大手製薬会社「オークソリス」を率いるカリスマCEOのミシェル(エマ・ストーン)。
彼女を、裏で地球を支配する「アンドロメダ星人」だという宇宙的な陰謀論を信じる、養蜂家でもあり、オークソリスの梱包係でもあるテディ(ジェシー・プレモンス)は、自閉スペクトラム症を患う従兄弟のドン(エイダン・デルビス)とともに、地球を再び平和な惑星に戻すべく、ミシェルを誘拐する。
テディの母親はオークソリス社の薬害被害に遭い訴訟問題にまで発展し、今は意識のないまま延命治療を受けてていた。そして、自身が育てるミツバチたちが、女王蜂を見捨ててしまうことで、巣の生態系が崩壊してしまう事象に悩まされており、それもオークソリス社の薬害、アンドロメダ星人であるミシェルの仕業であると、信じて疑わない。
ミシェルの誘拐に成功した2人は「仲間との通信に長い髪の毛を使うから」とミシェルの髪を全て剃り、テレパシー等の特殊能力を封じる目的で、全身に抗ヒスタミン剤のクリームを塗ったくったうえで、ワイヤーで拘束し地下室に監禁。そしてテディは、ミシェルに対して数日後の月食にあわせて地球にやってくるアンドロメダ星の母船に乗るアンドロメダ星の皇帝との会談をセッティングするようミシェルを脅迫する。

「おまえはアンドロメダ星人だ」
「テディあなたは精神病なのよ」
ミシェルは巨大企業のCEOであるので当然のこととして、テディもさまざまな論文や科学的な事象に精通しており、二人ともになかなかの論客。
そんな弁のたつ二人の意見は完全に食い違い、最後は暴力により対話は終結を迎える。
テディはミシェルに高圧電流を流す実験をはじめ、その電圧に耐えたミシェルを「おまえ皇帝の血を引く高貴な身分だったのか」と、ミシェルへの見方を改める。
そうしてできた隙を狙って、拘束を解くことに成功したミシェルは、なぜか脱走しようとせず、地下室の奥の隠し部屋に入り、そこで、ホルマリン漬けにされた人間の頭部や手などの標本、そして、これまでも何人かの人間をアンドロメダ星人として拷問を繰り返してきた事実を知る。
そしてミシェルは外出から戻ったテディと対峙し、開口一番「これまで何人のアンドロメダ星人を殺してきたの!」と逆ギレしてテディに詰め寄ると、一気に形勢は逆転。
「二人だ」と答えるテディを連れてオークソリス社に向かう。
「社長室のクローゼットが母船へのテレポートエレベーターになっている」「クローゼットの中に入り、この電卓に数桁の数字を打ち込み、Enterキーを押せばそれで母船に転送される」と、テディにミシェルが言うと、テディは服の下に隠された手製爆弾があること告げ「転送されて、いきなり殺されたらたまらないからな」とミシェルに返した。
「なかなか用意周到ね」とミシェルが返すが、ここまでくるとミシェルもどこまで本気かわからなくなってくる。
クローゼットに押し込んでテディを警備員に捕まえさせる作戦であるようにも見えるが、ここまで来る間に逃げようと思えばいくらでも逃げられたはずだ。なぜミシェルはテディを連れてわざわざ会社までやって来たのか?
だんだんと観ている者の整合性が取れなくなってくる。
ミシェルの言葉に迷わずクローゼットの中に入るテディ。
すると、何かの拍子に腹に巻いた爆弾が起爆してしまい、テディはクローゼットで爆死してしまう。
その爆風で意識を失ったミシェルは、救急車の中で意識を取り戻す。
すると、取り憑かれたように走行中の救急車から飛び降り、走り去るミシェル。
オフィスに戻ると、現場検証中の警察官の制止を振り切り、例の電卓を拾い、バラバラになったテディの亡骸で溢れるクローゼットに入り込んだ・・・

・・・クローゼットに入ったミシェルは、なんとそのまま宇宙空間で待機する母船に現れる。
この宇宙星のセットデザインが1967年公開のスペースオペラ『バーバレラ』の宇宙船内部のイメージと酷似しているところがまた笑えたことはさておき、つまりは精神異常だと思われたテディの考えはすべて正しかったことがここで判明する。
しかも、長髪によって仲間と交信していたこと、テディが3Dで再現していた母船の形状まで一致していた。
何よりミシェルがアンドロメダ星人の皇帝であった。
ミシェルは今回の件を経て、いよいよ人類への実験を終わらせることを決定し、全人類を抹殺してしまう・・・
どれが本当で、なにが虚構なのかがさっぱり分からないストーリー展開はさすがヨルゴス・ランティモス監督作。
ちなみに『ブゴニア』とは古代ギリシャ語における「死んだ牡牛からの誕生」を意味する言葉。
血を流すことなく殺された牡牛の死骸からミツバチが自然発生するという古代地中海の文献に記されている儀式のことを指すのだそう。
ミシェルは最後に人類を滅ぼしてしまうが、他の動植物たちはそのまま生き続けている。
人類という牡牛の亡骸を糧にして、他の生き物たちが繁栄していく、地球の再生を意味している。
今作は主演のエマ・ストーンとともに、『ミッドサマー』『ヘリディタリー:継承』の、こちらも鬼才アリ・アスターもプロデューサーに名を連ねている。
そして今作は2003年公開の韓国映画『地球を守れ!』のリメイク。
残念ながら私はそちらを観ておりませんが、ヨルゴス・ランティモスがリメイクしたのですから、オリジナルは辛辣さではかなり甘党にできているものと思われます。
こうした作品は好き嫌いがはっきりすると思いますが、ハマると中毒性の高い名作であります。
(オススメ度:60)


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