レンタルファミリー

結婚式で親族の数が釣り合わないときに親族役を演じるエキストラの仕事があるということは知っていた。
会社を辞めるときに代理人に辞意の連絡を任せるサービスがあることは、今では普通のこととなった。

妻への不倫の謝罪のために夫の不倫相手のふりをしたり、親のために見せかけの結婚式を挙げるクィアの女性の新郎を演じたりすることなど、そうした社会的な体裁を整えるための “代役” を派遣するサービス会社「レンタルファミリー」。
来日して7年目のアメリカ人俳優フィリップス(ブレンダン・フレイザー)は「悲しげなアメリカン人という役柄」とだけキャスティング担当から伝えられ、急ぎ現場に指定された葬儀場に向かうと、そこは「擬似葬式」を行っていたレンタルファミリー社の現場だった。
それをきっかけにフィリップスはレンタルファミリーの仕事をするようになる。

今では認知症を患う過去にいくつもの映画に出演した俳優の長谷川喜久雄(柄本明)の威厳を保つためのインタビュアー役や、

片親では合格できない有名私学校に娘を入学させたい女性の依頼で、美亜(ゴーマン シャノン 眞陽)の父親役など、俳優の仕事との類似性はありながらも、他人の人生に影響を与える “代役” という仕事をフィリップスは引き受けることになる。

ビジネスライクに「ただ役柄を演じればいい」と社長の多田(平岳大)は言うが、対象者に対しフィリップにはどうしてもそうした一線を引くことができない。
次第に喜久雄や美亜に感情移入していってしまう。

7年いても「日本」という異国の文化を理解できないでいるフィリップスでしたが、レンタルファミリー社の仕事を通して、「出会いと別れ」という言葉では決して計ることのできない、人生の宝物になるような経験をすることになる・・・

Disney+で配信されることになり、ずっと観たかった『レンタルファミリー』を観ることができた。
人生の代役を演じるにはあまりに感受性が豊かすぎるアメリカ人男性の視点を通して、日本という国の“異質さ”を観ることができる今作ですが、必死に体裁を整えようとする日本人の姿は、海外の人たちから見たらさぞ滑稽だろうと思う。
でも、大阪出身のHIKARI監督が描く日本は、もちろん「フジヤマ、ゲイシャ、ニンジャ」といった、ステレオタイプな日本の姿ではない。
ひとり孤独に異国に暮らす一人の男が、なかなか馴染むことができないでいるのに、どこか魅力的に見える日本人やこの国の文化に、半ば強制的に関わっていく姿を通して、一見滑稽に見える姿の裏側にある、日本人ならではの細やかな気づかいや、静かな誇りの有り様を深掘りして魅せてくれている。

静かに進行しながら、ときにさざ波のように観る者の心に沁みてくる。
とても良い映画に巡り逢えました。

(オススメ度:90/強めにお薦めです)

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