなく、乗り味も高級なものになるのですが、パーツの価格も高くなり、メンテナンスも複雑になる。
テレスコピックは安価であることに加えて、メンテナンスが容易で、エンジンオイルと同様に定期的な交換が必要となるフルードの交換などが気軽にできる。そして構造が単純なぶん軽量にできると言うメリットを持っている。

その二つの間を採っているのがこの『PDバルブ』。
テレスコピックフォークのインナーチューブの底にこのバルブを “沈めて” スプリングで押し込んで固定させることで、カートリッジ式に近いオイル通路のバルブ効能を生み出すというもの。
私自身は『ヤマハ XJR1200』以来、これを使うのはこれが二度目。そのときにこのバルブの効果はある程度分かっているので、今回もその効果をかなり期待している
ちなみに「PD」とは「Piston Dampener(ピストン・ダンプナー)」の略で、世界で最初にこれを実用化したのはRaceTech社。

ノーマルのフロントフォークを取り外し、トップキャップを外してフルード、カラー、ワッシャ、スプリングを抜き取る。
そのあと指定量(100cc)のフルードを注ぎ直し、PDバルブを沈めてからスプリングを入れたらフォークチューブを上下させてインナーチューブ内の空気を抜く。
そのあと油面を測定して185mmに設定する。
ワッシャを入れてからカラーを挿入し、トップキャップを取り付けたら交換完了。

YSSのトップキャップにはイニシャルプリロードが調整できるノブが着いているのですが、言っても10mm程度プリロードが架けられる程度の話なので、あまり、と言うか、その効果に関してはほとんど期待していない。
それよりもパーツの見た目の品質が上がることの方が大切。
それにしても、フォーク径20mmのパーツはどれも小さい。フォークフルードがたったの100ccだったり、大型車と比べるとプラモデルのよう。

アップグレードキットをフロントフォークに組み込んだら、あとは外した時と逆順で車体に組み着ければ作業は終了。
作業時間は1時間とかからない。

見た目に変わったのはトップキャップのみ。

それも寂しいので、キットに同梱されていたステッカーを貼って密やかにアピールする。

というわけで、アップグレードキットの効果に関してはもう少し走らせてからお知らせしたいと思います。

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