アステロイド・シティ

結論から述べさせていただくが、これ以上ないほど難解な作品だ。
というよりも、理解させることを拒んでいるようにさえ思えてしまう。

ウェス・アンダーソン監督作品には少なからずそういった傾向が見受けられるが、この『アステロイド・シティ』は、もう3段階ほど難解さのレベルが上げられている。それはもうブッチギリだ。
見栄っ張りでエエカッコシイな私としては、ウェス・アンダーソンあたりの作品を、訳知り顔で語りたいところだが、今作に関してはもうお手上げだ。
それっぽい感想を並べる方が嘘くさいし、よっぽどカッコ悪い。
そうした評論家ぶった輩をギャフンと言わせるために作った作品だと言われても納得できる。

なので、今作を鑑賞するにあたっては、くれぐれも台詞を追ったり、役者の機微を理解しようとしない方が良いだろう。そうすればするほど、ウェス・アンダーソンの術中にはまる気がする。
たぶん(というか間違いなく)オーディオを消して映像を観ていても、観終わった感想に違いはないように思う。
それくらい映像芸術に振り切った(と思えてしまう)作品。

砂漠の天然色を突き詰めたような独特の映像のタッチを実現するためだけに書き上げられたような脚本は、ウェス・アンダーソン自らが執筆したもの。つまり、脚本というより撮影計画書と言った方が適切なのではなかろうか。
撮影はスペインの荒野で、グリーンバックなし(つまり合成加工ほとんどなし)の素の映像だと言うからオドロキ。

カット割りや画角、アングルは全編通して緻密に計算されていて、それに合ったセットを組み上げるだけでも相当な労力であったことが窺える。
そうした作品にこれだけの大物俳優陣が集結するのは、自身を芸術作品の中に埋め込みたいと願うからだろう。
もし今ダヴィンチが生きていたら、この人たちは肖像画を描いてもらいたいと願うはずだ。
そういう意義のような芸術的信念に満ち溢れた作品であります。

(オススメ度:10)

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