実写版『ルックバック』

実写版については正直かなり複雑な心境。
劇場に二度足を運んで観て、二度とも泣かされたし、配信で観られるようになってからもやっぱり泣いた大好きな『ルックバック』を、「いったいどうしてくれるつもりなのか」。と、実写化についてはそもそもネガティブな心持ちでありますが、『万引き家族』『誰も知らない』『海街Dialy』の、あの是枝裕和が監督すると聞き、また新たなルックバックを観られるものと思い、劇場に足を運びました。が・・・

是枝監督には本当に申し訳ありませんが、やはり私に『ルックバック』の実写版は不要でした。

ここまでアニメ版に寄せる必要があったのだろうか。と、思ってしまうほど瓜二つ。
アニメ版も原作コミックにはかなり忠実なので、つまりは実写版も原作コミックに忠実に描いているということになるのですが、それにしても・・・と思ってしまう。
もちろん、たとえ同じに見えても、生身の俳優が演じる姿はとても瑞々しく、キャラクターたちの息づかいが伝わってくる立体感は、アニメとはまた別の世界を魅せてくれてはいるのですが、それをしても尚、アニメ版を超えるには至っていないと思う。

漫画の映像化に際して、原作に忠実に描くことを条件にしていた原作者が自殺した。なんてこともあったので、そもそもそうしたことに業界全体がセンシティブになっているのかもしれないし、原作者の藤本タツキ氏の要望なのかもしれない。
それをおしてでも、実写化のメリット、実写でなければ描けない、伝わらない世界がある。と、勝算があって実写化に踏み切ったのだろうが、残念ながら私にその価値は伝わってこなかった。

アニメ版もカット割や画角に至るまで、原作コミックにかなり忠実に描かれているのですが、やはり実写よりも向いているように思う。
中でも藤野と京本が描く4コマ漫画によって切り替えられる平行世界(パラレルワールド、もしくはマルチバース)の描かれ方には、アニメ版のまるで漫画のページをめくるようなテンポ感の方が合っているし、京本が藤野のことをどう見つめていたのかがより伝わってくると思う。

原作の世界を詳細に分解しながら、静止画の漫画が伝えようとしていたことを、アニメーションによって拡張する。
実写版を観ると、逆にアニメ版が何を選択して何を削ぎ落としたのか。その取捨選択の素晴らしさを実感させられる。

実写版は藤野と京本、二人の少女の“つながり”を強調して魅せていたように思えたが、アニメ版では、藤野の「絶望」と、京本が藤野に抱いていた「感謝」、それぞれの気持ちが、二人だけの共通言語である4コマ漫画が時空を超えて「共作」されることで、藤野の再生へとつながっていくことを強く伝える演出になっていた。

間違いなくアニメ版がなければ実写版は生まれなかっただろうから、実写版が先に制作されていたら?という想像にはまるで意味がないとは思うものの、先に実写版を観た人のアニメ版の反応はすごく知りたい。

(オススメ度:60)

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