THE ODYSSEY | オデュッセイア

クリストファー・ノーラン監督作品『オデュッセイア』を、IMAX先行上映で観て来ました。

この映画の舞台となるトロイア戦争に関しては、2004年公開のブラッド・ピット主演『トロイ』に詳しい。
私としては『トロイ』を観ていたことで物語の理解が早かった部分もある。
もちろん、同じ物語をなぞるようなことをクリストファー・ノーランがするはずもなく、トロイア戦争は今作の重要な背景ではありますが、一部分でしかない。
10年にも及んだこの戦争、と言うか、出征から10年間に及び敵城の前に広がるビーチに釘付けにされた連合軍の泥沼の消耗戦に、自らの策略(トロイの木馬の発案)によって勝利したイタケの王オデュッセウスの物語。

トロイア戦争出征以前のイケアの王オデュッセウスの暮らしぶり。
トロイア戦争での闘いぶり。
10年に及ぶトロイア戦争終結後、王であるオデュッセウスが生死不明のまま帰還しなかったため、次の玉座を狙う者たちの謀略の場となってしまったイケアの状況。
出征前に生まれたオデュッセウスの息子テレマコスは、権力を狙うものたちからの暗殺の危機に晒される。
そして、トロイアからイケアに向けて帰国の途についたオデュッセウスたちに襲いかかる、神々からの数々の試練。

イケアの状況以外はすべてオデュッセウスが断片的に思い出していく記憶として描かれるため、それらが各々に伏線となりながらつなぎ合わされ、最後に全ての答えに収束していく編集は見事としか言いようのないものでありました。

なぜオデュッセウスは、戦争終結から7年という月日が経っても、祖国に帰還することができないのか。
トロイア戦争でオデュッセウスに一体何があったのか。
王であるオデュッセウス不在のまま、イケアの次の王をめぐる争いの行方はどうなるのか。

それらがバラバラのピースとして、時系列に関係なく観るものに提示され、一つひとつが丁寧に紐解かれ結末へと流れていく。

そして、今回ノーラン監督が描くのは神話の世界。

インセプション』、『ダークナイト』、『インターステラー』など、数々のSF作品を世に送り出して来たノーラン監督が、なぜこの、ある意味手垢のついた物語を題材に選んだのか。何よりそれが知りたかった。
徹底した秘密主義で知られるノーラン監督なので、その理由は今回も公開まで明かされることはなかったのですが、実際に観終わってみれば、神話ほどミステリアスでいて創造性に富む世界観もないということがすぐに理解できました。

この神話はそもそも人類の数が多くなりすぎたことで、その数を減らそうと神々が考えたことに端を発している。
ロード・オブ・ザ・リング』のような、人間に優しい世界などではなく、人間に味方をする魔法使いも妖精も鬼もいない。ただただ翻弄され、試されるだけの究極的に人間にとって不利な世界。
神々に試される生身の人間たちの戦いと試練の様子が丁寧に、そして残酷に描かれる。

マット・デイモン(ボーンアイデンティティ/インターステラー
ゼンデイヤ(デューン)

トム・ホランド(スパイダーマン:ノーウェイホーム)
アン・ハサウェイ(プラダを着た悪魔/ダークナイトライジング

ロバート・パティンソン(ザ・バットマン/テネット

シャーリーズ・セロン(マッドマックス:怒りのデスロード)
ジョン・バーンサル(パニッシャー)
ルピタ・ニョンゴ(ブラックパンサー)
ミア・ゴス(パール)

といったノーラン作品の常連たちを筆頭に、アベンジャーズ級の豪華俳優陣が要所に配置され、まさにノーラン節が炸裂する神話の世界を鮮やかに彩ります。

俳優陣の中でも特に私が嬉しかったのは、物語の重要な鍵となるシノン役を、エリオット・ペイジが演じていたこと。
2007年公開の『JUNO』で鮮烈なデビューを果たし、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、2010年公開のノーラン監督作品『インセプション』にも出演しているエレン・ペイジ、その人。
2020年12月にトランスジェンダーであることを公表し、性転換して男性俳優として活動を続けていることは聞いていたが、私としては、はじめて彼の出演作に触れることとなった。

ノーラン監督はそうした俳優のバックボーンも巧みに物語に組み込む映画監督ですので、今回もそうしたレトリックに則った配役なのだろう。少なくとも私には大いに刺さった演技でありました。

兎にも角にも、オデュッセイアは2026年必見の映画だと思います。
私はこの映画を観ることができたことに、私が映画好きであることに心から感謝しました。
最低でももう一度は劇場に足を運ぶつもりですし、すでに今から配信が開始される日が楽しみでなりません。
何度でも観返したいと思える作品です。

そしてもちろん、今作も全編IMAXカメラで撮影されています。
ノーラン監督はIMAXフィルムの画角で映画の世界を構成しています。
クリストファー・ノーランの想像した世界を余すことなく見渡すことのできる、IMAXのスクリーンでぜひご覧ください。

(オススメ度:100)

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