そもそもはSNSに投稿された廃ビルの中のような黄色い空間の画像と、そこに添えられた一文がはじまりだったそうです。
シンプルでありながらも、多くの人の想像を刺激するような情報量の多い「黄色い空間」という余白の多い舞台装置によって、数多くの設定文や画像などが投稿されるようになり、その後「Backrooms」はシェアワールドとして展開されるようになった。
そんな「Backrooms」を爆発的に拡散させたのは、2022年にYoutubeにあげられたケイン・パーソンズの動画。
今作の監督はそのケイン・パーソンズその人。若干21歳。
とある“入口”を抜けると、壁も床の絨毯マットも、ベージュに近い淡い黄色で統一された空間や部屋が、約6億平方マイルつづく場所に出てしまう。
その映像は観る者に古い湿ったカーペット臭や、ブーンと鳴る蛍光灯の音を想起させる。
どこにでもあるが、できれば立ち寄りたくないと頭の真ん中あたりで感じさせる場所。
大型の商業施設などでは、黄色い空間でなくても来た道が分からなくことがあるが、この空間ではさらに冷静に、きちんと来た道を引き返さないと、ここから永遠に出て行くことができなくなる。
ただし、いつまでも同じ構造のままいてくれるとは限らない。
そして、不穏な生き物が蠢いている予感のようなものが常に漂っている。そんな空間。
映画がはじまってから、登場人物がこの空間にたどり着くまでにそれなりの時間を要するので、「この空間が存在する意味や理由を説明する気はハナからないな」と、その時点ですぐに察しがつくのですが、観終わってしまえば「理由なき不気味な空間」であるからこそ、これだけ人を惹きつけているのだとわかる。
むしろ、それがあの世とこの世の境目であれ、核融合施設の暴走で生まれた異空間あれ、エイリアンの仕業であれ、いかなる存在理由であっても、知ればがっかりすることはまず間違いのないところ。
つまり、この胸の内側がザワつくような“嫌〜〜な感じ”を楽しむために観る映画だということ。
一応、MRIを製造販売していた企業が関係していること、そのMRIを受けた人の想像や苦悩、怯えといった記憶が空間に反映される。といったいくつかのヒントは提供される(とはいえそれも私の勝手な解釈でしかないのですが)。
私は『8番出口』も観ましたが、そちらが実に分かりやすくハッピーエンドだったことと比べると、こちらは分かりずらいどころか何も分からず、最悪の終わり方をします。ということは、あらかじめ言っておきます。
といったわけで、煙に巻かれて映画館を後にすることに耐えられない人には、めっぽう向かない作品です。
さておき、観終わるととにかくザワつかされる作品なので、私のようにレイトショーでは観ない方が良い。
複合商業施設の映画館だったのですが、劇場を出るとすでに他の施設は営業を終了しており、多くの照明が落とされていた。
立体駐車場からクルマを出すまで、ここがBackroomsでないことを祈ってしまった・・・
(オススメ度:50)
近頃こうした作品が増えておりますが、個人的には『シラート』がその中でも最高峰に位置している。
『シラート』を観終わったときには、脳に直接刻み込むようなあまりの衝撃の強さに「もう観なくても大丈夫」と思いましたが、麻薬のように私を侵食した感覚が抜けた今では、もう一度Dolbyサウンドで『シラート』を体感したいと思うようになってきた。
まさに禁断症状。Dolby Atmosの劇場で再上映してくれないかな。


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